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第3章

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「1年のハンディキャップを物ともせず優秀な成績を収めつつ俺の秘書としても有能な仕事ぶりだとロランから太鼓判を押され、しかもエルフリーデ嬢からその気配りと心遣いは素晴らしい品性だと認められている。容姿に関しても俺から見て素晴らしく愛らしいことは間違いない。これ以上ない候補者だと3人から推薦した」

「す、すすすす推薦したっ!?」

「そう、さっき推薦して、認められた。だからリディア、お前が5人目の候補者だ」

「何言ってるか分かってますか?私、男爵令嬢なんですよ?しかも貴族とは名ばかりで、社交界にもやっとつま先だけ引っ掛かってる程度の没落貴族家の娘なんです。そんな私に候補になる資格なんてないですよ。だって候補者になるには家柄も親の財力も必要になってくるのが暗黙の了解なのは周知の事じゃないですか!」

「そんなものは後々足された思い込みだ。規定にはない」

「でも、私なんかが出ては皆さん納得しません」

「あぁ、そういえばマグリット嬢だったか、あの令嬢も同じようなことを言っていたな。どこから聞いたのか辞退者が現れたと知って生徒会室ここに来たんだ。『実行委員長である自分が代理として舞台に立つのが当然』だと言うから、それを即刻否定してリディアを候補者とすると告げたら怒り狂って部屋を出ていった」

「あ、だから……」

実行委員長になってからはまた頻繁にチクチクと色々嫌味を言われてはいたが、表立って堂々とイジワルをされてはいなかった。それはきっと私にも少なくない友人が出来たからで、だからこそ今日のように面と向かって実力行使されて不思議に思ったのだ。一歩間違えば自分にもリスクがあるのにどうして、と。

「リディアには俺たち3人の推薦者がいるがマグリット嬢は誰にも推薦されていないと、きちんと論理的に説明したのだけれどな。どうやらそれが納得出来ないオツムが原因だということすら理解出来なかったらしい」

はっと吐き捨てるように言う様子から見て、大分お怒りらしい。まぁ私も彼女を庇うつもりはないけど。が、それとこれは別問題だ。

「いや、でも、ですね!別にマグリット嬢を出したい訳じゃなくて、私が出るのが違うって、」

「リディアが出なければ、あの女が自分が出るのだとギャアギャア騒ぐのは目に見えている。そんな騒音を聞くのはあり得ない。だから決定事項だ、諦めろ」

そういったクライブ殿下は私の目の前に歩み寄るとすいっと頬に手を滑らした。

「リディアの美点を皆に理解させるのが正しい方法だと言われれば仕方ない。本当は教えたくはないのだが」

「殿下?」

そのままするりと頬を撫でた大きな手は唇にそっと触れてから離れていった。
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