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123話 西の砦の戦い2(2021.08.16改)
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地下冷凍庫の完成にみんなで大騒ぎ!時間を忘れ夢中で穴掘りしていたため、時を報せる魔道具、時計の針は、はじまりの数字〝二四〟を刺していた。あと四~五時間もすれば朝日も昇りはじめるだろう。
時計は、時を司る神の魔力に反応して時間を報せる魔道具であり、本来は、貴族や大商人しか手が出せない高価なものだ。それがどういうわけか?ファジャグル族が暮らす村では普通に流通しており、従魔の住処にも至るところに置いてある。
「あるじ、でんごん、へいき?」
コボルトのテリアが首を傾けながら聞いた。進化を経て僕よりだいぶ背は高くなってしまったけど、そのつぶらな瞳には思わず首元に抱き付いてしまいたくなる魅力がある!兄弟であるテリアとボロニーズの見分け方は、お兄ちゃんのテリアが狼風な顔立ちなのに対して、弟のボロニーズは犬寄りの顔立ちである。カッコイイ系とカワイイ系!僕はどっちも好きだ。
「伝言か……今日はまだ確認していなかったよね。ありがとうテリア、ちょっと見てくるよ」
僕がそう言い歩き出すと、シルバーウルフのドングリが無言で横に並び、僕の腰のあたりに顔を寄せる。反射的に僕はドングリの喉元を撫でた。伝言の確認に行く付き添いは、ドングリの仕事だ。
「ルフト君、ルフト君、起きてください」
何度もドアを叩き僕の名前を連呼する声。いまは真夜中だ。こんな時間に訪ねてくる客という時点でかなり怪しい!音を立てずにカーテンの隙間から外を覗くも、人通りは無く、町は普段と変わらず寝静まっていた。ゴブリンが攻めてきたわけではないらしい。
「ルフト君起きてくれ、時間がないんだ」
「今開けますから、あまりドアを叩かないでください」
ドングリの耳元で〝外にいるのは何人かな?〟と聞くと、ドングリが僕の手を二回舐める。二人か……ドングリが横で大人しくおすわりしているところを見ると、ドアの向こう側にいるのは、僕に敵意を持った人間ではないんだろう。念の為、生樹の杖に魔力を流しドアの前に枝を伸ばす。万が一相手が飛び掛かってきた際の用心である。
鍵を開けた瞬間、ドアは外側に引かれ、二人の男が部屋の中へと雪崩れ込んで来た。そのまま枝に足をとられて派手に転ぶ。荒事に慣れていないのか受け身もとれず痛そうだ。床に転がった二人をドングリが前足を使い器用に押さえる。
「えらいぞードングリ」
「ガウガウ」
僕はドングリの両頬を手で覆い、わしゃわしゃと撫でた。
「待ってください。我々はけして怪しい者ではありません。胸元に冒険者ギルドの職員の証でもあるギルド証も付いています」
「本当ですか?」
「本当です。信じてください」
武器も持っていないようなので、ドングリに二人の解放を命じた。二人は起き上がるとすぐに胸元のギルド証を見せ、僕に真夜中の訪問理由を話しはじめる。
西の砦がゴブリンに攻め込まれており、救援が必要だと……。
職員の話はこうだ――数日前から、ゴブリンの動きが急に活発になり、冒険者たちが拠点とする『南のキャンプ地』が三度ゴブリンの襲撃を受けたんだそうだ。それに比べて兵士たちの活動拠点である『西の砦』は、いまだに一度の襲撃も無く平和そのもの、報告を受けた冒険者ギルドは、ゴブリンの狙いは南のキャンプ地だと断定して動いた。
すぐさま、カスターニャの町に最低限の人数を残し、冒険者たちを南のキャンプ地に派遣……ところが、冒険者が減ったタイミングを狙うように、今度は、西の砦がゴブリンに攻め込まれたと、まんまとゴブリンの罠にはまっているような……僕が気にすることじゃないけど、冒険者ギルドの中にも内通者がいるんじゃないか?と疑ってしまう。
今は、そんなことよりも西の砦に向かうことを考えないと。
西の砦には、バルテルメさんやレールダムさんたち第六兵団のみんながいる。僕や従魔たちにも優しくしてくれた彼らを見殺しには出来ない。
「分かりました。僕も西の砦に向かいます!」
「ありがとうございます。いま広場で西の砦に向かうための馬車を用意しております。兵士と冒険者の混成軍を組んでおりますので、ルフト君もそこに加わってください」
「いえ、僕は先に一人で向かいます。恐らく馬車よりもずっと早く西の砦に行けるはずなので」
「我々は混成軍を組むために冒険者の皆様に声を掛けているのです。勝手な行動は困ります」
「うーん、それならギルドマスターのカストルさんにお伝えください。一刻も早く西の砦に向かうために、僕がそう判断したと、職員のお二人が怒られることはないはずです」
