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第4章

ドーガ視点「コイツに”教育”してやるだけだ」

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 -ドーガパーティ-
 -ドーガ視点-

「どうだ、悪い話じゃないだろ? 俺のパーティに入らないか?」

「悪いね。他をあたってもらえる?」

 盾戦士風の女は、去り際に冷ややかな目で俺を見やがった。
 チクショウ。これで10人目だ。
 役立たずアンリを追放して、代わりに入れた盗賊は使い物にならなかった。
 使い物にならない盗賊はゴブリンの巣で切ったから、新しくパーティメンバーを探しているのに、誰も首を縦に振ろうとしてくれない。

「クソッ! なんでだ!」

 苛立ちから、ギルドの壁を殴りつけると、笑いが起きた。 

「あぁ? 何がおかしい! オイ言ってみろ!」

「ちょ、ちょっとやめなよ」

「また問題起こしたら冒険者資格取り消されるんだから、やめてよね」

「うるせぇ! おい、今笑ったのはてめぇか!」

 テーブルに座って、俺の事をニヤニヤ見ている冒険者を指さした。
 確か最近Cランクに上がったばかりの、ドランといったか。たかがCランクの分際で生意気だ。
 俺に指を刺されてるのに、ヘラヘラ笑っている。

「笑わせておいて笑うなってのは、無理があるだろ」

 テーブルに近づき、襟首を持ち上げる。

「いい年してCランク程度の雑魚が、調子に乗ってんじゃねぇぞ」

「もう、ほんとやめてってば!」

「うるせぇ!」

 カテジナが割って入って来たので、腕を振り払い突き飛ばした。

「きゃっ」

「ドーガ!」

 まだ何か言おうとするカテジナとシャルロットを、睨みつけ黙らせる。

「喧嘩じゃねぇよ。コイツに”教育”してやるだけだ」

「Dランク冒険者に教育される覚えはないんだが?」  

「あぁん!?」

 確かにDランクに降格はされたが、それは全部ミーシャのせいだ。
 少なくとも、その事でこいつに馬鹿にされる覚えはねぇ。
 俺は役立たずを引っ張って、Bランクまで上がった男だ。

 この街に来たばかりの頃は、周りに一目を置かれていたのに。
 クソ、ミーシャなんかと組んだばかりに、この俺がこんな扱いを受けるのは辛抱ならねぇ。

「ハッ! 所詮はCランクの雑魚と金魚のフンだ。さっきから口ばかり、俺に恐れをなしたか?」

「恐れをなして? ゴブリンに恐れをなして味方を巣に置いて逃げ帰ったドーガ、お前がそれを言うのか?」

 ドランの言葉で、ギルド内に爆笑が起きた。
 もう決めた。コイツは殺す。

「お、おい」

 俺が剣を抜くと、周りがシンとなった。
 やっと自分たちがやらかした、事の重大さを理解したようだ。

 次問題を起こせば冒険者資格を剥奪になるかもしれない。だから俺が手を出してくる事は無い。
 そんな風に考えていたのだろう。
 だが、今回は明らかに俺は悪くない。手を出しても不問になる。
 なので、ここで今一度、俺の腕前を見せておく必要がある。二度とバカに出来ないように。

「剣を抜いたという事は、冗談で済まさない。分かっているんだろうな?」

「当たり前だ。どうしてもって言うなら土下座をして俺の靴を舐めるなら、考え直してやっても良いぜ」

 もちろん、そんな事をした所で許すつもりはない。
 靴を舐めた所で、顔面を蹴飛ばしてやる。

「良いだろう。相手をしてやるよ」

 剣を抜いたドランから、笑みが消えた。
 たかがCランク上がりたて程度の腕で、俺に歯向かうとはな。笑わせてくれる。

 その鼻っ柱をへし折ってやるよ。
 俺は構えると同時に踏み込み、ドランに斬りかかった。

「えっ?」

 勝負は一瞬だった。
 何故か俺の手から剣が離れていたのだ。

 俺の手を離れた剣が、空中で回転しながら俺目掛けて飛んでくるのが見えた。

「う、うぉあ!?」

 思わず後ずさりをした際に、バランスを崩し尻もちをついた。
 ガニ股になった俺の足と足の間に、剣がすとんと落ちて来た。

 あぶねぇ……あと数センチずれていれば俺に当たる所だった。
 サーっと血の気が抜ける音がした気がした。

「ヒッ!?」

「まだやるか」

 ドランの剣が、俺の頬をかすめる。かすめた部分に軽い痛みが走った。
 手で触ると、指には赤い液体がついていた。少し遅れて頬からツーっと血が流れる。
  
 俺が負けた?
 股間からぐっしょりした感覚が広がっていく事に気づき、放心状態から覚めた。

「ドーガの奴、負けておもらししやがったぞ!」

 そう叫んだのは誰だっただろうか?
 再びギルド内で爆笑がわいた。
 
「おま、クソッ!」

 何かを言おうとするが、上手く言葉が思い浮かばない。
 その間にも股間のシミが広がっていくばかりだ。

「カテジナ! シャルロット! こんな所もういい、さっさと行くぞ!」

 俺は剣を引き抜くと、足早にギルドを出た。

「ドーガさん達、また何か問題を起こしたのですか?」

「いや、ちょっと俺が”教育”しただけだ」

 ギルドを出る際に、ドランと職員がそんなふざけた事を言ってるのが聞こえた。
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