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第8章

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個人としても秘書としても。頭では理解出来ているのに、二重の意味で関わる事を断られた気分でどうしても精神は沈みがちだ。

ため息を何度も吐きながら帰宅すると、久しぶりに母が出迎えてくれた。

「お帰りなさい。疲れているでしょうけど、少しいいかしら?ドレスが出来上がったの」

うきうきと話す母を見ていると、私もどうにか笑顔を浮かべる事が出来た。

「ええ、もちろん。すぐにお部屋に行くわね」

ーーーそして目にしたのは意外すぎるモノだった。






「まぁ、思ったよりもずっと似合うわ。思い切ってよかったわね」

渾身の作のドレスを着た私を、母は嬉しげにニコニコと見つめている。あまりに嬉しそうだから、何も言えないけれど私の頭の中はビックリマークでいっぱいだ。
嬉しげな笑顔で母に差し出され身に付けたのは、私が見知らぬドレスだった。いや正確には知っているけれど、あり得ない変化を遂げたドレスで。

「リディア、本当によく似合っているわ」

「ありがとうございます。ただ、その、これはどうやってリメイクしたのですか?まるで全く別のドレスのようですが……」

母の幸せそうな笑顔を見ていると疑問を挟むのが申し訳なくなったが、やはり聞かないわけにはいかない。なるべく問い詰める口調にならないように注意しながら自分の姿を鏡で確認する。

レースとパフスリーブを除いて襟ぐりを広くしたボディスは少し前に私が見た時と同じ。数カ所摘んでボリュームを抑えたスカート部分のアクセントもそこに共布で作った花を足しただけで基本は変わらない。変わったのは一箇所、それでいて全体。

「前に見た時は殿下に贈って頂いた時と同じピンクのグラデーションだったはずなのに、どうやって色を変えたのですか?」

リメイク前に母は「とても薄い生地と繊細な色味だから染め直すのは難しい」と言っていたのだ。それなのに今、私の体を包むドレスは春の晴天のような空色。こんな薄い色をピンクの上に重ねて染めるのはどんな職人だって不可能だし、何より以前のドレスは特徴的なグラデーションだったのにその痕跡すらない。

「一度漂白して色を抜いたのですか?あぁでも、それは生地が傷むからしないのでしたっけ。ではやはり重ねて染めたですか?」

正直、頭の片隅には正解がチラチラと顔を出しているのに気付いてはいるけれど、そのことに気付いたら負けてしまう。というか、我が家の状況を考えればあり得ない。
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