僕は笑顔でそう言うと、ドングリを連れて二人の静止を聞かずに走り出した。外に人がいないことを良いことに、町の中でドングリの背中に乗る。僕のように叩き起こされた一部の冒険者に見られちゃったけど……いまはとにかく先を急ぐことだけに集中した。
✿ ★ ✿
カスターニャの町から西の砦までは、小さな森や丘を迂回する必要があるため馬車で半日、馬で飛ばしても三、四時間はかかる。それが、空を飛んだお陰で、一時間もしないうちに西の砦上空に到着した。
空飛ぶサメ!シルバーフライングシャークのアルジェントの背中から砦を眺めた。
松明の火でも移ったのか、火が放たれたのか、建物の一部からは火が上がり煙が昇る。正門もすでに破られており、砦の中にまでゴブリンが侵入していた。
砦の中で戦っているゴブリンには、上位種がいないようで、体が小さいものばかり、話を聞いて急いで飛んで来たけど……数が多いだけで、上位種がいないのなら兵士だけでも退けることが出来そうだ。
実際、ゴブリンの数も減り、兵士有利で進んでいるんだけど……何だろう、胸騒ぎがする。
「アルジェント、あっちに向かって」
薄っすらと雨が降り出す中、遠くに火事とは別の煙を見た気がした。
見つけた……西の砦から一キロほど離れた場所に、同族が生死をかけて戦っているというのに、呑気に宴を楽しむゴブリンの一団がいた。
肉でも焼いているんだろう、立ち昇る煙から美味しそうな匂いがする。思わず僕のお腹が鳴った。ゴブリンの数は四十匹前後、その全てが上位種だ。しかも、そんなに高い場所じゃないから、注意して上を見れば分かるんだろうけど、月が出ない闇の中で僕らを見つける、鼻の利くゴブリンもいるみたいだ。
アルジェントを見て笑うなんて、よほど自分の強さに自信があるんだろう。
「砦に戻るよ、バルテルメさんたちに知らせなきゃ」
アルジェントの体を撫でながら、西の砦に向かうように命じた。僕たちに気付きながら、ゴブリンたちは追う素振りひとつ見せない。
屋上のある建物を探して降りる。従魔の住処を開きアルジェントを入れると、ドングリにフェアリーのフローラルとレモン、怪我人がいることも考慮して癒し系スライムのホワイトさんを呼び出す。
建物から急に飛び出して来た僕らを見て、兵士たちが一瞬声を上げるが、すぐに何かを理解したとばかりに静かになった。
理解が早くて助かります!
「すみませんバルテルメ兵士長はどこにいますか?」
「兵士長なら中央広場にいる。ただゴブリンの数も多いから気を付けろよー」
「ありがとうございます」
教えてくれた兵士にお礼を言うと、中央広場に向かって急いだ。
中央広場には、槍を振るうバルテルメさんの他にも、第四兵団の兵士長であるアルトゥールさんに、副長のグレドさんまでいる。上級冒険者並みの強さを持つ兵士長二人を前に、広場のゴブリンは全滅寸前だ。
「おや!ルフト君じゃないか久しぶりだね、少し背が伸びたんじゃないのか」
「お久しぶりですアルトゥールさん、第四兵団も西の砦に来ていたんですね」
「ああ、昨日到着したばかりでね。それでこれだろう……まいっちゃうよ」
アルトゥールさんは、戦いの最中だというのに、目の前にいる二匹のゴブリンの首を一撃で刎ねると、僕のそばにやって来て頭を撫でる。
「おっルフトじゃねーか、ドングリちゃんも一緒か、銀色の毛並みてことはシルバーウルフに進化したんだな。ますますべっぴんさんになったじゃねーか」
副長のグレドさんは犬好きで、ドングリとアケビをシロミミコヨーテ時代からなんとなく判別していた。進化しても見抜くなんて流石自称犬好きである。
「アルトゥールもグレドもまだ戦闘中なんですよ、それにしても、カスターニャの町に兵士を走らせてから半日も経っていないと思うんですが、もう到着ですか……ルフト君は得体が知れませんね。それにその表情、何かありましたか?」
僕は、集まって来たバルテルメさんとアルトゥールさん、グレドさんの三人に、離れた場所で宴をするゴブリンの上位種たちのことを話した。
「これは撤退ですね。襲って来たゴブリンは強くはないんですが数が多過ぎて、もう数時間は戦いっぱなしなんですよ。負傷者も出ていますしこの辺りが潮時でしょう。遠くで様子を窺うルフト君の従魔に気付いても動かなかったみたいですし、ゴブリンたちも私たちが西の砦を捨てるとは思わないんでしょう」
「そうだな、今のうちにカスターニャの町まで撤退するか、グレド負傷者の数を確認してくれ」
僕の話を聞いて、バルテルメさんとアルトゥールさんは、テキパキと撤退の準備をはじめる。三人には、アルジェントの話は伏せて、従魔に砦周辺の偵察を頼んだところゴブリンの一団に気が付いたと、言葉を濁した。
※2021.08.16、123話はほぼほぼ書き換えました(2巻登場も影が薄い時計の魔道具も少しだけ)。&登場キャラが多いのでキャラの一部を箇条書きしています!
