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家と先輩2
しおりを挟む色んな意味で、先輩のことがどうしても頭から離れない。
二度あることは三度あって、三度あれば、それは継続していくものなんだろうか。
二度も過ぎて、三度も過ぎて先輩とはこの短期間で四度の関わりがあった。
ゆっくりと自転車を漕ぎながらの帰り道、なんとなく考えた。
友達でもないし、先輩の名前はいまだに分からないし。苗字はどうやら「トーノ」らしいけど。殿さまじゃなかった。
関わりたくないのが本音で、できればなかったことにしたい。
意地悪だし、性格悪いし、痛いことはしてくるけど、でもどうしてか憎めなかった。
やることなすこと無茶苦茶なのに。散々なことされたのに。
嫌いじゃなかった。
俺は、先輩を嫌いじゃない。
不思議だった。
多分、先輩の生まれ持ったものだと思う。それが「なんだ」と問われれば分からないとしか言えないけど。
雰囲気なのかな……。
被害者の俺にそう思わせる先輩は不思議な人だ。
そんな先輩をどこか羨ましく思った。仲間がたくさんいるけど、きっと皆先輩のことが好きなんだと思う。誰とでも話も出きそうだし、初めてあった人でもすぐに打ち解けて冗談も言い合えるだろう。
いつの間にか先輩のいいところでも探していたみたいに思えて、俺は一人顔をしかめる。
どうして俺がこんなに先輩のことを考えなきゃならないのだろう。
家に帰ってもやっぱり先輩のことがちらちらと頭をよぎって俺を悩ませた。
どうしてこんなに考えなきゃならないんだ。
ムカムカしながら階段を下りようとしたらつるっと足を滑らせ、一番上からごろごろと転がり落ちてしまった。
これが初めてじゃないけど。
俺がよく階段から転がり落ちるものだから親は階段だけワックスをかけなくなって、それから転がることがなくなっていた。
久々に転んだ家の階段、なかなかのものがある。
転がり落ちているときはあまり痛みもなくてぐるぐる目が回っているだけ。
ドスン、と床に倒れたときに、全身に痛みが広がる。
すぐには動けなくて倒れこんでいると母親がリビングから顔を出してきた。
「……何してんだか」
一言呟いて、リビングに戻っていった。
なんだか寂しくなって泣きたくなった。
唇が自然と尖って、起き上がろうと手を付いたときあちこちに痛みが走る。足を挫いたらしく、足首がすごく痛い。腫れたら捻挫だろう。内出血もするかも。
最悪だ。
足を引きずりながらリビングへ行き、冷たい母親にシップを貼ってもらった。
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