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189話 大穴突入1(2021.08.25改)

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 気になることがある。
 冒険者しか入ることが出来ないダンジョンに、リザスさんたちはどうやって出入ではいりしているんだろう?黒いゴブリン族のことをぼかしつつ、僕はナファローネを連れて町にいる冒険者たちに聞いて回った。

「ゴブリン?大穴には出ねーぞ」

 そんな声が多い中、ひとつ面白い話を聞くことが出来た。あくまで噂レベルの話ではあるんだけど、町を包む巨大トンネル以外にも、大穴ダンジョンに繋がる道があるという話が出回っていたのだ。
 他の入口か……リザスさんも、カスターニャから一番近い地下世界への入口が大穴ダンジョンにあると言っただけで、入口がひとつだけとは一言も言ってなかったような。

     ✿

 宿屋の店主のアドバイスに従い、僕らは狩りを終えた冒険者たちがダンジョンから町に戻る夜間に出発した。
 ダンジョンから出てきた冒険者たちの多くは、その足で酒場へと向かう。この町で最も数が多い店が酒場なのだ。酒好きの冒険者が多いって理由だけで、これだけ多くの酒場が出来るのだから驚きである。
 大穴ダンジョンの町に長く滞在する冒険者の多くは、大穴の奥を目指すのではなく、その日のうちに戻ることが出来る浅瀬で狩りをする。
 町に戻る冒険者たちが、ダンジョンの奥へ進もうとする僕らをチラ見する。ナファローネに抱えられたムボ、シザ、ミダの三人の小人が珍しいんだろう。その視線の多くは、好意的とは言い難い。

 急に建物が無くなったかと思うと、木の柵が立てられていた。ここから先が魔物が出現するエリアだ。大穴ダンジョンは、奥に進めば進むほど魔物は強くなっていき、湧く間隔も短くなっていく。
 逆に、町に近ければ近いほど魔物は弱く、湧く間隔も長くなるそうで、宿屋の店主は入口付近の魔物は日が昇るまで出て来ない、奥を目指すなら夜のうちに先を急いだ方がいい、と教えてくれた。
 大穴ダンジョンの床や壁には、光を放つ鉱物が所々に埋まっており松明いらずで進むことが出来る。ちなみに、この鉱物を掘り起こすのはタブーだ。

 周囲に人の気配がないのを確認してからペリツィア、ペリツェル、ペリツィカの三匹の鎧竜たちを呼んだ。三匹も普段と違う景色に嬉しそうだ。ツァガンデギア鎧竜は、頭の上から背中、尻尾の先までゴツゴツした骨の鎧に包まれた四足歩行の草食恐竜だ。彼らは元々大人しい性格で、戦闘をあまり好まない。
 早く駆け出したいと僕の体に顔を摺り寄せてくる三匹。ペリツィアたちの背中にはニュトンたちが急ごしらえで作った革製の鞍が乗っている。
 冒険者たちに遭遇することを考えると、リンゴの苗のメンバーである僕とナファローネ、ムボ、シザ、ミダは外にいた方がいいだろうし、誰を一緒に連れて行くべきか……。
 一目で力のある魔物だと分かるローズとブランデルホルストとアルジェントは、奥に行くまで出さない方がいいだろう。
 走りながら迫る魔物を寄せ付けないように戦うことを考えると、遠距離攻撃が得意なメンバーから選ぶべきだよね……結果。一番体の大きなお父さん恐竜ペリツィアの背中には、ロングボウを持ったナファローネと小人のムボとシザ、ムボの従魔であるクロスボウ持ちのキノコンコンキノコの魔物のナメコんが乗ることになった。

 二番目に体の大きな母さん恐竜ペリツェルの背中には、二弓術の使い手のスライムのグリーンさんと小人のミダと妖精のフローラル、ミダの従魔キノコンメイジのブナピんが乗ることになった。
 ブナピんの得意魔法は『スリープミスト眠りの霧』と『スモークスクリーン煙幕』と『マジックミサイル魔法の矢』の三つで、魔法職に進化したキノコンは、村でもこのブナピんだけだとミダは胸を張る。
 三匹の中で一番小さなお兄さん恐竜ペリツィカの背中には、僕と妖精のレモン、絶賛猛特訓中であるレモンの弟子でダンジョンの中では暗闇にしか見えない。夜人よびとのヨルイチとヨルニとヨルサンが乗った。
 レモンが組んだ特訓の成果だろう、夜人たちは既に魔法を習得したそうだ。まだ、一度に二発のマジックミサイル魔法の矢しか撃てないって言ってたけど、たった数日で魔法を覚えるって、どれだけ厳しい特訓をしたんだろう。レモンは夢中になると容赦しないから……夜人たちがちょっと気の毒かな。
 薄暗い巨大トンネルをペリツィアたち三匹が突き進む。途中何度か大きなクモの魔物と出くわしたが、僕らを恐れてくれたのか、襲ってくる様子は無くすぐに道を譲ってくれた。
 途中、岩陰を見つけては従魔の住処に入り休憩をとりながら進む。

 一度も戦闘が無いまま、ダンジョンに入り二時間ほどが経過した。
 進む先に、明らかに僕らを警戒する。武器を手にした冒険者の一団が現れた。恐らくペリツィアたちが走る音がうるさかったんだろう……体重を計ったことはないけど、ペリツィアたちはかなり重い。
 そんな重い生き物が全力で洞窟の中を走ったのだ。寝ていられないくらい、ウルサカッタんだろうな。
 ペリツィアたちに止まる様に命じると、僕とナファローネの二人だけで、こちらを警戒する冒険者たちのもとへ向かう。ここは素直に謝ろう、それで無理ならナファローネのAランク冒険者パワーでなんとかすれば……そう決心した僕は、勇気を振り絞って冒険者たちに話し掛けた。

※設定について、一部小人の名前が(正)ミダのところ、(誤)リジで書かれていたところが多数あり遡って修正しています。
資料(ファジャグル族):ムボは活発な性格の元気な男の子で、シザは三つ編みに木のフレームの眼鏡をかけた可愛らしくて気が強い女の子、ミダは大人しいちょっと内気なショートヘアの女の子。身長は三人共四十センチ前後です。
 
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