痛がる人を見るのが大好きな先輩との話

梅鉢

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嘘と先輩5

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転がしたり、潰したり、先輩の舌の動きはどうも疼きを増やしてくる。
痛いのもイヤだけど、これはこれでいやだ。

「あんま感じねーの? 優しくされたくないのかなー?」
「もう、……もうマジで、勘弁してください」
「じゃー1回やったら嘘付いたの許す」

ぎゅっと濡れた尖りを爪で摘まれ、言葉をなくす。上からは失笑に似た笑いが聞こえた。

本当に1回ですむのかどうか。
でも、こんな男相手に何度もやりたいと思うわけがない。俺は男相手に性欲を感じたことがないし。きっと先輩もオモチャとしての俺を一度散々に遊んで、そのまま捨てる気だっただろうし。
なぜ俺を相手にしているのかはまったく不思議だけど、この人はどう考えても女が大好きだろう。あれだけ女といるところを見てきたのだから。
多分、これっきり……だよな……。

「ほ、んとうに……。1回で許してくれますか…?」
「うん」

笑顔を向けられても、それはやっぱり胡散臭い。
この先輩にいいイメージが微塵もないからだと思うけど。

「じゃあ……。これで、終わりにしてください…」

悔しいけど、もう、本当にこの人に関わりたくなかった。
どうしても、今、このときに終らせたかった。

「オーケー。手、放すけど暴れんなよ」

開放されたては、力なく床に落ちていく。
抵抗する気はもう残ってない。
目を伏せ、顔を背ける俺の気持ちなど一かけらも分からないだろう。
理不尽な理由でこんなことされる、俺の気持ちなんて。

カチャカチャとベルトのはずす音が聞こえてからすぐ、下半身が容赦なく空気に晒される。
隠すつもりもなかった。体の力を抜いたまま、先輩のやりたいようにやらせる。

「縮みすぎ。怖い?」

首を横に振ったところでこんな状況じゃ嘘を付いてるとバレバレだ。壁を見たままゆっくり縦に頷いた。

「怖くない怖くない。俺が相手だから痛いことあっても、怖くはないよ」

やってることもめちゃくちゃだけど言ってることまでめちゃくちゃとは。

これからやられる未知のこと、女の役割。それに、俺にとって痛いのだって怖いうちに入っている。
ズボンと下着を脱がされ、膝を立たされて足を大きく左右に開かれたときはさすがに恥ずかしくて床に投げていた腕で顔を隠した。

「あ、俺恥ずかしい顔も好きだわ。だから隠すのナシね」
「……無理、……です」
「あそ。ま、いいや。あとで見るから」

開けっ放しの窓から流れる風は、もう冷たくなっていた。
何も纏っていない下半身、寒さと羞恥に震える。

先輩はごそごそと何かをしていた。
でも、見ることが出きずにいたから何をしているかは分からなかった。

じっと、ただじっと、先輩の行動を待っていると開かれた足の中心、その奥を撫でられる。
多分指に何かをつけて撫でている。その冷たさに身震いした。

「基本的に俺が辛くない程度にしか慣らさないから」

ああ、俺はもう普通の男じゃいられなくなる。ケツの穴を男に撫でられて、しかもこれからコトに運ばれようとして。

どうか今このとき、時が止まって、俺だけが動けるなら。
俺だけ動くことが出来るよう、時が止まってくれるなら。
とりあえず先輩はこの三階から外に投げ捨てることが出来るのに。

顔を隠したから先輩の行動も見えず、オレンジに染まった壁だけを見て、妄想した。自分の都合いいことだけを考えてないとやっていられなくて。
しかしツプ……と指が一本は入ってきて、もうなにもかも終った、なんて思って自分自身を捨てたくなった。

「やっぱきついねぇ」
「っ……うぅ」

狭い孔を先輩は躊躇することなく指でかき回す。
痛くはないけどすごく気持ち悪かった。中を撫でられている感触は当然、今までに感じたことがないもので吐きそうになる。
俺の反応がイマイチなのか先輩はすぐに指を増やした。二本・三本と。そこまでくるとさすがに痛くて。

「いっ! 痛いですっ……、っ! いた…先輩、痛い!」
「そのくらいが気持ちいーんだって」
「でも、お、れ……、Mじゃない……っ!」
「はっ! 余裕あるねーお前」

ぐるぐると穴を広げようと回していた指は、ゆっくりと内側を撫でる手つきに変わる。内臓を直に触られるのは、背中がもぞもぞして、腹を掻きむしりたくなるような感触で。どうも落ち着かない。

眉間に皺を寄せ、腕の隙間から先輩を除き見ればとても意地悪そうな笑み。

「あー。やっぱもう突っ込もう」

指が抜かれる。いつの間にかくつろげられていたのか先輩の肉棒はぺとりと俺の孔に当てがわれ。

どうしよう……。やっぱり怖い。
怖い!

「せんぱっ!」
「なーにー?」
「やっぱり、怖いっ! こわっ、んああっ!」
「あー俺もいてぇ。力抜けよバカ」

小刻みに揺らしては少しずつ推し進められる熱いそれに、俺は目を見開いて拒絶した。
指とは比べ物にならない太さ、長さ。

「いたいっ! やだっ! も、やだっ」

涙は出てないが涙声の俺。顔を覆っていた両腕を先輩の手にそれぞれに捕まれ、顔の横で押さえつけられる。

「いやだ……いやだ……。痛い……」
「ああ、かわいいな。お前のその声も。……な、痛い? 痛い?」

うっとりしているような先輩の声、それに気が付かないでただ痛みを訴えたくて何度も頷いた。
だが頷いた俺を嘲笑うかのように優しさのかけらもなく貫いてくる先輩。

痛くて、痛くて、慣れることがなかった。きっと先輩はわざと痛くしていたんだと思う。
だって、先輩はとうとう涙を流してしまった俺を見て、嬉しそうな声で笑ったんだから。
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