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両親から婚約者が決まったと知らされた時、正直期待した。
現国王の姪リリアナ姫と俺の縁談がまことしやかに噂されていたからだ。
金の髪と金の瞳を持つ彼女はまだ幼いながら、将来国一番の美女になるのは間違い美貌だし、何より王と縁戚になれる。
公爵家の嗣子でとても優秀な自分にはそれぐらいの相手でないと釣り合わない。
そう思っていたのに。
「本当にぱっとしないな」
それが両親が連れて来た平凡な少女への正直な感想。
容姿も平凡なら、大した才能がある訳でもない。いつでもへらへらと愛想笑いを浮かべているだけの女で、俺とまともに会話する事さえ出来やしない。唯一許容範囲出来るのは俺を尊敬している態度だけだが、それだって俺が優秀なだけで彼女の美徳じゃない。
だから出会った時から不満だった。
「どうして彼女なんだ」、「俺にはもっと釣り合う相手がいるはずだ」、「相手を変えてくれ」。何度も親に頼んだが、首を横に振るだけだ。
「親が穏健派だとか、弟が国王一家のお気に入りだとか、知るか!」
彼女の家族が俺が将来出世するのに役に立つからってのが婚約の理由なんだから、結局彼女自身は何の役にも立たないんだ。だから無碍に扱っても構やしない。
そう結論付けた俺は婚約者を顧みることはなかった。
ラーラを放って友人と飲み明かし、女と遊んだ。だって将来有望で外見も美しい俺は男女問わずにモテたから。それでも彼女は何も言わないから、ずっと放置した。親の面子を立てる為に、公式の場では最低限のエスコートをしたがそれだけだ。
そんな俺が半年前、運命の相手に出会った。
父親の爵位は子爵でしかないが、領地に優良な鉱山を持つ資産家の令嬢キャリー。美しいブランドと大きくて潤んだ瞳、豊満な軀つきの女性。多少頭は弱いが、女はそれくらいでいい。それより俺に心酔し、尊敬し、媚態を示す姿にくらりとした。
「穏健派だから味方が多いわけでもありますまい。その点、金は力になります。人の意見も買える」
父親の方も娘が公爵夫人になれるなら援助は惜しまないと公言した。それを聞いた娘も顔に喜色を浮かべ俺にしなだれかかり、大きな胸を押し付けてきた。
この父娘がいればいい。爵位が低いのが気に入らないが、俺の役には充分立ってくれるはずだ。これで平凡でぱっとしない、気に入らない婚約者とやっと別れられる。
俺は意気揚々と婚約破棄を宣言した。
「ラーラ、君との婚約は今、この場で破棄させてもらう!」
泣いて縋って取り乱す姿を見たらどれほど気持ちいいだろうと、わざと衆人環視の場で告げたのに、彼女は淡々と了承した旨を告げてその場から姿を消した。
「可愛げのない奴だ」
フンっと鼻を鳴らして振り向くと、俺を英雄のようにうっとりと見つめるキャリーの瞳があった。
悪くない。こうやって崇められ、正当な評価を受けるのが公爵家の嗣子たる俺には相応しい。
満足げにキャリーの肩を抱き歩き出した俺は知らなかった。
この俺の行動全てが謀られたもので、俺は彼に踊らされていただけなのだと。
現国王の姪リリアナ姫と俺の縁談がまことしやかに噂されていたからだ。
金の髪と金の瞳を持つ彼女はまだ幼いながら、将来国一番の美女になるのは間違い美貌だし、何より王と縁戚になれる。
公爵家の嗣子でとても優秀な自分にはそれぐらいの相手でないと釣り合わない。
そう思っていたのに。
「本当にぱっとしないな」
それが両親が連れて来た平凡な少女への正直な感想。
容姿も平凡なら、大した才能がある訳でもない。いつでもへらへらと愛想笑いを浮かべているだけの女で、俺とまともに会話する事さえ出来やしない。唯一許容範囲出来るのは俺を尊敬している態度だけだが、それだって俺が優秀なだけで彼女の美徳じゃない。
だから出会った時から不満だった。
「どうして彼女なんだ」、「俺にはもっと釣り合う相手がいるはずだ」、「相手を変えてくれ」。何度も親に頼んだが、首を横に振るだけだ。
「親が穏健派だとか、弟が国王一家のお気に入りだとか、知るか!」
彼女の家族が俺が将来出世するのに役に立つからってのが婚約の理由なんだから、結局彼女自身は何の役にも立たないんだ。だから無碍に扱っても構やしない。
そう結論付けた俺は婚約者を顧みることはなかった。
ラーラを放って友人と飲み明かし、女と遊んだ。だって将来有望で外見も美しい俺は男女問わずにモテたから。それでも彼女は何も言わないから、ずっと放置した。親の面子を立てる為に、公式の場では最低限のエスコートをしたがそれだけだ。
そんな俺が半年前、運命の相手に出会った。
父親の爵位は子爵でしかないが、領地に優良な鉱山を持つ資産家の令嬢キャリー。美しいブランドと大きくて潤んだ瞳、豊満な軀つきの女性。多少頭は弱いが、女はそれくらいでいい。それより俺に心酔し、尊敬し、媚態を示す姿にくらりとした。
「穏健派だから味方が多いわけでもありますまい。その点、金は力になります。人の意見も買える」
父親の方も娘が公爵夫人になれるなら援助は惜しまないと公言した。それを聞いた娘も顔に喜色を浮かべ俺にしなだれかかり、大きな胸を押し付けてきた。
この父娘がいればいい。爵位が低いのが気に入らないが、俺の役には充分立ってくれるはずだ。これで平凡でぱっとしない、気に入らない婚約者とやっと別れられる。
俺は意気揚々と婚約破棄を宣言した。
「ラーラ、君との婚約は今、この場で破棄させてもらう!」
泣いて縋って取り乱す姿を見たらどれほど気持ちいいだろうと、わざと衆人環視の場で告げたのに、彼女は淡々と了承した旨を告げてその場から姿を消した。
「可愛げのない奴だ」
フンっと鼻を鳴らして振り向くと、俺を英雄のようにうっとりと見つめるキャリーの瞳があった。
悪くない。こうやって崇められ、正当な評価を受けるのが公爵家の嗣子たる俺には相応しい。
満足げにキャリーの肩を抱き歩き出した俺は知らなかった。
この俺の行動全てが謀られたもので、俺は彼に踊らされていただけなのだと。
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