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愛しく、守りたい,,
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「ラウル…」
「……っ」
腕に触れると、ラウルの身体が小さく跳ねた。
俺を縛っていたネクタイが目に入ったのか、謝りながらネクタイを外してくれた。
震える手で外すのに苦戦していて、協力したいけど今の俺は両手が使えない。
やっと拘束から解放されて、手首を軽く動かした。
ちょっとネクタイの痣が残ったけど、すぐに消える。
痣は消えるが、ラウルの心の傷はきっとそう簡単には消えない。
俺の痣を見て、ラウルの顔がみるみる青ざめていく。
ラウルに酷い事をされた本人である俺の方が不思議と冷静だった。
また顔を隠そうとするラウルの頬を掴んで、目を合わせた。
泣きすぎて、目元が真っ赤になっているラウルに感情が生まれる。
その感情は愛しい、この子を守りたいという感情だった。
ラウルが背負っているものを全て俺が理解出来るかは分からない、当事者にしか分からない事もある。
それでも俺は、ラウルの重荷を少しでも軽くしたい。
「うっ…ごめんなさい」
「ラウルは綺麗だよ」
「……っえ」
「ラウルの瞳は宝石のようにキラキラしてて、俺は好きだよ」
そんな事言われるとは思っていなかったのか、ラウルは驚いた顔をしていた。
ゲームで初めてラウルを見た時、俺はそう思った。
ラウルを抱きしめると、俺の腕の中にぴったり入った。
身長が同じくらいだから、包み込む事が出来ないかなと思っていたがこれなら良かった。
戸惑いが隠せていないラウルは小さな声で俺の名前を呼んだ。
身体を少し離して、ラウルの顔をジッと見つめた。
瞳が揺れて、どうしたらいいのか分からないけど俺と目を合わせてくれた。
俺はラウルを醜いなんて思った事は一度もないよ。
「どうして、そんなに優しい言葉を言うの?僕はフォルテに酷い事をしたのに」
「なんでかと聞かれたら、どう言えばいいのか分からないけど…俺はラウルの涙は本物だと思ったから」
「…本物?」
「ラウルの意思とは関係なく身体が動いてるように見えた、俺はラウルを操った奴を許さない…俺がラウルを守るから」
ラウルの大きな瞳から涙が溢れてきて、俺に抱きついた。
まだ入っている事を忘れていて、奥に入ってしまいびっくりした。
ラウルも慌てて俺から離れて、埋まっていた俺の中は空っぽになった。
中にあるものを出してから、下着を穿いた方がいいな。
どこかに手頃な布があるかなと周りを見渡すと、ラウルは自分のシャツを手渡してきた。
さすがにそれは汚れると、Tシャツ一枚のラウルに返した。
いくら寒くない季節でも、その格好でいたら風邪を引く。
それでもラウルは引き下がらず、シャツで俺の身体に付いた体液を拭った。
ズボンを穿いてやっと誰に見られても大丈夫な格好になり、ゴーグルを掛けて座り込むラウルに近付いた。
「分からないよ、フォルテが……身体は言う事を聞かなくても心に芽生えた感情は僕のものなのに」
「うん、だからこそラウルが流した涙は本物だったんだ」
身体ではなく、俺は心の中にいるラウルを見ていた。
楽しそうなラウルも、悲しいラウルも、皆ラウルという一人の人間なんだ。
全部のラウルを受け止めたい、それが愛というならラウルを愛してる。
ラウルに口付けると、ラウルは驚いた顔をしていた。
恋人がいるのに、そう思ってしまうのは俺の罪だ。
ラウルにとって、俺は不誠実な人間に見えるよな。
でも、俺は誰が一番とかではなく…同じくらい俺は全力で愛して守る覚悟がある。
唇を離して、ラウルの顔を見つめると長いまつげが瞬きした。
「フォルテ…」
「ごめん、俺はラウルを愛してる…こんな俺、気持ち悪いよな」
ラウルはなにか口にしようとしたが、それは大きな手で塞がれて言葉にならなかった。
ラウルの後ろにいるのは、ゲームでフォルテとレッドと一緒にいた魔物だ。
攻略キャラクターではなく、人の憎悪から生み出された悪魔。
フォルテは人間を救う「救世主様」と呼んでいた。
ラウルに腕を伸ばすが、救世主がラウルを後ろに出現した黒い空間の中に引きずり込んでいた。
手に炎をまとうが、救世主はラウルを盾にしていて攻撃が出来ない。
守るって言ったのに、ラウルを離したくないのに…
俺も黒い空間の中に入ろうとしたが、空間が消えて壁に激突した。