従魔
✿ドングリ。種族シルバーウルフ。銀色の毛並みのキレイな狼の魔物。妹のアケビは魔物の王様の嫁に、体長二百五十センチ!書籍化で設定が巨大化しました。戦闘時は鎧を着ており、前脚に吊るした短剣を器用に口で使います。
✿アルジェント。種族シルバーフライングシャーク。召喚の壺から現れた世にも奇妙な空飛ぶサメの魔物。甘えん坊な一面もある。従魔の中でも最強の一匹。モデルはヨシキリザメ!書籍化で胸鰭が翼のように大きくなりました。
✿フローラルシャワー。種族キンギョソウの妖精。真っ赤な鎧を着たおじいさん妖精。植物の妖精なのに火に近しい存在であり火の魔法を得意としています。名前が長いのでフローラルと呼んでいます。
✿レモンクィーン。種族ヘリアンサスの妖精。花言葉の『活発』にぴったりな元気な女の子!水と地の魔法が得意。ヘリアンサスはヒマワリを小さくしたような花です。名前が長いのでレモンと呼んでいます。
リレイアスト王国兵士
✿アルトゥール。金髪天パ―で碧眼。貴族疑惑有。キレイな顔立ちをした推定三十前後。第四兵団兵士長。ルフトを気に入っており、テイマーの地位向上にも積極的に動いている。
✿グレド。茶色の短髪で面倒見のいいオラオラ系。アルトゥールさんの幼馴染で第四兵団副長。ルフトに貰ったファルシオンを愛用しており、大の犬好。
時計は、時を司る神の魔力に反応して時間を報せる魔道具であり、本来は、貴族や大商人しか手が出せない高価なものだ。それがどういうわけか?ファジャグル族が暮らす村では普通に流通しており、従魔の住処にも至るところに置いてある。
「あるじ、でんごん、へいき?」
コボルトのテリアが首を傾けながら聞いた。進化を経て僕よりだいぶ背は高くなってしまったけど、そのつぶらな瞳には思わず首元に抱き付いてしまいたくなる魅力がある!兄弟であるテリアとボロニーズの見分け方は、お兄ちゃんのテリアが狼風な顔立ちなのに対して、弟のボロニーズは犬寄りの顔立ちである。カッコイイ系とカワイイ系!僕はどっちも好きだ。
「伝言か……今日はまだ確認していなかったよね。ありがとうテリア、ちょっと見てくるよ」
僕がそう言い歩き出すと、シルバーウルフのドングリが無言で横に並び、僕の腰のあたりに顔を寄せる。反射的に僕はドングリの喉元を撫でた。伝言の確認に行く付き添いは、ドングリの仕事だ。
「ルフト君、ルフト君、起きてください」
何度もドアを叩き僕の名前を連呼する声。いまは真夜中だ。こんな時間に訪ねてくる客という時点でかなり怪しい!音を立てずにカーテンの隙間から外を覗くも、人通りは無く、町は普段と変わらず寝静まっていた。ゴブリンが攻めてきたわけではないらしい。
「ルフト君起きてくれ、時間がないんだ」
「今開けますから、あまりドアを叩かないでください」
ドングリの耳元で〝外にいるのは何人かな?〟と聞くと、ドングリが僕の手を二回舐める。二人か……ドングリが横で大人しくおすわりしているところを見ると、ドアの向こう側にいるのは、僕に敵意を持った人間ではないんだろう。念の為、生樹の杖に魔力を流しドアの前に枝を伸ばす。万が一相手が飛び掛かってきた際の用心である。
鍵を開けた瞬間、ドアは外側に引かれ、二人の男が部屋の中へと雪崩れ込んで来た。そのまま枝に足をとられて派手に転ぶ。荒事に慣れていないのか受け身もとれず痛そうだ。床に転がった二人をドングリが前足を使い器用に押さえる。
「えらいぞードングリ」
「ガウガウ」
僕はドングリの両頬を手で覆い、わしゃわしゃと撫でた。
「待ってください。我々はけして怪しい者ではありません。胸元に冒険者ギルドの職員の証でもあるギルド証も付いています」
「本当ですか?」
「本当です。信じてください」
武器も持っていないようなので、ドングリに二人の解放を命じた。二人は起き上がるとすぐに胸元のギルド証を見せ、僕に真夜中の訪問理由を話しはじめる。
西の砦がゴブリンに攻め込まれており、救援が必要だと……。
