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第3章

第2話「Bランクになってから言ってもらえるかしら?」

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「この辺りか」

 手渡された地図を片手に森を歩いていく。
 地図に記された場所は、森に入ってすぐにある所だ。

「あ、人だかりが出来てます」

「多分ギルドから派遣された冒険者だろうな」

 歩いて30分もしない内に、目的の場所についた。
 洞窟を囲むように、複数人のパーティが居るのが見えた。

 その中に、見覚えのある顔があった。
 ドーガ、カテジナ、シャルロットだ。
 他のパーティと何やら話し込んでいる様子で、まだ俺には気づいて居ない。

「よう。あんたらがギルドから派遣されてきた冒険者か?」

 ドーガと話していた男が、俺に気づき片手を上げて気さくに話しかけてきた。  
 
「あぁ、そうだ。状況を教えてくれ」

 俺に気づいたドーガが、明らかに動揺をしている。
 カテジナやシャルロットも居心地が悪そうだ。

 ドーガ達の態度が明らかに変わったことに、男が眉をひそめたが、そこは仕事。
 男は出来るだけ態度に出さないように、話を続けた。

「あぁ、どうやら中にはゴブリンの上位種がうじゃうじゃいるらしい。罠とかもあるが、地中からゴブリンが仕掛けてきたりもしたそうだ」

「上位種というと、ゴブリンウォーリアか?」

「いや、ゴブリンロードやジェネラルも居たそうだ」

「なるほど」

 ウォーリアですらめんどくさいというのに、ロードやジェネラルまでも居るのか。
 かなり厄介だな。

「中に居るのはゴブリンだけか?」

「いや、ブラウンウルフに乗ったゴブリンライダーも出るそうだ」

「オークは?」

「いや、まだ確認されていない。ただ、最近この付近でオークによる被害が報告されてはいる」

「なるほど」

 元々オークがゴブリンの巣を乗っ取っていたが、ゴブリンの上位種誕生により追い出されたのだろうな。
 この前倒した3匹は、もしかしたらこの巣に居た個体なのかもしれない。

 ならば、オークの上位種が出て来る危険性は少ないと見て良いだろう。
 もちろん警戒を怠るつもりはないが。

「他に情報は何かあるか?」

「それなら、このパーティが」

「……ふむ」

 元々音信不通になっていたパーティの一つがドーガ達だ。だから、ここでこいつらから中の情報を聞き出せれば、危険度は下がるだろう。
 問題はこいつらが素直に教えてくれると思うか?
 答えはNOだ。

 カテジナとシャルロットはふてくされたようにそっぽを向き、ドーガは挑発するようにニヤニヤと俺を見ている。
 多分聞いてもデタラメな答えしか返ってこないだろう。聞くだけ無駄だ。

「大体わかった。大丈夫だ」

「そうか」

 男は一連のやり取りで、俺とドーガ達の間に、何か確執めいたものがある事を理解したのだろう。
 それ以上何も言ってこない。

「お前たちはもう帰って良いぞ」

「チッ、言われなくてもそうさせてもらうよ。行くぞ」

 ペッとドーガが唾を吐いた。

「じゃあ後は任せたぞ。役立たずの勇者様」

「プッ、クスクス」

 見え透いた挑発だった。
 何か言って来る事は予想がついて居たし、こんなもんだろう。 

「そういうのは、Bランクになってから言ってもらえるかしら? ”Cランク”冒険者さん達」

 そう言ったのは、モルガンだった。

「あぁん?」

 モルガンが煽り返すと、ドーガの顔が見る見るうちに赤くなっていった。
 そういうお前はEランクだろと突っ込みたいが、まずはこいつドーガを止めるのが先か。
 煽るくせに煽り耐性が無い奴だからな。

「ふざけた事言ってると、どうなるか分かってるんだろうな」

 言い合いなら仲裁するつもりだったが、ドーガが剣を抜く所作を見せた。
 流石にそれはやり過ぎだ。何かしてくる前にモルガンの前に立ちふさがる。
 俺の隣で、クーもやる気満々と言った様子で対峙している。

「お前達、帰って良いぞと言ったはずだぞ」

 男が割り込んできた。見ると彼のパーティだけでなく、他の集まったパーティもドーガ達を囲むように臨戦態勢に入っている。
 完全に自分たちの不利を理解したのか、ドーガが軽く舌打ちをすると、そのまま足早に去ろうとする。

「ところで、お前たちのパーティの盗賊はどうした?」

 確か、ミーシャって呼んでいたか。

「あぁ? あいつなら私が囮になりますと言って、俺達を逃がすための囮になったぜ。俺達の為に献身的な奴だったな」 

 嘘だろうな。身を挺して守ってくれたという仲間だったら、涙も見せず、ヘラヘラ笑って言うはずがない。
 だが、あいつらを糾弾しようにも証拠が無い。

 全く、こんな奴らを信頼して長年パーティを組んでいたんだ。
 自分の人を見る目の無さを実感させられる。
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