「ラウル、ラウルッ!!」
そこにいるのは俺だけで、ラウルは何処かに消えてしまった。
力なくその場に座り込み、床を思いっきり殴っても八つ当たりにしかならない。
力があっても守れないなら、何の意味もないじゃないか。
俺の身体がだんだん熱くなって、苦しくなり息を荒げた。
また力を暴走させないように、ゆっくりと深呼吸した。
教室の扉が開いて、俺の名前を呼ばれて顔を上げた。
俺の目の前にはユリウスがいて、心配そうな顔をしていた。
ユリウスに言わないといけないと、ユリウスの肩を掴んだ。
「ユリウス!ラウル、ラウルがっ!」
「…あ、悪かった…途中で見失って」
ユリウスは申し訳なさそうな顔をしているが、責めるつもりはない。
ラウルが救世主に連れていかれたのは、俺の責任だから。
ラウルとした事は話せないが、魔物に連れていかれた事だけを話した。
とりあえず、もうすぐ昼休みが終わるから教室に戻ろうとユリウスに支えられて立ち上がった。
ラウルがフォルテの代わりなら、救世主はラウルを使って悪い事をしようとする筈だ。
ラウルルートのフォルテなら、救世主に何をさせた?思い出せ…思い出せ。
そうだ、人間蟻地獄を作って人を魔物のエサにしようとしたんだ。
フォルテが人を誘き寄せて、罠にはまったら抜け出せない。
あそこは確か街の中にある広場のような場所だった。
ゲームは学院に通っていなかったから、学院の外でフォルテは悪さをしていた。
あの場所は何処だ?ゲームでも風景だけで何処かは詳しくは分からない。
ゲームではラウルを人間蟻地獄に誘っていた、なら現実ではいったい誰を誘うんだ?
ズキッと心臓が痛くなって、胸をギュッと握った。
「おい、大丈夫か?」
「平気、ラウルの方がもっと辛いんだ…早く助けにいかないと」
「……」
ユリウスの横を通り過ぎようとした時、俺の視界はグルグルと回った。
倒れそうになり、壁に寄りかかって足に力を入れる。
ユリウスの驚く声が、不思議と遠くで聞こえている。
楽しい気持ちにはなれないのに、口元に笑みを浮かべた。
「ふふ…」と笑うと、感情までも楽しくなってきた。
まるで俺も操り人形になったようで、感情までも他人に染まっていく。
ユリウスを視界に映して、みるみるユリウスの顔が険しくなった。
そんな顔をしないでほしいな、まるで俺も魔物のように見ている。
「愛しいハニーを助けに行かないと、ね?」
「……っ」
腕に触れると、ラウルの身体が小さく跳ねた。
俺を縛っていたネクタイが目に入ったのか、謝りながらネクタイを外してくれた。
震える手で外すのに苦戦していて、協力したいけど今の俺は両手が使えない。
やっと拘束から解放されて、手首を軽く動かした。
ちょっとネクタイの痣が残ったけど、すぐに消える。
痣は消えるが、ラウルの心の傷はきっとそう簡単には消えない。
俺の痣を見て、ラウルの顔がみるみる青ざめていく。
ラウルに酷い事をされた本人である俺の方が不思議と冷静だった。
また顔を隠そうとするラウルの頬を掴んで、目を合わせた。
泣きすぎて、目元が真っ赤になっているラウルに感情が生まれる。
その感情は愛しい、この子を守りたいという感情だった。
ラウルが背負っているものを全て俺が理解出来るかは分からない、当事者にしか分からない事もある。
それでも俺は、ラウルの重荷を少しでも軽くしたい。
「うっ…ごめんなさい」
「ラウルは綺麗だよ」
「……っえ」
「ラウルの瞳は宝石のようにキラキラしてて、俺は好きだよ」
そんな事言われるとは思っていなかったのか、ラウルは驚いた顔をしていた。
ゲームで初めてラウルを見た時、俺はそう思った。
ラウルを抱きしめると、俺の腕の中にぴったり入った。
身長が同じくらいだから、包み込む事が出来ないかなと思っていたがこれなら良かった。
戸惑いが隠せていないラウルは小さな声で俺の名前を呼んだ。
身体を少し離して、ラウルの顔をジッと見つめた。
瞳が揺れて、どうしたらいいのか分からないけど俺と目を合わせてくれた。
俺はラウルを醜いなんて思った事は一度もないよ。
「どうして、そんなに優しい言葉を言うの?僕はフォルテに酷い事をしたのに」
「なんでかと聞かれたら、どう言えばいいのか分からないけど…俺はラウルの涙は本物だと思ったから」
「…本物?」
「ラウルの意思とは関係なく身体が動いてるように見えた、俺はラウルを操った奴を許さない…俺がラウルを守るから」
