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陰と先輩4
しおりを挟むワタワタと首を振り、いつまでも恥ずかしさの消えることがない俺を、先輩は後ろから抱きしめてきた。
「俺、恥ずかしい顔も大好物だからこっち向けよ」
耳元で低く囁かれたそれは俺の背筋をすっと伸ばす。でも笑いを含んでいたので無視をして肩を動かして離れろと促した。
「っ、離れてくださっ」
「お前の髪の匂いやっぱ好きだわー」
俺も先輩の匂いが嫌いじゃないけど。
でも抱きしめられるのは嫌いだ。
アンタはいちいち俺を笑うし、何をするか予想できなくて怖いんだよ。
ジタバタと暴れて、もがいてみても先輩の腕から抜けることは出来ない。それどころかどんどん抱きしめる力が強まっていく。
「せんぱっ、離して……」
「ちゅーしよっか」
「はぁ!?」
「忘れられていたの、俺なにげにショックだから」
「いや、ちょと、忘れてたからってアンタ!」
「アンタ?」
「いえ、先輩!」
あわわわわ。
出来るだけ身を縮め、もう先輩の逆鱗に触れないように何も言わないでおこうと決めた。
「オラ、こっち向け」
ぶんぶんと首を横に振る。その顎を先輩の手がガシリと掴む。慌てた俺は顎を掴んだ先輩の手を両手でもって放させようとした。
「こらー。はなせバカタレ」
無理です、無理です!
そう何度も男とキスが出来ますか。
そう思って、すぐのことだった。
「っ!? ちょっ! 変なトコ触らないでください!」
先輩は顎を掴んでない、俺を抱きしめていた手を股間にやり、ぎゅっと握った。無防備だったそこは完全に先輩の手に覆われていて。
もう力強く抱きしめられてもいないけど、こんな状態じゃ逃げることも考えられなくて、ただ先輩の妖しく動き始めたこの手をどうにかやめさせたかった。
「マジ、離してください!」
「お前からちゅうしてくれたら離してあげる」
どうしてここでハードルをあげるんですか、先輩…。
制服の上からでも起用に揉みしだく先輩の手に、俺は崩れてしまいそうだった。このまま起ってしまったら余計なことが起こりそうでそれも怖かった。
「せ、んぱ……離して」
「ちゅーは」
「……、……する、しますから」
だから、離して、と俺の中心をやわやわと揉む先輩の手に俺の手を重ねる。先輩の手は止まった。けれどまだそこに手を置いていて。
本当は引きちぎるくらいに握って、振り払うことが出来ればいいんだけど、中途半端に熱くなった俺の体はこうすることしか出来ないでいた。
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