72 / 72
卒業後
2
しおりを挟む「俺と一つになってみたいと思ってくれたのはあの日だけだった?」
「……あれは朝永になってみたかったと言うかなんと言うか、えーと……」
「俺に触られるのはいや?」
「まさか! むしろ好き」
ぶるぶると顔を横に振る。焦る俺に対し、朝永は少し眉を下げて笑った。笑顔なのになんだか悲しそうに見えてさらに焦る。
「違うんだ。ああいうの、すごく恥ずかしくて。声とか、顔とか……。へ、変な顔してそうだし」
「そうなんだね。恥ずかしがる顔が好きだよ。俺で気持ちよくなる夜詩人も大好きだよ。安心して。いってる時の夜詩人だってすごくかわいいよ。ずっと見ていたいくらい。あの顔見てるだけで俺もいきそうになるし」
「え、ええぇ……」
変態な発言に困惑していると、朝永は勢いよく立ち上がった。そして支えを失い、バランスを崩して座る俺をいとも簡単に抱き上げた。適当に横抱きにされたため、朝永の首にしがみついた。よいしょ、と一度体勢を整えてから朝永は寝室に直進した。
「え、今から?」
「ん?」
でかいベッドに優しく降ろされ、そのまま覆いかぶさってきた。ぎゅっと脇に力が入って身を縮ませるが、俺を見下ろす朝永はいやらしさを感じさせない爽やかな笑顔でいた。
爽やかすぎて怖い。ギラつかれても怖いけど。
「あ、あの、久しぶりなので……」
「大丈夫。夜詩人にも気持ちよくなって欲しいだけだから」
身を固くする俺に可愛くちゅっと音を立ててキスをした。
顔中にキスを降らせながら、朝永は器用に俺の服を剥いていく。露わになった胸も待ちわびたとばかりに口に含まれた。舌先で尖りを転がされるたび、腰がもぞもぞと落ち着かない。うめき声も漏れ、色気のないそれを我慢しようとするがそうなると呼吸が荒くなった。
静かな住宅街は外からの音が何も聞こえない。身じろぎするときのシーツの音すら俺には大きく聞こえた。
朝永も興奮しているのか、手が荒々しく俺の体を這う。そしていたる所に歯を立てられて。甘噛みと言えるものから、少し強めのものまで、腕、腹、肩に胸とくまなく噛まれた。左手薬指にはまっている指輪もガチガチと異様な音を鳴らしながら噛むので、それは嫌だと朝永の顔を右手で押しやった。
やっとで朝永の唇が離れたと思ったのに、名残惜しそうに固く尖って濡れた乳首をぺろりと舐められて体がビクンと震えた。
「……はぁ、かわいい」
朝永の掠れた声が届くが、呼吸を整えるのに精いっぱいで反応できない。俺が脱力していることをいいことに、履いているスウェットをパンツごと一気に脱がしてきた。
「っ、待っ」
「夜詩人も勃ってるね」
「恥ずかしいから見ないで」
「俺もっとガチガチだけど。見る?」
「見せなくていいです」
朝永が膝立ちになり、自分で部屋着を下げた。目の前に現れた敵は凶悪に勃ち上がっていた。俺の体を舐めて噛んでこうなれる朝永に奇異な視線を送ってしまう。
そんな俺を「ふふっ」と声を出して笑った朝永は、朝永より控えめな俺の中心をぎゅっと握ってきた。
「久しぶりだから夜詩人の中を丁寧にほぐしていくね」
「いや、あの、」
「大丈夫。多少痛いかもしれないけど、一度は俺を迎え入れてくれたでしょう」
「まあ、そうですね……」
この赤黒い凶悪ブツが俺の中に入っていたことがあるわけだけど、しかも出たり入ったりしたわけだけど、もう一年近くも前だから初めてと同じだと思って欲しい。
しかし宣言通り、朝永は丁寧に、ゆっくりと時間をかけて俺の中をほぐしてくれた。じたばたするたびに俺の中心を擦られ舐められ、気持ちいいのと痛いのともどかしいのと異物感と脳内がぐちゃぐちゃだった。
朝永が切ない顔をして俺の中に入ってきたときは、無性にこの人を抱きしめたくなって手を伸ばした。朝永も応えてくれ、ぎゅっと抱きあった。
「……夜詩人、痛い?」
「うん、痛い。朝永、やっぱり大きすぎ」
「興奮しているから……」
耳元で朝永の吐く息が感じられ、身を捩った。俺の腕が緩んだのを見て、朝永は身を起こす。丸見えが恥ずかしくて上掛けを手探りで探すが、手はシーツの表面を撫でるだけでぶつかるものは何もなかった。
勝手に動く俺をどう思ったのか、柔くなりはじめた俺の中心をゆるゆると擦られた。親指で亀頭を撫でてくるから、内股に力が入って朝永を締め付けてしまった。俺の様子を少しも逃したくないのか、朝永は真剣な眼差しで見下ろしている。
陰茎を弄る手は、単純に俺の快感だけを引き出している。あっという間に上り詰めてしまった俺は、腹やら首やらを白濁で汚した。
出したというのに腹の奥がじくじくとして疼いたままだった。腹と胸で呼吸を繰り返していると、その疼きが腹の奥から、体全体へと侵食するように広がった。達した直後ともあって体はだるいが、疼きの広がりとともに湧き出る熱は違うものだ。オメガになってから感じるこの熱は、何度も経験しているアレに近い。
「……ね、ねぇ、朝永、もしかしたらやばいかも……」
視線が彷徨い、浅く呼吸を繰り返して気を落ち着かせるがなかなか叶わない。一度深く息を吸っては吐き、そしてもう一度、今度は目を閉じてゆっくり鼻から空気を吸い込む。が、この時、急に朝永の匂いが一気に脳内に入り込んで来た。発情中に感じられる、服からも敏感に存在を感じられるほどの、あの朝永の匂いが直で脳を刺激した。
「あ……うそ……」
まだ発情期が来る予定はなかった。ずいぶんと早い。ホルモンが落ち着いていないから早く来るかもしれないけど。