職員の話はこうだ――数日前から、ゴブリンの動きが急に活発になり、冒険者たちが拠点とする『南のキャンプ地』が三度ゴブリンの襲撃を受けたんだそうだ。それに比べて兵士たちの活動拠点である『西の砦』は、いまだに一度の襲撃も無く平和そのもの、報告を受けた冒険者ギルドは、ゴブリンの狙いは南のキャンプ地だと断定して動いた。
すぐさま、カスターニャの町に最低限の人数を残し、冒険者たちを南のキャンプ地に派遣……ところが、冒険者が減ったタイミングを狙うように、今度は、西の砦がゴブリンに攻め込まれたと、まんまとゴブリンの罠にはまっているような……僕が気にすることじゃないけど、冒険者ギルドの中にも内通者がいるんじゃないか?と疑ってしまう。
今は、そんなことよりも西の砦に向かうことを考えないと。
西の砦には、バルテルメさんやレールダムさんたち第六兵団のみんながいる。僕や従魔たちにも優しくしてくれた彼らを見殺しには出来ない。
「分かりました。僕も西の砦に向かいます!」
「ありがとうございます。いま広場で西の砦に向かうための馬車を用意しております。兵士と冒険者の混成軍を組んでおりますので、ルフト君もそこに加わってください」
「いえ、僕は先に一人で向かいます。恐らく馬車よりもずっと早く西の砦に行けるはずなので」
「我々は混成軍を組むために冒険者の皆様に声を掛けているのです。勝手な行動は困ります」
「うーん、それならギルドマスターのカストルさんにお伝えください。一刻も早く西の砦に向かうために、僕がそう判断したと、職員のお二人が怒られることはないはずです」
僕は笑顔でそう言うと、ドングリを連れて二人の静止を聞かずに走り出した。外に人がいないことを良いことに、町の中でドングリの背中に乗る。僕のように叩き起こされた一部の冒険者に見られちゃったけど……いまはとにかく先を急ぐことだけに集中した。
✿ ★ ✿
カスターニャの町から西の砦までは、小さな森や丘を迂回する必要があるため馬車で半日、馬で飛ばしても三、四時間はかかる。それが、空を飛んだお陰で、一時間もしないうちに西の砦上空に到着した。
空飛ぶサメ!シルバーフライングシャークのアルジェントの背中から砦を眺めた。
松明の火でも移ったのか、火が放たれたのか、建物の一部からは火が上がり煙が昇る。正門もすでに破られており、砦の中にまでゴブリンが侵入していた。
砦の中で戦っているゴブリンには、上位種がいないようで、体が小さいものばかり、話を聞いて急いで飛んで来たけど……数が多いだけで、上位種がいないのなら兵士だけでも退けることが出来そうだ。
実際、ゴブリンの数も減り、兵士有利で進んでいるんだけど……何だろう、胸騒ぎがする。
「アルジェント、あっちに向かって」
薄っすらと雨が降り出す中、遠くに火事とは別の煙を見た気がした。
見つけた……西の砦から一キロほど離れた場所に、同族が生死をかけて戦っているというのに、呑気に宴を楽しむゴブリンの一団がいた。
肉でも焼いているんだろう、立ち昇る煙から美味しそうな匂いがする。思わず僕のお腹が鳴った。ゴブリンの数は四十匹前後、その全てが上位種だ。しかも、そんなに高い場所じゃないから、注意して上を見れば分かるんだろうけど、月が出ない闇の中で僕らを見つける、鼻の利くゴブリンもいるみたいだ。
アルジェントを見て笑うなんて、よほど自分の強さに自信があるんだろう。
「砦に戻るよ、バルテルメさんたちに知らせなきゃ」
アルジェントの体を撫でながら、西の砦に向かうように命じた。僕たちに気付きながら、ゴブリンたちは追う素振りひとつ見せない。
屋上のある建物を探して降りる。従魔の住処を開きアルジェントを入れると、ドングリにフェアリーのフローラルとレモン、怪我人がいることも考慮して癒し系スライムのホワイトさんを呼び出す。
建物から急に飛び出して来た僕らを見て、兵士たちが一瞬声を上げるが、すぐに何かを理解したとばかりに静かになった。
理解が早くて助かります!
