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第7章

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金銭的に苦しいことの多かった我が家で、親子の絆は強い。もちろん、そうでなければ乗り越えられなかったのもあるけれど、それとは別に私は両親から確かな愛情を受けて育った自信があるし、私自身も両親に対して愛情を持っている。きっとそれは、普通の貴族家庭よりも愛情だけでいえば恵まれた環境なのだろう。だからかお互いに隠し事はほぼなかった。
私がしている隠し事なんて、前世の記憶があることくらいだ。両親に至っては何もないと本気で思っていた。最近まで。

「ちょっと事情があって、母は少し前からさる女性に裁縫を教えているんです。その方のお家がとても設備が整っているらしくて、ドレスの作業もそこですると材料も道具も全て持って行ってしまって」

しかも作業をするからと、帰宅も遅くなった。今週など、私が学園から帰ってもまだ帰宅していない毎日で……ちょっと寂しい。

「そうなの。きっと新しいご友人との時間がとても楽しいのね」

私の子供じみた不満を見透かしたように笑って答える先輩に苦笑を返しつつ、そっとその隣のクライブ殿下に視線を流す。「その新しいご友人・・・・・・は殿下の母君で、おうちは王宮ですよ!」と八つ当たりしたいのを我慢して、紅茶と一緒に飲み混んだ。母と王妃様の交流を殿下が知っているはずはないのだから仕方ない。
飲み込み早い王妃様にもう教えることはないらしいのに、「せっかくだから」という理由で王宮で一緒に作業に勤しんでいるのは母の決めた事なのだし。

おかげで学園から帰ったら、作業する母の傍でお茶を飲みながら些細なおしゃべりをするのが楽しみだったのに、それも最近は出来ていない。母自身が楽しそうだから我慢しているが、本当はちょっと寂しいのだ。
近頃は学園で見かける、以前より仲良さげな殿下と先輩の姿に胸が苦しくなっているから尚更、その時間が癒しだったのに。とは、まるで小さな子供みたいだから言えないけど。

「きっとリディアが驚くようなドレスに仕上がるわね。私も一緒に楽しみにしているわ」

優しく笑うエルフリーデ先輩の気遣いがありがたくてその場では頷きながら、その時私の頭の中を占めていたのは全く別のことだった。









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