オメガ判定は一億もらって隔離学園へ

梅鉢

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2年生編

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 今すぐにでも会って話をしたいのに今日からしばらくいないとは、俺に対して神様がくれた修行なのだろうか。心頭など滅却も出来ないし火なんて熱いままだ。
 何をあげようかなって考えていてそのまますっかり忘れてしまっていた。
 朝永は随分と前から俺へのプレゼントの準備をしていてくれていたというのに。

 食堂で大声を出してしまったため、急いでお膳を片付けて部屋に戻った。そして朝永から貰った首輪をテーブルに置いてにらめっこをしていた。
 朝永の欲しいものはなんなのだろう。とてもお金が掛かるものだと言っていたが、きっと俺には買えない物だ。とすると、やはり俺は俺独自に考えなければならない。

 以前カーディガンの代わりのものを、と言ったときは抱きしめられた。あんなものが代わりになれるのなら、誕生日に俺をくれてやるのが一番手っ取り早い。俺さえいればあとはなにもいらない。
 いやしかし、それでいいのだろうか。そう簡単に朝永に明け渡してしまうのはまだ戸惑う。気持ちを伝え合ったところで継直のようなものが無いから。

 いや、待てよ。俺の誕生日は祝ってもらったけど、クリスマスも年末年始も忙しくてスルーされていたし、それほどイベントを重要視していないかもしれない。
 なんだか自分の都合よく考えてしまうが、俺の誕生日を祝ってもらっておいて、このままスルーはやはり出来ない。忘れたままならよかったけど思い出してしまった。いや、思い出して良かったんだ。

「う~ん」

 俺の頭では考えられないため、スマホで検索だ。
 財布やらなんやらと出てくるが、相手は金持ち。きっと欲しいものは何でも持っている。時々手作りものが出てくるが、俺の手作りなんて自分で気持ち悪いので却下だ。ご飯も椋地のおいしいご飯を食べているのだ。俺はお呼びではないだろう。
 最終的には何もあげるものが無くなってしまう。
 仕方ないので無難にケーキでも買ってお祝いしよう。朝永にお願いして部屋に行けるよう申請してもらって。

 遅くなってゴメンできっと済む。3月29日も朝永は帰省していたのだから。それに朝永は優しいから。

 一仕事を終えた気分になった俺はその日はシャワーだけにしてさっさと眠ってしまった。
 異常に疲れてしまっていたようで、部屋のベルの音で目を覚ますが12時を過ぎていて継直に呆れられた。

 そして何故昨日大声を出してしまったのか理由を話すとさらに呆れられた。

「北原かわいそー」
「いや、うん。本当にそうだよね……」
「北原もなんでこんな……」

 継直の言葉の続きが勝手に脳内で自動再生される。言い返すこともできずに、昨日スッキリして寝たはずがまた頭がどんよりと重くなってきた。

「んで、何をあげることにしたんだ?」
「ケーキを買って一緒に食べようかと」
「プレゼントは」
「け、ケーキ?」

 ホラー漫画よろしく目を見開いた継直は「本気で言ってんだろうな」とドスをきかせてくる。
 本気だからこそ、ケーキになったんだし、これでも随分悩んだ結果だけど継直を納得させるものではなかったらしい。

「じゃー、継直だったら、先輩の誕生日に何あげる?」
「俺だよ俺」
「お、男らしい……」

 眉間に皺を寄せながら、即答するものだからちょっと感動してしまった。

「はぁー。でもなー、こんな夜詩人だからこそきっと北原もいいんだろうな」
「こんな俺、だからこそ?」
「お前といたら色々どうでもよくなってくるってことだよ。のんびりといられそうと言うか、ぼーっとしていてもいいと言うか、なんとなく気を張らなくてもいいと言うか」
「褒め……」
「褒めてるわっ」

 かぶせ気味に言われ、そうかと胸を下ろした。あまり褒められている気はしなかったが、継直なりに褒めてくれているのだろう。本当になんでも言いたいことを言ってくれて俺にとってはありがたい存在だ。

「北原って忙しくて確かに同じ学年だというのに会えないけど、俺と違って会えるときは会えるんだから幸せなんだよ、夜詩人は」
「確かに、継直にしてみたらそうだよね。先輩とは卒業まで会えないんだから」
「いや、会えるよ。番になれりゃー。こんなことなら先輩の意見なんて聞かないで一緒に辞めればよかったわー」
「えっ」

 たった今ありがたみを感じた存在がここから去りたいと言う。
 俺はやっぱりこの好き勝手言いながらもどこか憎めない継直と一緒に卒業したい。

「俺は継直がいてくれるとすごく嬉しい。……そりゃあ色々あったけど、でも継直がいてくれて本当に良かったんだ。一緒の学年で、そしてオメガで。継直がいてくれたからこんなにも逞しくもなったと思うし」
「何だそれ」
「えーと、いや、単純に俺の気持ちだけど」
「まあね、先輩から卒業はしろって言われているから卒業まではいるけど、夜詩人はそんなに俺にいて欲しかったわけか」

 ふーん、と得意げな表情の継直。
 ちょっと恥ずかしかったけど、本音だからスッキリもした。


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