「すみませんバルテルメ兵士長はどこにいますか?」
「兵士長なら中央広場にいる。ただゴブリンの数も多いから気を付けろよー」
「ありがとうございます」
教えてくれた兵士にお礼を言うと、中央広場に向かって急いだ。
中央広場には、槍を振るうバルテルメさんの他にも、第四兵団の兵士長であるアルトゥールさんに、副長のグレドさんまでいる。上級冒険者並みの強さを持つ兵士長二人を前に、広場のゴブリンは全滅寸前だ。
「おや!ルフト君じゃないか久しぶりだね、少し背が伸びたんじゃないのか」
「お久しぶりですアルトゥールさん、第四兵団も西の砦に来ていたんですね」
「ああ、昨日到着したばかりでね。それでこれだろう……まいっちゃうよ」
アルトゥールさんは、戦いの最中だというのに、目の前にいる二匹のゴブリンの首を一撃で刎ねると、僕のそばにやって来て頭を撫でる。
「おっルフトじゃねーか、ドングリちゃんも一緒か、銀色の毛並みてことはシルバーウルフに進化したんだな。ますますべっぴんさんになったじゃねーか」
副長のグレドさんは犬好きで、ドングリとアケビをシロミミコヨーテ時代からなんとなく判別していた。進化しても見抜くなんて流石自称犬好きである。
「アルトゥールもグレドもまだ戦闘中なんですよ、それにしても、カスターニャの町に兵士を走らせてから半日も経っていないと思うんですが、もう到着ですか……ルフト君は得体が知れませんね。それにその表情、何かありましたか?」
僕は、集まって来たバルテルメさんとアルトゥールさん、グレドさんの三人に、離れた場所で宴をするゴブリンの上位種たちのことを話した。
「これは撤退ですね。襲って来たゴブリンは強くはないんですが数が多過ぎて、もう数時間は戦いっぱなしなんですよ。負傷者も出ていますしこの辺りが潮時でしょう。遠くで様子を窺うルフト君の従魔に気付いても動かなかったみたいですし、ゴブリンたちも私たちが西の砦を捨てるとは思わないんでしょう」
「そうだな、今のうちにカスターニャの町まで撤退するか、グレド負傷者の数を確認してくれ」
僕の話を聞いて、バルテルメさんとアルトゥールさんは、テキパキと撤退の準備をはじめる。三人には、アルジェントの話は伏せて、従魔に砦周辺の偵察を頼んだところゴブリンの一団に気が付いたと、言葉を濁した。
※2021.08.16、123話はほぼほぼ書き換えました(2巻登場も影が薄い時計の魔道具も少しだけ)。&登場キャラが多いのでキャラの一部を箇条書きしています!
従魔
✿ドングリ。種族シルバーウルフ。銀色の毛並みのキレイな狼の魔物。妹のアケビは魔物の王様の嫁に、体長二百五十センチ!書籍化で設定が巨大化しました。戦闘時は鎧を着ており、前脚に吊るした短剣を器用に口で使います。
✿アルジェント。種族シルバーフライングシャーク。召喚の壺から現れた世にも奇妙な空飛ぶサメの魔物。甘えん坊な一面もある。従魔の中でも最強の一匹。モデルはヨシキリザメ!書籍化で胸鰭が翼のように大きくなりました。
✿フローラルシャワー。種族キンギョソウの妖精。真っ赤な鎧を着たおじいさん妖精。植物の妖精なのに火に近しい存在であり火の魔法を得意としています。名前が長いのでフローラルと呼んでいます。
✿レモンクィーン。種族ヘリアンサスの妖精。花言葉の『活発』にぴったりな元気な女の子!水と地の魔法が得意。ヘリアンサスはヒマワリを小さくしたような花です。名前が長いのでレモンと呼んでいます。
リレイアスト王国兵士
✿アルトゥール。金髪天パ―で碧眼。貴族疑惑有。キレイな顔立ちをした推定三十前後。第四兵団兵士長。ルフトを気に入っており、テイマーの地位向上にも積極的に動いている。
✿グレド。茶色の短髪で面倒見のいいオラオラ系。アルトゥールさんの幼馴染で第四兵団副長。ルフトに貰ったファルシオンを愛用しており、大の犬好。
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