オメガ判定は一億もらって隔離学園へ

梅鉢

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三年生編

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 担任は三年間一緒のため、三年次も新堂が教壇に立っていた。挨拶もそこそこにまだ契約のしていないフリーの生徒向けのプリントを配り始めた。

「後一年で卒業するわけだが、まだ番契約してないやつ手を上げろ。付き合っている奴がいても、まだ未契約であれば手を上げるんだ」

 七人ほどがキョロキョロと視線を動かしながら控えめに手を上げた。半分以下になっているのもすごいとは思ったのに、新堂は「多いな」と小さく呟いていた。

「三年になってこれが目玉の授業と言えるだろう、交流会が始まる。アルファもオメガも未契約者を対象に行われる。もちろんパートナーを見つけるための交流を目的とした、前向きなものだ。月曜六限に三年アルファと、水曜六限には二年アルファと過ごしてもらう。ちなみに一年アルファとはないから、一年の中に狙っている奴がいたら個人的にやってくれ。交流会は同じ部屋にて自由に過ごしてもらうだけだが、これはお前らが番契約をするまで続けられる。ちなみにここでも契約できなかった奴は卒業後に同じようなことが待っているから、早めにいいやつ捕まえておけよ。時間が経つほど残り物になっていくからな。契約済みのやつらは自習だ。図書室でも行って適当に過ごせ」

 一部の生徒のみ配られたプリント。8番から見せてもらったそれには細かな注意事項が書かれてあった。
 薬の混入を防ぐために飲食物は持ち込み禁止や、一人のアルファが一人のオメガを独占するような行為は禁止などなど。普段話すことがない人ともゆっくりと話せるシステムは、番が欲しい人にはありがたいものだ。
 そしてずらりと並んだアルファ側の名簿。未契約者のみらしく、椋地の名前があった。椋地にしたらこんなことも興味が無さそうだが、どういう顔してその交流会にいるんだろうと想像するとおかしくなった。

 さすがに三年アルファの名前は半数ほどで、二年はまだ殆どの名前があるようだった。
 ……となると、昨年度は朝永もこれに参加しているということか。地味にイラッとするのはなんでだろう。いや、これが学校のやり方なんだから気にしたら負けだ。

 俺も継直も関係のない話しだが、「ちょっと興味あるな」と継直が呟くとと8番が眼を輝かせた。

「分かる。つまりハーレムってことだろ?」

 そのセリフに継直と共に笑ってしまった。
 どうやら8番も一度アルファを好きになってから、アルファにしか感情が向かなくなったらしい。少人数のオメガだけでその倍以上いるアルファとの交流会をご褒美感覚で捉えていた。

「年下探すわ、年下。見てよ、二年殆ど残ってるし。年上に興味あるアルファいるといいなー」
「やっぱタメは対象外なのか。俺、先輩と二年違うけど、結構辛いぞ、会えないの。浮気の心配なんてしてないけどな」
「あー浮気か。俺の卒業後に新しい年下の若いオメガに目移りされたら困るな……」
「いや、俺は浮気の心配はないんだって」
「外の空気は新鮮すぎて、こんな邪悪な学園のことなんてすっかり忘れちゃって、羽伸ばしまくってるかもよ、先輩。そんで13番が卒業したらなにもなかったことにして番になる、という具合に」
「やな奴だなー、お前ー」

 二人とも遠慮のない会話にまた笑ってしまった。
 どうせ朝永は今年からは不参加だ。なんの心配もいらない。
 三年になってから知らされた交流会。一、二年の時は知らされていなかった。朝永からもそんな話を聞いたことがない。プリントの最後に※印を付けられた『三年オメガ生徒を対象にした交流会について、オメガの下級生には他言しないこと』の文字。三年になればどうせ知ることになるが、なくてもいい争いを避けるためだろうか。
 未契約者で現在付き合っている生徒達にも、未契約であれば何があっても結果を受け入れろとだけ書かれてあって、この一文だけ妙に怖くなった。付き合っていても契約がまだであれば奪うのも有りってことか。
 心から契約済みでよかったと思えた。朝永には俺と番契約してくれたことに感謝しかない。

 一息ついてプリントから眼を離す。
 目の前にはまだ続いていたふたりの軽妙なやりとり。

 少し離れた席では2番が身動きせずにジッとプリントとにらめっこをしていた。

 みんなそれぞれ良い人が見つかって落ち着いてくれたらいいなと願った。

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