瞼を開けても視点が定まらず、しかし朝永は先ほどと同じ姿でそこにいた。
ただ、朝永の目が真っ黒に見えた。
シーツを彷徨っていた手を上げると、朝永に手首を掴まれた。そこからぴりっと静電気が走ったようにしびれた。
そして朝永から押しつぶされそうなナニかを感じ、さらに体が熱くなる。俺の中に静かに留まっている朝永だが、俺が勝手に動くだけで、それだけで奥も浅いところも全部刺激された。疼きはすぐに快感に変わり、それはどんどんと高まるばかりだった。
「ま、まって、ともなが、どうしよう」
出したあと、小さくなった中心はもう勃ち上がりを見せていた。
喉を反らせて、「やだ、やだ」とうわ言を吐きながらゆるゆると首を振っていると、俺の中の朝永がさらに大きくなった。それなのにどういうわけか、動き始めた朝永はスムーズに抜き差ししているようだった。俺の体が朝永に慣れたのもあるが、こう大きいのに先程より痛みもない。もしかしたら俺の中が濡れ始めているのかもしれない。
勝手に濡れるとなれば、やっぱり発情期だ。
朝永に中を擦られるたび、体全部が気持ちいい。
「やだよ、ああ、っ、あっ」
這いあがるだけの快感は脳が気持ちよさだけを追い求めているようだった。
朝永はずっと俺を見下ろしながら腰を押し付けてくる。遠慮のない力だったが今までに感じたこととのない強い快感は、もう朝永が何をしても気持ちいいだけだった。こんなのは初めてで自分が怖くなった。
あっという間に二度目の絶頂を迎えたとき、朝永も俺と一緒に果てた。そして脱力している俺の上に伸し掛かってきた。
さすが発情期とでもいうのだろうか。達したあとの余韻が長い。体はずっと朝永を欲しているようだった。それは俺の意思などお構いなしに。長い朝永の射精は。疼き続ける俺の中で脈を打っては、それを無意識に締め付けた。そのたびに朝永の腹筋が揺れた。
「……ともなが、俺発情期かも……」
「そうだね」
両手をシーツに投げ出して呼吸を整える俺は、静かに目を閉じた。
しばらくそうしていると、何となく疼きが治まってきた。
朝永の射精は終わっているが、俺の中でまた巨大化している。
俺のことを考えてか、動かずにじっとしていてくれていてかわいい。
落ち着いてきたため、目を開けて俺の上にいる朝永の頭を撫でてみた。
さらさらだが、少し湿っているのは汗をかいたからか。前回もそうだったけど、腰を振るだけでも汗ってかくものなんだな。セックスはスポーツと言われる所以だろうか。
朝永がシーツに手をついてゆっくりと上半身を起こした。
乱れた前髪の隙間から覗いた朝永の目を見て息が止まった。
暗いところで獲物を狙う猫のようにまん丸で真っ暗な瞳をしていた。
73
お気に入りに追加
795
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(81件)
あなたにおすすめの小説
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
始めの方に「隔離部屋は申請(お金を払ったら)見られる」ということが書いてあり、それから「申請」という単語が出るたびに何円かかるんだろうなぁ、と考えていました。
面白かったです!
プロフィールに万人受けしないものが好き・・・と書かれていましたが、スカトロはお好きですか?
ニヤニヤしながら読ませていただきました、頑張ってください!
ちょっと殺伐とした雰囲気作りたいなと思ってお金を絡めてみました。オメガに相手にされてもされなくてもアルファはむしり取られたらいいとも思っていたので!
面白いと思ってもらえて良かったです♪
スカトロはあまり…かもしれないです;
死ねたとかバッドエンドとか、両思いになれない一方通行なんかが大好きです!攻めが何を考えているか分からないほどいいです!多角関係こじれまくるのもいいです(n‘∀‘)ηスキを並べると止まらなくなりますね…。
ちょっと間空いていますが今月更新できたらなと思います。頑張りますね、ありがとうございました☆
ついに卒業…!!
学年末毎に先生の言葉があったので、今度はどんなことを話すのかと思っていたら!先生…胸にぐっとくる、言葉でした。いろんなことをおそらく体験したり目にしてきたからこその態度や言葉だったのかなと。
夜詩人君が晴々とした心で門を出れたこと。良かったね、おめでとうの気持ちでいっぱいです。名前呼びも!
長かった学生生活……やっと卒業しましたー!
新堂はなにげにまともに担任持ったことないですが、新堂なりに生徒は可愛かった模様…。新堂の学生時代は今よりコンプラもうるさくないしアルファ優先だったので、夜詩人達より過酷なオメガ時代だった、という裏設定があります。
夜詩人はあっさり門をでて拍子抜けの感じもしますが、それでいいんだと教えてあげたいてわすね。はじめから番う気のない椋地も卒業できて晴れ晴れとしました!みんな自由!
新しい生活に入る二人をもう少し、おつきあいくださると嬉しいです♪完結までよろしくお願いします!
ありがとうございました☆
卒業して学園を出ていくそれぞれと夜詩人のモノローグがなんか良かったです✨
長い映画やドラマの終わりのようで・・・しみじみしました
自分ではあの長かった学生生活があっさり終わってしまったと思ったのですが、しみじみしてもらえてうれしいです(о´∀`о)
個人的には最後に椋地を出せたことが良かったです~。
学生編が終わりましたが完結までもう少しお着きあいくださると嬉しいです!ありがとうございました☆