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第3章
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「エルフリーデ先輩!」
私より少しだけ背の高い彼女がブルーグレーのドレスを翻して私とマグリット嬢の間に滑り込んだ。
「マグリット・ライアス様。落ち着かれた方がよろしいのでは?」
冷静な声は凛とした強さと突き放すような冷たさもあり、マグリット嬢の動きを止めるには十分な威力を持っていた。
守られているはずの私でさえびくりと肩を震わせてしまったその声音は普段のエルフリーデ先輩が話す声とはまるで違っていて、クライブ殿下が『氷の殿下』として放つ声によく似たオーラを醸し出していた。きっと統べるものが持つ威厳が身から溢れ出たのだろう。
こんな状況なのに、流石は王女だと感心してしまった。
マグリット嬢が先輩の圧で動けなくなったのを確認すると、エルフリーデ先輩はくるりと振り返って私にいつものふわりとした笑顔で笑いかけた。
「とっても綺麗よ、リディア。それにすごく似合ってる。クライブ殿下が一人で選ぶって聞いて心配だったけど、意外と趣味がいいのね。でも、その色は予想外だったかな」
にこにこと語るエルフリーデ先輩を見ながら、私の胸には別の思いが膨らんでいた。
いやこれ、流石にモブっぽい展開だわ。
だって、これがヒロインだったなら、馬車を降りた時点で攻略対象が出迎えてくれるはずだ。そうじゃないなら、ピンチを救ってくれるのが攻略対象ってパターンもある。
なのに、私の場合は両方女性。攻略対象どころか異性でもないなんて、心ときめく展開になるはずがない。やっぱりモブにまでロマンスな展開は用意させていないらしい。いや、知ってたけどさ。
とはいえ、せっかく助けてもらった上に褒めてもらっているので、自分の思考に浸り続ける訳にはいかない。綺麗と褒めてくれた人が絶世の美人だった時はどう対応すればいいのだろうと悩みながら、口を開く。
「ありがとうございます。クライブ殿下が用意して下さったドレスと派遣して下さった王宮侍女の皆さんおかげで、私でも馬子にも衣装な程度にはなったかと。でも、若干煌びやか過ぎるとは思うのですが……」
お礼を言うはずがうっかり愚痴も出てしまった。贈り物にケチをつけるのは良い行動とは言い難いのでモニョモニョと語尾を濁した私に、エルフリーデ先輩は悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「きっと気持ちがそうさせてしまったのよ。殿下も案外可愛らしいわ」
クスクスと笑い続ける先輩の台詞がイマイチ理解できなくて首を傾げると、笑みは深くなる。それをポカンと眺めていると、やっと気を取り直したらしいマグリット嬢の声が飛んできた。
私より少しだけ背の高い彼女がブルーグレーのドレスを翻して私とマグリット嬢の間に滑り込んだ。
「マグリット・ライアス様。落ち着かれた方がよろしいのでは?」
冷静な声は凛とした強さと突き放すような冷たさもあり、マグリット嬢の動きを止めるには十分な威力を持っていた。
守られているはずの私でさえびくりと肩を震わせてしまったその声音は普段のエルフリーデ先輩が話す声とはまるで違っていて、クライブ殿下が『氷の殿下』として放つ声によく似たオーラを醸し出していた。きっと統べるものが持つ威厳が身から溢れ出たのだろう。
こんな状況なのに、流石は王女だと感心してしまった。
マグリット嬢が先輩の圧で動けなくなったのを確認すると、エルフリーデ先輩はくるりと振り返って私にいつものふわりとした笑顔で笑いかけた。
「とっても綺麗よ、リディア。それにすごく似合ってる。クライブ殿下が一人で選ぶって聞いて心配だったけど、意外と趣味がいいのね。でも、その色は予想外だったかな」
にこにこと語るエルフリーデ先輩を見ながら、私の胸には別の思いが膨らんでいた。
いやこれ、流石にモブっぽい展開だわ。
だって、これがヒロインだったなら、馬車を降りた時点で攻略対象が出迎えてくれるはずだ。そうじゃないなら、ピンチを救ってくれるのが攻略対象ってパターンもある。
なのに、私の場合は両方女性。攻略対象どころか異性でもないなんて、心ときめく展開になるはずがない。やっぱりモブにまでロマンスな展開は用意させていないらしい。いや、知ってたけどさ。
とはいえ、せっかく助けてもらった上に褒めてもらっているので、自分の思考に浸り続ける訳にはいかない。綺麗と褒めてくれた人が絶世の美人だった時はどう対応すればいいのだろうと悩みながら、口を開く。
「ありがとうございます。クライブ殿下が用意して下さったドレスと派遣して下さった王宮侍女の皆さんおかげで、私でも馬子にも衣装な程度にはなったかと。でも、若干煌びやか過ぎるとは思うのですが……」
お礼を言うはずがうっかり愚痴も出てしまった。贈り物にケチをつけるのは良い行動とは言い難いのでモニョモニョと語尾を濁した私に、エルフリーデ先輩は悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「きっと気持ちがそうさせてしまったのよ。殿下も案外可愛らしいわ」
クスクスと笑い続ける先輩の台詞がイマイチ理解できなくて首を傾げると、笑みは深くなる。それをポカンと眺めていると、やっと気を取り直したらしいマグリット嬢の声が飛んできた。
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