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第4章

第1話「それなら、何か”お土産”を持って行かないとな」

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 街を出発して、次の街へ向かっている途中だった。

「寄り道したいのですが、ダメですか?」

 唐突にそう切り出したのはベルだった。
 旅の途中、なんだかもじもじしているなとは思ったが。

 時刻は昼を過ぎたあたり、目的地まではまだ1日以上ある。
 宿場町を経由すれば2日。野宿をして急げば1日といった所だ。

 別に急ぎの旅ではない。食料も十分にある。
 水だって俺やクーが出せる。何もかもが潤沢にある状況だ。
 
「俺は構わないが」

 チラリとクー達を見る。

「クーも付いてく。ベルちゃんどこに行きたいんだ?」

「私も構わないわ」

 2人も特に反対意見が無いようだ。
 とはいえ、目的地くらいは聞いておきたい。
 どこに行くか分からないまま歩き続けるというのは、精神的にしんどくなるからな。

「うん。目的地なんだけど」

 そう言ってベルは簡易地図を取り出した。おおよその地形や距離しか書かれていない簡易地図。
 ちゃんとした地図は他の国の手に渡ると戦争などで攻め入る時に使われる可能性があるので、一般的に流通しているのは簡易地図だ。
 もちろんちゃんとした地図は存在するが、軍の上層部や一部の貴族以外は所持する事も作ることも禁じられている。

 俺達は今北上している。このまままっすぐ行けば目的の街につく。
 ベルは今俺達が居る場所を指さし、少し北西の方向を指さした。

「ここに何があるんだ?」

「ここには集落があるんです。ボクの家族が住む集落が……」

 ふむ。ベルの家族か。
 何と声をかけてやれば良いか悩んだ。

 元々彼女は食い扶持を減らすため、娼婦か冒険者になるように家を追い出されたようなものだ。
 そんな親に会いたいのだろうか?
 ……会いたいんだろうな。

 彼女と話していると、時折家族の話が出るときがある。
 父親に狩りの仕方を教わった事や、エモノの解体の仕方を教わった事など。
 多分、彼女が家を出る直前まで愛情を注いでいたのだろう。

 モルガンとクーも、彼女の家の事情を知っているから何も言えない。
 ベルは困ったように俺をチラチラと俺を見ている。

「……それなら、何か”お土産”を持って行かないとな」

「うん! 何か狩っていこう!」

 俺の言葉に、ベルがパッと笑顔になった。
 垂れてた耳がピョコピョコ動き、しっぽがこれでもかとファサファサ動いている。

 この辺で何か狩れる物は居たっけな?
 地図を見る。ふむ、近くに食用に適したモンスターが居るな。

 ボーアクス。体長2m程の巨大な猪で、鋭い角を斧のように振り回すからその名が付いている。
 気性がとても荒く、視界に入れば即座に攻撃を仕掛けて来るほどだ。

 だが、所詮は獣。突進するか暴れるしか能が無い。
 武器を持たない一般人ならまだしも、Dランクレベルの冒険者なら狩れるだろう。
 1匹狩れれば十分だろう。

「よし、この近くに良い獲物が居る。そいつを狩りに行こう」

「うん。ボク頑張る!」

 その後、張り切ったベルが『プロヴォーク』を使い、ボーアクスの群れに追いかけまわされてベソをかくはめになったのは、言うまでもない。


 ★ ★ ★


 日も沈み始めたころ、数件の家らしきものが見え始めた。
 ベルの反応を見るに、多分ここがベルの育った集落なのだろう。

 近づくと数件の家を木の柵で囲っているのが見えた。
 柵の内側には家以外にも、畑や、畜産場などがいくつか見えた。

 まだ仕事をしている最中なのだろう、集落の人の姿もちらほら見える。
 集落の人がこちらを見ると、仕事道具のクワを落として、どこかへ走っていった。

 俺達が入り口に着く頃、息を切らしてこちらに走ってくる獣人の姿が見えた。
 男女2人の獣人だ。女性の方はなんとなく、ベルに似ている。
 となると、あの2人がベルの両親か?

「お父さん! お母さん!」

「ベル!」

 聞こうとする前に、ベルは駆け出していた。
 親子の再会に水を差すつもりはない。ベル達が満足するまで待つとするかな。
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