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いつもと違う

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*フォルテ視点*

何度目だろうか、暗闇に放り出されるのは。

もう慣れたものだ、こういう時必ずミッシェルがいる。
最近は攻略を急かす話しかしていないから、話を聞かなかった。

中身がある話ならいいが、俺は俺なりのやり方があるんだから見守っていてほしい。

人を好きになるのって、そんな軽いものじゃない。
俺が惚れやすくなっているのも、100人攻略をするためだとしても俺の心は俺のものだ。

暗がりの中に小さな光が目の前に現れた。
それと同時に、静かな空間に足音が聞こえた。

「ミッシェル、今度は何の用だ」

「ミッシェル?」

その声と姿を見て、ミッシェルではないと気付いた。

白い狩衣を着た狐のお面をしている人が立っていた。
黒髪でポニーテールの見た目では男女どちらか分からない。
声は少し低いから、男なのかな…自信はない。

でも、なんで知らない人が俺の精神の中に入れるんだ?

それとも、この人も神様なのだろうか。

「貴方は神様ですか?」と聞いても首を傾げていて、違う気がした。
素顔が見えないから、余計に不安になる。

「なんで俺の精神の中にいるんですか?」

「精神?可笑しな事を言うね、人の部屋に勝手に入ってきたのに」

部屋?でもここはどう見てもいつもの俺の精神の空間だ。

狐面の人は一歩前に歩いてきた。
歩く度に、ピチャンピチャンと水滴が落ちる音が聞こえる。
その音を聞いていたら、一瞬で暗闇を光が包み込んだ。

すぐに光が消えて、現れたのは和式だった。

これがこの人の家?確かに和風の格好に似合っている。
でも、俺はここにきた覚えがないけどいつの間にお邪魔していたんだ?

それに、さっきは同じくらいの身長に思えたが今は大きい。
身長が高いとかいうレベルではなく、俺が小人になったみたいでかなり見上げないと顔が見れない。

俺は、ユリウスと廊下を歩いていた筈だけどいきなり投げ捨てられた感覚だ。
幽体離脱をしたような気持ちが悪い感覚がしたと思ったら、この暗闇にいた。

まだ状況が分かっていない俺に背を向けて、何処かに行こうとしていた。
ラウルを助けるために、ユリウスとカノンの助けが必要だ。
此処が何処か分からないけど、いずれ学院に戻れる筈だ。

狐面の人がいなくなり、すぐに俺も部屋から出ようと襖を開けた。

開けたつもりだったが、襖はびくともしない。
狐面の人は軽く開けていたから、普通の襖だと思ってたが重りでもあるのか?

もう一度開けようとして、自分の手が視界に映り目を見開いて驚いた。
もふもふとしている手を開いたり握ったりしてみると、俺の行動と同じ事をしていた。

「俺、猫になってる!?」

そんな筈はないと、自分の顔を見ようと部屋にあった鏡を覗き込んだ。
そこにいたのは、可愛い黒猫で呆然と鏡の向こう側を見つめた。

その時、狐面の人が部屋に戻ってきた。

ワゴンに乗せた大量の魚って、もしかして俺のご飯とか言わないよな。
今の姿を見たら、冗談だとは思えない。

とりあえずなにが起きたのか知っていそうだから、狐面の人に聞くしかない。

「どうして俺は猫なんだ、人間なのに」と震える声で聞いてみたら「元人間だったのか」と話が噛み合わない事を言っていた。
元人間じゃなくて、現人間だ!

「身体をなくした亡霊だったから、俺が新しい身体を作ったんだ」

「え……俺、死んだのか?」

「知らなかったのか」

死んだって、なんで…俺の記憶の中でなにか忘れている事でもあるのか?
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