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第4章

第9話「こいつらに、天罰を与えるためさ!」

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 森の中にポツンと佇む一軒家。
 地図に書かれている場所はここだろう。

 俺は『警戒』スキルで建物内に誰か居ないか調べる。中からは3人分の反応が出て来た。
 ドーガ達の可能性が、高い。

 こっそりと建物に近づき、壁に耳を当て『聞き耳』スキルを使ってみる。
 中からは聞いたことのある声が聞こえた。ドーガ、カテジナ、シャルロットの声だ。
 どのルートで逃げるか相談しているようだ。

 ここで逃がせば、捕まえるのに時間がかかるだろう。
 俺は小声でサイドを呼び寄せる。

「俺は入り口から突入する。もしかしたら窓から逃げる可能性があるから、アンタは窓の外で待機してもらってて良いか?」

 小屋には窓が一つある。簡単にぶち破れそうな窓だ。

「おうよ」

 サイドが窓際に移動したのを見て、俺は扉の前に立った。
 ベル達に頷きかけ、返事代わりに頷き返される。

「ドーガ。ここに居たのか」

 俺が扉を開けると、ドーガ達の視線が集まる。

「おぉ、アンリじゃねぇか。こんな所でどうしたんだ?」

 ドーガは顔は笑っているが、頬がひくつき明らかに動揺している。
 さも偶然友人にあったような態度、隠し事をしていますと言わんばかりの反応だ。
 後ろの二人カテジナとシャルロットは、そんなバレバレの反応に呆れ気味だ。

「何故ドランを殺した」

「殺した? 違う違う。誤解だって」

 俺の問いに対し、ドーガはヘラヘラと笑いながら否定をした。
 両手を広げ、やれやれといった感じだ。

「アンリ、ちょっと聞いてくれよ、実はッ!」

 ドーガは馴れ馴れしい態度でゆっくりと近づいて来て、斬りかかって来た。
 不意打ちのつもりなのだろうが、明らかに挙動不審な態度だ。余裕で避けられる。

「ハッ! それで不意打ちのつもりかよ。頭を使うのは相変わらず苦手なようだな」

「んだと!?」

 顔を真っ赤にして、俺を睨みつけてくる。
 煽りがいがある奴だ。これでドーガの頭から逃げるという発想は無くなるだろう。

 一旦バックステップで距離を取る。
 
「俺はドーガをやる。お前達は小屋の中から出てくる2人の相手をしてくれ」

 俺の言葉に、3人が「分かった」と返事をする。 
 すぐさま小屋から出て来たドーガが俺に向かって走り出した。後からカテジナとシャルロットも出てくるのが見えた。

「テメェもぶち殺してやる!」

「出来るもんならやってみろ」

 完全に頭に血が回っているおかげで攻撃は単調だ。
 振り下ろす腕に、剣を突き刺した。

「ぐあっ!」

 俺の腕力ではドーガの腕を切断は難しい。なので斬るよりも突いた方が効果的だ。
 大きいダメージは与えられないが、動きを鈍らせることは出来る。
 チクチクと両腕にダメージを与え、腕が上がらなくすれば、勝機が見える。

「シャルロット! 中級回復魔法ハイヒールをしてくれ!」

「分かったわ」

 ドーガの背中越しから、カテジナが杖を構えるのが見えた。

「おい。これはどういう事だ!!!」

 ドーガの体を、白い糸が何重にもなって絡まっている。
 対象に拘束する魔法使い系のスキル『捕縛』だ。
 ドーガは絡まった糸を無理やり外そうとして、バランスを崩しその場で転び動けなった。  

「カテジナ何をやっているんだ! シャルロットも見てないで何とかしろ!」

 ギャーギャーと喚きたてるドーガを、カテジナとシャルロットは冷めた目で見下していた。

「何をって決まってるでしょ。貴方を突き出すためよ」

「私達、関係ないので。でも関係ないと言っても信じて貰えそうにないので、貴方を突き出す事にしました」

 二人の発言に、ドーガはぽかんとした顔をした。

「ほら、アンリ手伝ってよ。まずはこいつを気絶させないと、街まで連れていけないでしょ」
  
「貴女達もですよ」

 はぁ、そうだな。こいつらはそういう奴だ。
 自分の不利を悟ったので、さっさとドーガを売り渡す。大方そんな考えだろう。

「一つ聞くが、ドランを殺すのにお前らは加担してないのか?」

「そんな事するわけないでしょ」

「ドランを殺す事に、私とカテジナは何もメリットがありませんよ?」

「そうよ。ドーガが殺したから追われてたって知ってたら、初めから縁切ってたわよ」

 薬を盛った上で俺を襲っといて、よくもまぁぬけぬけと。

「お、お前ら。恩をあだで返しやがって!」

「恩なんてないわよ」

「バーカ」

 そこからは3人で罵詈雑言の嵐だった。
 俺、こんな奴らとパーティを組んでいたんだよなぁ。

「あ、あの。どうします?」

 おっと、思わず思考を飛ばしてしまっていた。

「そうだな。とりあえずドーガを街まで連れて行くか」

「悪いね。それは出来ない相談だ」

 唐突に目の前に黒い影が現れたと思ったら、スッと軌跡が見えた。
 慌てて避けたために、バランスを崩し転ぶ寸前の所でベルとモルガンに支えられる。

「お前は」

 そこに居たのは、ミーシャだった。

「何故ここに?」

「何故? 決まっているだろ?」

 彼女がパチンと指を鳴らすと、木の影からゴブリンウォーリアが姿を現した。
 その数4匹。

「グギャ!」

 彼女の登場に、反応が遅れたカテジナとシャルロット。
 彼女たちにゴブリンウォーリアが襲い掛かる。
 
 魔法使いと僧侶。そんな2人がゴブリンウォーリアに敵うわけもなく、一撃で意識を刈り取られる。
 ゴブリンウォーリアがそれぞれを小脇に抱えると、今度はもう1体のゴブリンウォーリアがドーガを抱えた。

「こいつらに、天罰を与えるためさ!」

 ミーシャが何やら合図をすると、ドーガ達を抱えたゴブリンウォーリアは森の奥へ走っていった。
 俺の『警戒』スキルには反応していない。ミーシャの『隠密』スキルを発動させているからだろう。
 
「あいつらは私が貰っていく。邪魔をするというなら、それなりの覚悟を持って追いかけて来な」

 そう言って踵を返し、森の奥へ歩いていくミーシャ。
 そんなミーシャを守るように、ゴブリンウォーリアが後に続く。

「アンリ。どうしますか?」

「深追いはやめておこう」

 ゴブリンウォーリアが4体。ここなら俺一人でも倒せない数ではないが、ミーシャの発言からすると、他にも伏兵が居る可能性がある。
 ここで無理に追いかけるのは危険だ。下手をすれば俺だけじゃなく、ベル達まで危険な目に合わせる事になる。

「ところで、サイドのおっさんは?」

「あっ!」 

 サイドは先ほどの隠れた位置でうずくまって倒れていた。

「すまねぇ。後ろから変な女とゴブリンに襲われてこのザマだ」

「気にするな。こっちもそいつらにドーガをさらわれてしまった所だ」

 モルガンに頼んでサイドを『完全回復フルヒール』で治してもらった。
 ここでコイツに死なれては、俺達がドーガを逃がしたと思われかねないからな。

 モルガンのユニークスキルに驚くサイドに「黙っててくれよ」と釘を刺し、俺達は街へと帰って行った。
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