痛がる人を見るのが大好きな先輩との話

梅鉢

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陰と先輩2

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先輩に連れられて中庭へ行った。
この中庭は沢山の松で覆われていて、その下ではツツジやらなんやら小さい木々も沢山あって独特の雰囲気がある。

「あっちぇーなぁ」

太陽を仰いで、パタパタと手で風を作っている先輩は端にある茶室の壁に太陽の光から隠れるように座った。目の前にはやはり何本もの松の木があって風に揺れて時々太陽の光が射す、そんな場所だった。

「おいでー」
「俺、本当に授業中で……」
「はい、これ」

いい加減人の話聞きましょうよ。先輩はマイペースすぎて疲れる。
渡されたパックのジュースはイチゴオレ。くそ暑いのにこんなまどろっこしいもん飲みたくないが、よく冷えていてその冷たさが俺を飲む気にさせてくれた。

「おいでよ」
「……失礼します……」

もういいや、と観念して先輩が座っている石段に少し離れて座った。距離をとっても先輩は何も言わずにカフェオレにストローを突き刺して飲み始める。手を後ろに付いて、ぼけーっと中庭を眺めながら。
俺もカフェオレがよかった。
その思いは口に出さずに貰ったイチゴオレにストローを突き刺す。
イチゴオレはやっぱり甘ったるくて暑い日には合わないなと思うけど、喉が渇いていたのかゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。

「イチゴオレ好き?」
「まぁ、普通程度には」
「そ。この間買ってたアイスさーイチゴとバニラばっかりだったから、好きかと思って」

なるほど。
しかし俺は何も返さずにイチゴオレを飲み続けた。そのうちズゴゴと下品な音がして、あっというまにイチゴオレはなくなってしまった。
なんだかんだ言って俺はイチゴオレが好きなのかもしれない。

「お前飲むの早くね?」
「みたいですね……」

先輩はくすりと小さく笑んで自分の飲みかけのカフェオレを俺によこしてきた。
飲みたかったのは新しいカフェオレで、先輩の飲みかけのものなんて別にいらないのだけれど。

「いいよ。飲んで」
「いえ、……いいです」
「はい」
「本当に人の話を聞かないし……」
「あ゙?」
「いえ、何でもないです……」

基本的に先輩の口調は怖いものじゃない。おどけてみせたり、怖い人たちといるけどその中じゃわりと柔らかいほうだと思う。
でも時々俺が口答えのような、先輩に対しての言葉使いが悪いと、先輩は人が変わったような口調になる。そうなると俺は怖くて逆らえない。

勝手に手に渡されたカフェオレは、まだ半分以上は入っていた。
しかし先輩は何のためにこんなところに連れ出したのか。今の状況を見た限り俺に用事があるわけでもないし、特別話があるわけでもなさそうだ。
サボろうと言ったのはただ単純に授業に出たくなくて俺を道ずれにした……ってとこだろうか。

カフェオレもさっさと飲んでここから退散しよう。

先輩も俺も前を向いていて、先輩が横目で俺を見ているなんて分からなかった。だからなにも気にせずにストローに口を付けた。
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