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第1章

ミーシャ視点「本当にこのパーティで大丈夫なのだろうか?」

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 -ドーガパーティ-
 -ミーシャ視点-

「ミーシャ。夜の見張り番よろしくな」

「えっ?」

 思わず聞き返した。

「聞こえなかったのか? 夜の見張り番よろしくって言ったんだ」

「アタシ一人でか?」

「当たり前だ。それが盗賊の仕事だろ?」

 そんなバカな!?
 助けを求めるように僧侶のシャルロットと魔法使いのカテジナを見たけど、2人にも「当たり前でしょ」と突っ返されてしまった。
 確かに哨戒しょうかいをするなら、『気配察知』スキルがある盗賊がやる方が良いのは分かる。

 だけど、普通はパーティ全員で交代番をしながらだ。
 比重が盗賊のアタシに向くなら分かるが、全部丸投げなんて聞いたことが無い。

「チッ……その程度、あの役立たずでも何も言わずにやっていたぞ」

 ブツブツと文句を言いながら、ドーガは横になっていびきをかいて寝始める。
 こんな所でいびきをかくなんて、警戒心の欠片もないのかと、苛立ちよりも困惑を覚えた。  

 仕方ない。まだパーティに加入したばかり。
 もしかしたら、パーティ内の順位みたいなのがあるのかもしれない。
 アタシがどれだけ優秀か思い知れば、少しは態度が変わるだろう。
 それまでの我慢だ。パチパチと音を立ててる炎に木を追加し、焚火の火を消さないように注意しながら見張りをした。


 ★ ★ ★


 体が重い、頭がふわふわして思考にモヤがかかった感じだ。
 夜の見張り番を終え、起きたドーガ達が朝食と身支度を済ませる間に軽く仮眠を取った。
 とはいえ1時間もまともに仮眠が取れたか怪しいくらいだ。疲れが取れるわけが無い。

 遅れそうになるたびに「遅い!」と怒鳴られ、謝りながら早足で付いて行く。
 腕を組んで私を待つ3人を見てため息が出る。そもそも、荷物が明らかにアタシだけ多い。
 例え寝不足じゃなかったとしても、この荷物の量は厳しい。
 せめてもう少しだけでも分担して欲しい。そう思った時だった。

「……モンスターが近づいて来てる!」

「何か分かるか?」

「これは、ゴブリンが3匹にブラウンウルフが2匹。多分ゴブリンライダーとゴブリンの上位種ね」

「やるじゃん。ちゃんとモンスターが判別できるなんて、どっかの役立たずとは比べ物にならないわね」

 褒められて、少し誇らしげになる。

「盗賊としての役割を果たしただけだよ」

 喜びたい所だけど、素直に浮かれて舐められるわけにはいかない。
 あくまで当たり前の事をしただけ。そういう態度が評価に繋がるはずだから。

「ゴブリンの上位種はゴブリンウォーリアか。コイツは俺が相手をするから、ミーシャはゴブリンライダー2匹を頼む」

「えっ、アタシ一人でゴブリンライダー2匹をか?」

 ゴブリンがブラウンウルフにまたがっただけのゴブリンライダー。
 2匹を頼むと言われたけど、実際は4匹だ。

 ゴブリンもブラウンウルフも雑魚ではあるけど、それでもアタシ一人で4匹の相手は厳しい。
 そもそもアタシは盗賊で、前衛職じゃない。

「だったら、お前がゴブリンウォーリアの相手をするのか!?」

 ドーガに怒鳴られた。
 その怒鳴ったドーガよりも、一回り以上大きいゴブリンウォーリア。ゴブリンの上位種だ。
 ゴブリンをそのまま大きくしただけのモンスターで、知能はゴブリンと変わらないものの、大きくなった分パワーが上がっている。
 非力なアタシでは、こんなのを相手にしたら一瞬で蹴散らされるのが目に見えてる。

「わ、分かったわよ」

「チッ」

 軽い舌打ちをして、ドーガが前に出た。
 
「ちょっと、補助バフをかけなくて良いの!?」

「回復するのに、そんな事してる暇あるわけないでしょ!」

 うそでしょ?

「もしかして、アタシも補助バフは無しかい?」

「当然でしょ!」

 そんなバカな。
 色々言いたいけど、寝不足の頭では上手い言葉が思いつかない。

「今まで補助バフなんてかけたことないわ」

「っていうか、ドーガがゴブリンライダーに絡まれてるじゃない! 何してるのよ!」

「クソッ!」

 見ると先行したドーガに、ゴブリンライダー達がまとわりついていた。
 すぐに駆け出し、ゴブリンライダーに斬りかかる。
  
 まずは一匹、短剣を脇腹に突き刺した。
 ドーガに注意が向いていたおかげで、闇討ちが成功した形になった。

「何やってたんだ!」

「ごめん」

「チッ!」

 舌打ちをして、ドーガがゴブリンウォーリアの元へ駆け出す。
 アタシはドーガの背を守るように、ゴブリン達に対峙した。

 脇腹を刺したブラウンウルフは、キャンキャン言ってのた打ち回っている。
 あれならもう動けないだろう。
 残るは3匹。まずは乗り物ブラウンウルフが無くなったゴブリンを倒し、その次にゴブリンライダーだ。

 両手にナイフを持ち、投擲する。
 どちらも外れたが、ゴブリンを分断させることに成功した。
 一応狙いはつけたが、当たればラッキー程度でしかないから十分な成果だ。

 一時的とはいえ、今の状況はゴブリンと1対1。
 ゴブリン1匹なら負けるわけもなく、素早く近づきナイフを喉元に突き付けた。

 最初にブラウンウルフを仕留められたのは大きい。
 残るゴブリンライダーも、ブラウンウルフに腕を噛まれはしたが、何とかさばききれた。

 どうやら、ドーガ達もゴブリンウォーリアを倒したようだ。
 ケガを負ったようで、今はシャルロットが治療魔法をかけている。

「おい、何をしていた」

「ごめん、ゴブリンライダーに張り付くのが遅れた」
 
「違う。なんでゴブリンライダーを倒したら、すぐに俺のサポートに来なかったんだ!」

「サポートって……」

 前衛職でもないアタシにゴブリンライダー2匹を押し付けた上に、サポートしろ?
 一体どれだけやらせようとしているんだ?

「ったく。その程度、役立たずのアイツでも出来たっていうのに」

 その後も、ドーガのアタシへの愚痴が続いた。
 ドーガの治療が終わった後に、噛まれた腕の治療を頼んだが、無視をされた。

 ……本当にこのパーティで大丈夫なのだろうか?
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