落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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184話 おかしな冒険者のパーティー登録1(2021.08.23改)

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 冒険者ギルドは商業地区である東エリアにある。東門の近くにあるこの町で一番大きな建物は、町の象徴シンボルでもあり遠くからでも一目でその場所が分かった。
 門の近くにあるのは魔物を抱えた冒険者が入り易い様にだと、見ず知らずのおじいさんが教えてくれた。綺麗な建物と石畳の道が整備されたこの町で、血だらけの魔物を抱えながら町ブラするのは相当の勇気がいるだろう。東門には冒険者専用の通路もあり、大穴へ向かう定期馬車も東門発着になっている
 冒険者ギルドの周りには冒険者御用達の店も多い、武器屋や防具屋に魔道具屋や道具屋といった店が並んでいるのも特徴だ。
 冒険者ギルドの扉を開けた。手にずしりと来る重い扉が懐かしい。
 昼少し前の冒険者のいない時間を狙って来たのが正解だったんだろう、冒険者ギルドはいていた。その中でも比較的人の少ない窓口を探して並ぶ、やはりギルドの窓口にはキレイなお姉さんが多い。
 僕が並んだ窓口は、眼鏡をかけた大人しそうな印象の女性が座る窓口だ。
 すぐに僕の番が来た。

「初めて見る冒険者さんですね。今日はどんな用で来られましたか?」

 首に掛けたギルドカードを見て、登録済みの冒険者だとは思ってもらえたみたいだ。

「あの……他の町で受けた依頼の報告をすることは出来ますか」

 久々の女生との会話に思わず上擦る……シザ、ミダ、ごめん。キミたちを女性と思っていないわけじゃないんだ。

「依頼にもよりますが出来る物の方が少ないかもしれません。やはり依頼は受けた町に報告するのが普通なので」
「そうですか、カスターニャの町で受けた指名依頼なんですが」

 僕の言葉を聞いて何か思い当たることがあったんだろうか?眼鏡をかけた女性は、確認だけしてみますねと僕のギルドカードを預かると目の前の魔道具に通した。

「少しだけ、待っていてください」

 そう言うと女性は、席を立ち上がったかと思うと走り出した。五分ほどだろうか、戻って来た女性の横には、四十代くらいのいかにも上司と分かる男性職員が一人立っていた。

「Cランク冒険者のルフトさんですね、別室でお話を伺ってもいいでしょうか?」

 男性職員は丁寧にそう言った。

「パーティー登録もしたいんですが」
「分かりました。一緒に話を伺いましょう」

 そう言うとすぐに、僕にギルドカードを返して後をついてくるようにと促がす。

 男性職員に案内されたのは、冒険者ギルドの二階にある小さな部屋だった。部屋に入りすぐに職員はどの指名依頼の報告なのかと聞いてきた。僕は緑のゴブリン王討伐とゴブリンの町にあったゴブリンダンジョン攻略についての報告があると伝えた。〝報酬にについては、カスターニャの町の冒険者ギルドで受け取っていただく必要があります。ただ……ゴブリン王討伐については早めに確認したいもので、パーティー登録について出来るだけ優遇しますので、ゴブリン王を討伐した証拠を見せていただけないでしょうか?〟職員は言った。
 僕は職員にゴブリン王ラガンの体から取り出した魔石を差し出した。魔石の大きさからその価値を察したのだろう、職員は僕の見ている目の前で魔道具を使い『鑑定』を行う。
 魔道具を使うのは、職員以外の人間にも鑑定結果を見せるためだろう。
 職員は、驚いた顔でゴブリン王の魔石で間違いないと話し、この結果を至急カスターニャの町の冒険者ギルドにも伝えると約束してくれた。報告も終わったし、報酬は後回しでもいいだろう……仕事をやり遂げたと感じ、少しホッとした。

「失礼ですが、この魔石をエドックスの冒険者ギルドで買い取らせてはいただけないでしょうか?出来るだけ高い金額で買い取らせていただきますので」

 強い魔物の魔石は、魔道具研究や多くのことに役立つと聞く、やはり価値のあるモノなんだろう。

「すみません……カスターニャの町の冒険者ギルドに報告する際万が一証拠を求められると困るので、これは持っておきます」

 職員は〝それなら仕方がありませんね〟とすぐに引き下がってくれた。無理に買い取ろうとは思わなかった様だ。〝緑のゴブリン王が死んだという報告は多くの人を安心させるでしょう。本当にありがとうございました〟と職員は改めて頭を下げる。

「では、このままパーティー登録に移りますね。パーティーリーダーはルフトさんで登録して構いませんか?それと他のメンバーがいるなら呼んでいただけないでしょうか?」
「リーダーは僕で、あとメンバーは種族が人間ではなくて……一緒に冒険者登録もしたいんですが」

 どう説明すればいいんだろう……言葉に詰まってしまう。

「体内の魔石の有無は魔道具で確認できますので、珍しい種族でも構いませんよ」

 こういう事にも慣れているんだろう、職員は僕を安心させようと気遣いながら話を続ける。だからといって目の前で従魔の住処を開くのはどうなんだろうと思い、僕は一旦部屋を出てからムボ、シザ、ミダとナファローネを呼び、少し時間を置いてから部屋へと戻った。

「早かったですね」

 職員はそう言った後、僕の後ろを見て固まった。

「こ……小人ですか?会うのは初めてです」
「はい、ファジャグル族という小人族なんです」

 ムボ、シザ、ミダも僕以外の人間と会うのが初めてのこともあり緊張している。
 職員は魔道具を使い、慣れた手つきで三人の魔物判定を行っていく。どうやら魔物ではないと無事確認が出来たみたいだ。三人のクラスがテイマーと知り一瞬微妙な表情を浮かべたが、流石はプロだ。すぐにその表情を繕った。テイマーはやはり良くは思われていないらしい。

「ムボさんとシザさんとミダさん、今日からあなたがたはGランクの見習い冒険者です。頑張ってくださいね」
「「「ハイ」」」

 三人はギルドカードを受け取ると嬉しそうな顔で、大きな声で返事をした。職員は、次にナファローネのギルドカードに手を伸ばす。

「……Aランクですか?初めて見ました、取り乱してしまいすみません」

 明らかに声が裏返っている……僕は、そんな職員の反応は気にせず目の前のパーティー申請用紙の必要事項を埋めていく。後はパーティー名を記入すれば終わりか【リンゴの苗】これにしよう。僕の従魔の住処に一番最初に植えた植物の名前だ。木や実ではなく苗にしたのは、これからパーティーみんなで成長していきたいという希望を込めたからだ。
 少しして、全員のギルドカードにパーティー名【リンゴの苗】の文字が刻まれた。それと同時に僕以外のギルドカードにも『エドックスの滞在許可』の文字が入る。
 そうそう、大穴ダンジョンは行けばすぐに入れる場所ではなく、パーティー単位での入場登録が必要で、その登録にも二日程掛かってしまうとのことだ。リザスさんたち黒いゴブリンたちは、一体どこから出入りしているんだろう?
 メルフィルさんも、黒いゴブリンの一団がエドックスの近くで目撃されたなんて話はしていなかったし……。

 職員から、大穴ダンジョンへの入場申請は進めておきますので、二日後にもう一度冒険者ギルドに来てください、と言われ僕らはそのまま冒険者ギルドを後にした。
 ナファローネのギルドカードを見てから明らかに職員さんの顔色が悪いというか……おかしいというか……、やはりAランクの冒険者はそれだけ珍しいんだろう。
 
 
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