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第4章

第11話「行くぞ」

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 この街に着いてからもう2年経つ。

「おめでとうございます。ベル様、モルガン様、クー・フリン様は今日からBランクです」

 冒険者ギルドで依頼完了を報告した際に、カウンターに居る受付嬢にランクアップした事を伝えられた。
 その言葉にベル達はそれぞれ抱き合いながら、喜びを分かち合っている。

 そんな彼女たちの様子を見て、周りの冒険者が一人また一人と賛辞の拍手を送っている。
 2年でBランクまで駆け上がるのは、異例と言って良いほどの早さだ。
 俺がドーガ達と組んでいた頃はBになるまで3年かかった。それでも十分早いというのに、彼女たちはそれよりも1年も早くBに上がって来たのだ。

「アンリさん。これでボク達もついて行けますね!」

「あぁ、そうだな」

 1年前、Aランクになった俺に与えられた選択肢は2つだった。
 Sランクに昇級するために単身で王都へ行き、昇級試験を受けるか。
 パーティでSランクに昇級するために、ベル達が一緒に試験を受けられるBランクまで上がるのを待つか。

 正直、心が揺れた。
 早く俺を助けてくれた冒険者に会いたいという気持ちもあった。
 Sランク冒険者しか行けないような危険な場所に、彼女たちを連れて行く不安もあった。

 一人で行こう。そう思った俺の裾を掴んだのはモルガンだった。
 
「……置いて行かないで」

 モルガンのその一言を皮切りに、ベル達がわんわん泣きながら俺を引き留め始めた。
 そんな彼女たちを振りほどく事が出来るわけもなく、一緒にSランクを目指し、ついにここまで来た。

 ベルは相変わらずモンスターに追い掛け回されて泣いて逃げ回るし。
 クーは殴って爆発させる事しか考えてない自称武闘家だし。
 モルガンは「まずは気合で治せ」と言い張る回復術師ヒーラー

 Bランクまで上がったというのに、根本的な所は何も変わっていない。
 変わっていないが、今では背中を任せることが出来る、頼りになる仲間だ。

「アンリ君。ここを発つつもりかね?」

「はい。どうしてもSランクになりたいので」

「そうか。名残惜しいが、無理に引き留めるつもりはない」

 この街のギルドマスターは、前の街のギルドマスターから、手紙で俺の事情については知らされている。
 だから俺を無理に引き留めようとはしない。
 
「これを持って行きなさい。王都のギルドへの推薦状だ。これを出せばすぐに試験を受けさせてもらえるはずだ」

「何から何まで、すみません」

「それと、アイツが言ってたアレをしても良いぞ?」

 アイツ? アレ?

「ほら、パンツー丸見えをしたいんだろ?」

「したいのは『鑑定』スキルです」

 アイツとは、多分前の街に居たギルドマスターの事だろう。
 話しぶりからして、ギルドマスター同士ってだけの仲では無さそうだが、そこはどうでも良いか。

 とりあえず許可が貰えたという事で、『鑑定』をさせて貰った。
 これで新たに使えるスキルが増えた。

 鑑定を終えた俺に、ベルが話しかけてきた。

「このまま王都まで行くの?」

「そうだな。今日中に準備を済ませて、明日の朝に王都へ向かう馬車に乗って行くつもりだ」 

「じゃあ早く買い物を済ませないと!」

「クーも準備する!」

 走り出そうとする2人をモルガンが抑える。

「王都でも買えるのですから、準備は最低限で良いわよ」

「あぁ、基本的に今ある物で十分だからな」

 準備は消耗品を少し買い足す程度で十分だろう。
 それよりも、最後にこの街を軽く観光して行きたい気分だ。

「行くぞ」

 気になっていた出店を買い食いしながら、必要な物を買うついでに不必要な物でも買って行こうかな。
 モルガンには、はたかれるだろうけど、ベルやクーなら素直に喜んでくれそうだ。
 
 冒険者ギルドを出る俺達に「頑張れよ」と言って冒険者達が送り出してくれた。
 返事代わりに軽く手を上げて、俺達は歩いて行く。振り返る事なく、真っすぐと。




 END




「専門職に劣るから居ても邪魔だ」とパーティから追放された万能勇者、誰もパーティを組んでくれないので、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。ちなみに俺を追放した連中は勝手に自滅してるもよう。を読んで頂き、誠にありがとうございます。

話自体はまだ続くのですが、追放パーティと決着がつき一区切りついたので一旦完結とさせておきます。
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。
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