上 下
22 / 49

22.平凡令嬢、民を味方につける。

しおりを挟む
 国境付近には、多くの人々が集まっていました。

 ここに居る者は皆、これからヴェラへ攻める、それを知って駆け付けた義勇軍です。
 子供から大人まで、性別も関係なく、老若男女延べ10万は超えるでしょう。

 ですが、その殆どが戦うすべも知らない一般人です。まともに武器を持ったことすらない人ばかりでしょう。
 そんな市民が戦えるのでしょうか?

 いいえ。戦わないといけないのです。
 彼らは皆奪われた人達です。着る物を、食べる物を、住む所を、そして大切な家族を。

 ここに居るのは、私を含め、皆奪われたものを奪い返すために立ち上がった者たちです。
 私とリカルド様に気づくと、歓声が上がります。

「お前たち、時は来た!」

 リカルド様は人々の前に立ち、剣を天高く掲げました。
 その隣に、私はそっと寄り添います。

「私は今までずっと苦しめ続けられてきた! 名声を! 名誉を! 権力を! 全て兄が私から奪い去った!」

 リカルド様が声を上げます。

「そして、私から奪っただけではない。今度は守るべき民を苦しめ、貴方達からも奪い始めた! だが、それも今日までだ!」

 演説を前に、更に歓声が上がっていきます。

「諸君! 奪われたらどうすれば良い!?」

「奪い返せ!!!」

「奪おうとしてくる者には、どうすれば良い!?」

「死の制裁を!!!」

「そうだ! 我ら奪われた物は違えども、奪われる悲しみを知る同胞だ! さぁ同胞よ! 今こそ立ち上がれ!」

「オォォォォォォォッ!!!!!」

 ひと際大きくなる歓声。そこに悲鳴が混じりました。
 突如大きな影が、空から降りてきたのです。

「我が名はバハムート。かつては皇帝竜と魔王に肩を並べし者。そして、今はリカルド、パオラの盟友である! 我も共に戦おう!」

「さぁ。平和の為に! 進みましょう!」

 私が声を上げると、それに合わせてバハムートが雄たけびを上げます。
 もはや、興奮で何を言ってるのかすら分からないほどの歓声を背に、私は歩き出しました。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない

あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。 久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。 いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。 ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。 わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言? もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方! そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして──── ※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。 ※設定は相変わらずゆるんゆるん。 ※シャティエル王国シリーズ4作目! ※過去の拙作 『相互理解は難しい(略)』の29年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、 『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。 上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。 ※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)> ※ちょくちょく修正します。誤字撲滅! ※全9話

嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす

柴ちゃん
ファンタジー
生活が変わるとは、いつも突然のことである… 早くに実の母親を亡くした双子の姉妹は、父親と継母と共に暮らしていた。 だが双子の姉のリリーフィアは継母に嫌われており、仲の良かったシャルロッテもいつしかリリーフィアのことを嫌いになっていた。 リリーフィアもシャルロッテと同じく可愛らしい容姿をしていたが、継母に時折見せる瞳の色が気色悪いと言われてからは窮屈で理不尽な暮らしを強いられていた。 しかしリリーフィアにはある秘密があった。 妖精に好かれ、愛される存在である妖精の愛し子だということだった。 救いの手を差し伸べてくれた妖精達に誘われいざ妖精の国に踏み込むと、そこは誰もが優しい世界。 これは、そこでリリーフィアが幸せに暮らしていく物語。 お気に入りやコメント、エールをしてもらえると作者がとても喜び、更新が増えることがあります。 番外編なども随時書いていきます。 こんな話を読みたいなどのリクエストも募集します。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「たかが一男爵家の分際で、一々口を挟むなよ?」  そんな言葉を皮切りに、王太子殿下から色々と言われました。  曰く、「我が家は王族の温情で、辛うじて貴族をやれている」のだとか。  当然の事を言っただけだと思いますが、どうやら『でしゃばるな』という事らしいです。  そうですか。  ならばそのような温情、賜らなくとも結構ですよ?  私達、『領』から『国』になりますね?  これは、そんな感じで始まった異世界領地改革……ならぬ、建国&急成長物語。 ※現在、3日に一回更新です。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

【完結】『サヨナラ』そう呟き、崖から身を投げようとする私の手を誰かに引かれました。

仰木 あん
ファンタジー
継母に苛められ、義理の妹には全てを取り上げられる。 実の父にも蔑まれ、生きる希望を失ったアメリアは、家を抜け出し、海へと向かう。 たどり着いた崖から身を投げようとするアメリアは、見知らぬ人物に手を引かれ、一命を取り留める。 そんなところから、彼女の運命は好転をし始める。 そんなお話。 フィクションです。 名前、団体、関係ありません。 設定はゆるいと思われます。 ハッピーなエンドに向かっております。 12、13、14、15話は【胸糞展開】になっておりますのでご注意下さい。 登場人物 アメリア=フュルスト;主人公…二十一歳 キース=エネロワ;公爵…二十四歳 マリア=エネロワ;キースの娘…五歳 オリビエ=フュルスト;アメリアの実父 ソフィア;アメリアの義理の妹二十歳 エリザベス;アメリアの継母 ステルベン=ギネリン;王国の王

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

処理中です...