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陰と先輩1
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あの日、先輩はすんなりと帰してくれた。
耐えることなくゲラゲラと笑いながら俺を見送った。
すごく馬鹿にされた気がした。
でも、先輩が何もしなくて帰してくれて本当によかった。それだけが救いだった。
7月に入ってそろそろ期末テスト。自習も多くなってきた。
クラスの何人かはぴりぴりし始めている。ここは普通5割、馬鹿と頭のいいやつが2割5分ずつくらいだろうか。
二限、英語の時間をテスト勉強として自習にしてくれた。
佐々岡は辞書を忘れたといって図書室へ行くという。俺も息抜きのため付いていくことにした。皆授業中のこの時間を歩くのは、やはり好きだった。
図書室にはすでに何人かのクラスメイトがいて、勉強をしていた。みんな頭のいいやつらばかり。教室じゃ煩くて頭に入らないからだとかなんとか先生に言っていた気がする。
それならもっといい高校へ入ればよかったのにとも思うが。
佐々岡は辞書を見つけるとさっさと教室へ帰った。俺は勿体無くて少し図書室をぷらぷらすることにした。そしたら派手に椅子につまずいて、頭のいい皆さんからいっせいに睨まれて、すごすごと図書室から退散した。
頭のいいやつも怖い……。
こんなことになるなら佐々岡と一緒に教室に帰ればよかったと思いながら廊下を歩いた。
が、生徒玄関からひょいと現れた人物によってその思いがいっそう強くなった。
「よお。元気ー? って昨日会ったばっかだしねー」
今来たばかりなのか、先輩は鞄片手にニコニコとした笑顔で目の前に立った。
「何? 今サボってんの?」
「いえ、……あ、図書室に、ちょっと」
「ふーん」
「あ、あの……」
「んー?」
「昨日は、あ、あ、ありがとうござ、いました」
アイスと傷の手当と、と続くことは出来なかったけど、先輩は言ってることが分かったみたいだ。おかしなこともされたけど、一応傷は綺麗にしてくれたし、あんなに奢ってもらったし…。
先輩は対して気にしていないようすで「別にいーよ」とだけ返してきた。
「なんか飲む?」
「え?」
「今自習だろ? ちょっとサボらない?」
「それはちょっと……」
どう考えても無理だろう。俺は授業中なのに。
なのに先輩は玄関に置かれた自動販売機に小銭を入れ、「何がいい?」なんて聞いてきて。
つくづく人の話を聞かない先輩だ。
「あの、俺授業中で」
「俺も授業中」
あんたは今来たばかりだろうが。
がこん、がこんと自動販売機から二つの音が聞こえた。屈んでそれを取り出す先輩を無視してそろりと足を進める。
よしダッシュだ!
「逃げたら犯すよー」
俺男だけど、その言葉はすごく効き目があります。
ダッシュ態勢だったが当然立ち止まることしか出来なかった。
耐えることなくゲラゲラと笑いながら俺を見送った。
すごく馬鹿にされた気がした。
でも、先輩が何もしなくて帰してくれて本当によかった。それだけが救いだった。
7月に入ってそろそろ期末テスト。自習も多くなってきた。
クラスの何人かはぴりぴりし始めている。ここは普通5割、馬鹿と頭のいいやつが2割5分ずつくらいだろうか。
二限、英語の時間をテスト勉強として自習にしてくれた。
佐々岡は辞書を忘れたといって図書室へ行くという。俺も息抜きのため付いていくことにした。皆授業中のこの時間を歩くのは、やはり好きだった。
図書室にはすでに何人かのクラスメイトがいて、勉強をしていた。みんな頭のいいやつらばかり。教室じゃ煩くて頭に入らないからだとかなんとか先生に言っていた気がする。
それならもっといい高校へ入ればよかったのにとも思うが。
佐々岡は辞書を見つけるとさっさと教室へ帰った。俺は勿体無くて少し図書室をぷらぷらすることにした。そしたら派手に椅子につまずいて、頭のいい皆さんからいっせいに睨まれて、すごすごと図書室から退散した。
頭のいいやつも怖い……。
こんなことになるなら佐々岡と一緒に教室に帰ればよかったと思いながら廊下を歩いた。
が、生徒玄関からひょいと現れた人物によってその思いがいっそう強くなった。
「よお。元気ー? って昨日会ったばっかだしねー」
今来たばかりなのか、先輩は鞄片手にニコニコとした笑顔で目の前に立った。
「何? 今サボってんの?」
「いえ、……あ、図書室に、ちょっと」
「ふーん」
「あ、あの……」
「んー?」
「昨日は、あ、あ、ありがとうござ、いました」
アイスと傷の手当と、と続くことは出来なかったけど、先輩は言ってることが分かったみたいだ。おかしなこともされたけど、一応傷は綺麗にしてくれたし、あんなに奢ってもらったし…。
先輩は対して気にしていないようすで「別にいーよ」とだけ返してきた。
「なんか飲む?」
「え?」
「今自習だろ? ちょっとサボらない?」
「それはちょっと……」
どう考えても無理だろう。俺は授業中なのに。
なのに先輩は玄関に置かれた自動販売機に小銭を入れ、「何がいい?」なんて聞いてきて。
つくづく人の話を聞かない先輩だ。
「あの、俺授業中で」
「俺も授業中」
あんたは今来たばかりだろうが。
がこん、がこんと自動販売機から二つの音が聞こえた。屈んでそれを取り出す先輩を無視してそろりと足を進める。
よしダッシュだ!
「逃げたら犯すよー」
俺男だけど、その言葉はすごく効き目があります。
ダッシュ態勢だったが当然立ち止まることしか出来なかった。
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