上 下
43 / 50
第4章

第8話「ここにドーガ達が隠れている」

しおりを挟む
 冒険者ギルドは、少しピリついた空気になっていた。
 新顔である俺達を、冒険者達はじろじろと無遠慮に見て来る。
 
 その中で、見かけた顔があった。
 こちらに気づいたようだが、チラチラと見て、声をかけるべきか悩んでいる様子だ。

「また会ったな。確かドランのパーティだったか」

 なので、こちらから声をかける事にした。
 ずっとチラチラされては、他の冒険者から変な誤解を受けかねないしな。

「はい。お久しぶりです」

 やや戸惑いながら、魔法使い風の男が答えた。

「ドランの事は、サイドから聞いた」

「そう、ですか」

「残念だったな」

「残念……そんなもので、納得できるわけないだろ!」

 男の語気が荒くなる。
 本気で怒っているのだろう。眉をひそめ睨んできた。

「ひぃ!」

 後ろからベルの小さな悲鳴が聞こえた。
 その声で、魔法使い風の男は冷静さを取り戻したのだろう。

「すまない。軽率だった」

「いえ、こちらこそすみません」

 そう言って、お互いに頭を下げた。

「僕らは、ドランを含めて全員幼馴染だったんですよ。冒険者をやって覚悟をしているつもりだったのですが……ダメですね」

 男はそう言うと、はははと力なく笑った。
 他のメンバーも、困ったように一緒に笑っている。

「もし困った事があったら言ってくれ。力になる」

「ありがとうございます。そちらも何か困ったことがあれば、気軽に声をかけてくださいね」

「あぁ、その時は是非頼らせてもらう。今日はギルドに顔を出しに来ただけだから、またな」   

 ベル達も軽く挨拶をすまし、ギルドを後にした。
 彼らの様子を、とても見ていられなかったからだ。

 本当は何か依頼が無いか見る予定だったのだが、ベル達は何も言わない。
 彼女達も同じ気持ちなのだろうな。


 ★ ★ ★


 無言のまま宿に戻ってきた。
 備え付けてあるテーブルに座ると同時に、軽いため息が出た。
 ……これは。
  
「悪い。ちょっと出かけてくる」

「どこに行くのですか?」

 立ち上がった俺に、モルガンが問いかけて来た。

「あー……エッチな店だ」

「聞いた私がバカだったわ。さっさと行ってきなさい」

 頭を軽くはたかれた。
 顔を真っ赤にしたベルが何か言いたげな顔をしているが、あえてスルーだ。

「じゃあちょっと行って来る。遅くなるから先に寝ててくれ」

 俺は部屋を出て、扉を閉めた。


 ★ ★ ★


「ここか」

 到着したのは、街を出て街道に沿って数時間の所にある森だ。
 わざわざこんな所まで来たのは、別にエッチな店が目的ではない。

 一枚の紙を取り出した。宿のテーブルに置かれていた紙だ。
 紙には大雑把な手書きの地図に、一言だけ添えられていた。

『ここにドーガ達が隠れている』

 何かの罠かと思ったが、捨て置く気にはなれなかった。
 危険を考えると俺一人で行くべきだ。ベル達は置いていこう。そう思いエッチな店に行くと適当な嘘をついて置いてきた。

「隠れてるのはバレバレだぞ」

 というのに、全員付いて来た。
 途中から気づいてはいたが、もしかしたら諦めるかもと思い声をかけなかった。
 結局諦める事無く、ここまで付いてきてしまった。

「へっへっへ、バレちまったか」

 おまけにサイドまでいる始末だ。

「俺の後を付けて、何の用だ?」

「アンリのエッチが見てみたいので、付いてきちゃいました」

「クーも見てみたいぞ!」

 モルガンが張り付けた笑顔でそんな事を言う。はぁ、これは相当怒っているな。
 クーはよく分からず適当に答えているのだろう。モルガンに頭をはたかれて「なんで?」って顔をしている。

 ったく、仕方がない。
 俺はテーブルで見つけた紙を見せた。

「もし本当にドーガが居るなら、捕まえてドランのパーティに謝らせたい」

「お前は、本当にお人好しだな」

「一応、ドーガとは元パーティだからな」

 サイドが真剣な表情をした。

「俺も連れてけ」

「嫌だと言ってもどうせ付いてくるつもりだろ? それなら一緒に行った方が良い。精々頼りにさせてもらう」

「おう」

 サイドがいつものニヤニヤ顔に戻った。
 俺よりも、アンタの方がよっぽどお人好しだよ。

「ほら、お前達も付いてくるんだろ? 行くぞ」

「あっ……うん」

 俺達は森へ足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。

つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。 そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。 勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。 始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。 だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。 これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。 ※他サイトでも公開

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

処理中です...