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第5章
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考えてみれば単純なことだったと、今になれば思う。
王太子と将来の側近候補は幼い頃から交流を持っていて当然だし、そこに遠縁にあたる令嬢も時々加わっていてもなんの不思議もない。
それに周辺国の王族はそれぞれ交流を持つから、どこかの国を訪ねれば夜会や茶会で親しくなる機会など、いくらでもあるだろう。
つまり4人は以前から面識があったのだ。ただ、王立学園に入学するにあたってエルフリーデ先輩は身分を偽って留学してきた。だから、知り合いなのは隠していただけ。
きっと漏れ聞こえた会話の内容からして、先輩は好きな人がいるのだろう。そしてそれはきっと、クライブ殿下で。お互いの立場を考えて、自分の幸せを優先させることを諦めたのだろう。
ただそれだけ、だ。そしてそれは、いっかいの官吏である秘書の私には教えられていなかった。それだけ。
「結局、思い上がっていただけね……」
偶然に知り合って、毛色が違っていたから興味を持っただけだもの。仕事はそれなりにこなしていたけれど、王宮で働く官吏の人達に比べたら特段優秀だった訳でもないのだろう。そんなこと、分かっていたはずなのに。
人前では見せない表情を見せてくれるから、王子様らしくない悪態もつくから、いつだって距離が近いから。いつの間にか自分は特別なのだと、勘違いをしていたらしい。
「こんなんじゃマグリット嬢のこと言えないわ」
はぁっと大きく息を吐いて、手に持った本をまた本棚に戻した。
中庭でひとつの結論に達した私は、自分の愚かさに打ちひしがれながらふらふらと移動して、この旧図書館までやってきた。
どうして移動したのかは自分でも分からないけれど、多分きっと、居た堪れなかったんだろう、と思う。
私が編入したのと同時に新図書館が出来たせいで人気のない旧図書館だけど、開館時間が長いのと混み合わないのが気に入っていて私のお気に入りの自習場所になっている。私がここに良く来ることは生徒会の方々には知られていないので、落ち着いて考え事をしたりたまった仕事を片付けるのにも使ったりもするけれど。
「クライブ殿下に知られると仕事を取り上げられちゃうから」
ふふっと漏れた声は自分が思ったより便りなく響いた。どうやら重症らしい。
「とりあえず、立て直さないと……」
いつの間にやら持ってしまっていた特別意識は早々に捨てるべきだ、と改めて強く思う。
官吏だ秘書だと言って、お茶の場所を変えただけではいけなかったのだ。殿下やロランさんが優しいから、すっかり思い上がってしまっていた。きっとそれをマグリット嬢は鋭く見抜いていて、私に忠告したのだ。
「どうしてかなぁ。ゲームの世界に入れて舞い上がってたのか、ただ単に優しくされて自分は違うって思っちゃってたのか。まぁどっちもかな」
ひとけのない図書館なのを幸いに独り言を遠慮なく口に出す。そうすれば考えもまとまるし、事実の再認識も出来るからちょうどいい。
王太子と将来の側近候補は幼い頃から交流を持っていて当然だし、そこに遠縁にあたる令嬢も時々加わっていてもなんの不思議もない。
それに周辺国の王族はそれぞれ交流を持つから、どこかの国を訪ねれば夜会や茶会で親しくなる機会など、いくらでもあるだろう。
つまり4人は以前から面識があったのだ。ただ、王立学園に入学するにあたってエルフリーデ先輩は身分を偽って留学してきた。だから、知り合いなのは隠していただけ。
きっと漏れ聞こえた会話の内容からして、先輩は好きな人がいるのだろう。そしてそれはきっと、クライブ殿下で。お互いの立場を考えて、自分の幸せを優先させることを諦めたのだろう。
ただそれだけ、だ。そしてそれは、いっかいの官吏である秘書の私には教えられていなかった。それだけ。
「結局、思い上がっていただけね……」
偶然に知り合って、毛色が違っていたから興味を持っただけだもの。仕事はそれなりにこなしていたけれど、王宮で働く官吏の人達に比べたら特段優秀だった訳でもないのだろう。そんなこと、分かっていたはずなのに。
人前では見せない表情を見せてくれるから、王子様らしくない悪態もつくから、いつだって距離が近いから。いつの間にか自分は特別なのだと、勘違いをしていたらしい。
「こんなんじゃマグリット嬢のこと言えないわ」
はぁっと大きく息を吐いて、手に持った本をまた本棚に戻した。
中庭でひとつの結論に達した私は、自分の愚かさに打ちひしがれながらふらふらと移動して、この旧図書館までやってきた。
どうして移動したのかは自分でも分からないけれど、多分きっと、居た堪れなかったんだろう、と思う。
私が編入したのと同時に新図書館が出来たせいで人気のない旧図書館だけど、開館時間が長いのと混み合わないのが気に入っていて私のお気に入りの自習場所になっている。私がここに良く来ることは生徒会の方々には知られていないので、落ち着いて考え事をしたりたまった仕事を片付けるのにも使ったりもするけれど。
「クライブ殿下に知られると仕事を取り上げられちゃうから」
ふふっと漏れた声は自分が思ったより便りなく響いた。どうやら重症らしい。
「とりあえず、立て直さないと……」
いつの間にやら持ってしまっていた特別意識は早々に捨てるべきだ、と改めて強く思う。
官吏だ秘書だと言って、お茶の場所を変えただけではいけなかったのだ。殿下やロランさんが優しいから、すっかり思い上がってしまっていた。きっとそれをマグリット嬢は鋭く見抜いていて、私に忠告したのだ。
「どうしてかなぁ。ゲームの世界に入れて舞い上がってたのか、ただ単に優しくされて自分は違うって思っちゃってたのか。まぁどっちもかな」
ひとけのない図書館なのを幸いに独り言を遠慮なく口に出す。そうすれば考えもまとまるし、事実の再認識も出来るからちょうどいい。
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