ラウルの大きな瞳から涙が溢れてきて、俺に抱きついた。
まだ入っている事を忘れていて、奥に入ってしまいびっくりした。
ラウルも慌てて俺から離れて、埋まっていた俺の中は空っぽになった。
中にあるものを出してから、下着を穿いた方がいいな。
どこかに手頃な布があるかなと周りを見渡すと、ラウルは自分のシャツを手渡してきた。
さすがにそれは汚れると、Tシャツ一枚のラウルに返した。
いくら寒くない季節でも、その格好でいたら風邪を引く。
それでもラウルは引き下がらず、シャツで俺の身体に付いた体液を拭った。
ズボンを穿いてやっと誰に見られても大丈夫な格好になり、ゴーグルを掛けて座り込むラウルに近付いた。
「分からないよ、フォルテが……身体は言う事を聞かなくても心に芽生えた感情は僕のものなのに」
「うん、だからこそラウルが流した涙は本物だったんだ」
身体ではなく、俺は心の中にいるラウルを見ていた。
楽しそうなラウルも、悲しいラウルも、皆ラウルという一人の人間なんだ。
全部のラウルを受け止めたい、それが愛というならラウルを愛してる。
ラウルに口付けると、ラウルは驚いた顔をしていた。
恋人がいるのに、そう思ってしまうのは俺の罪だ。
ラウルにとって、俺は不誠実な人間に見えるよな。
でも、俺は誰が一番とかではなく…同じくらい俺は全力で愛して守る覚悟がある。
唇を離して、ラウルの顔を見つめると長いまつげが瞬きした。
「フォルテ…」
「ごめん、俺はラウルを愛してる…こんな俺、気持ち悪いよな」
ラウルはなにか口にしようとしたが、それは大きな手で塞がれて言葉にならなかった。
ラウルの後ろにいるのは、ゲームでフォルテとレッドと一緒にいた魔物だ。
攻略キャラクターではなく、人の憎悪から生み出された悪魔。
フォルテは人間を救う「救世主様」と呼んでいた。
ラウルに腕を伸ばすが、救世主がラウルを後ろに出現した黒い空間の中に引きずり込んでいた。
手に炎をまとうが、救世主はラウルを盾にしていて攻撃が出来ない。
守るって言ったのに、ラウルを離したくないのに…
俺も黒い空間の中に入ろうとしたが、空間が消えて壁に激突した。
「ラウル、ラウルッ!!」
そこにいるのは俺だけで、ラウルは何処かに消えてしまった。
力なくその場に座り込み、床を思いっきり殴っても八つ当たりにしかならない。
力があっても守れないなら、何の意味もないじゃないか。
俺の身体がだんだん熱くなって、苦しくなり息を荒げた。
また力を暴走させないように、ゆっくりと深呼吸した。
教室の扉が開いて、俺の名前を呼ばれて顔を上げた。
俺の目の前にはユリウスがいて、心配そうな顔をしていた。
ユリウスに言わないといけないと、ユリウスの肩を掴んだ。
「ユリウス!ラウル、ラウルがっ!」
「…あ、悪かった…途中で見失って」
ユリウスは申し訳なさそうな顔をしているが、責めるつもりはない。
ラウルが救世主に連れていかれたのは、俺の責任だから。
ラウルとした事は話せないが、魔物に連れていかれた事だけを話した。
とりあえず、もうすぐ昼休みが終わるから教室に戻ろうとユリウスに支えられて立ち上がった。
ラウルがフォルテの代わりなら、救世主はラウルを使って悪い事をしようとする筈だ。
ラウルルートのフォルテなら、救世主に何をさせた?思い出せ…思い出せ。
そうだ、人間蟻地獄を作って人を魔物のエサにしようとしたんだ。
フォルテが人を誘き寄せて、罠にはまったら抜け出せない。
あそこは確か街の中にある広場のような場所だった。
ゲームは学院に通っていなかったから、学院の外でフォルテは悪さをしていた。
あの場所は何処だ?ゲームでも風景だけで何処かは詳しくは分からない。
ゲームではラウルを人間蟻地獄に誘っていた、なら現実ではいったい誰を誘うんだ?
ズキッと心臓が痛くなって、胸をギュッと握った。
「おい、大丈夫か?」
「平気、ラウルの方がもっと辛いんだ…早く助けにいかないと」
「……」
ユリウスの横を通り過ぎようとした時、俺の視界はグルグルと回った。
倒れそうになり、壁に寄りかかって足に力を入れる。
ユリウスの驚く声が、不思議と遠くで聞こえている。
楽しい気持ちにはなれないのに、口元に笑みを浮かべた。
「ふふ…」と笑うと、感情までも楽しくなってきた。
まるで俺も操り人形になったようで、感情までも他人に染まっていく。
ユリウスを視界に映して、みるみるユリウスの顔が険しくなった。
そんな顔をしないでほしいな、まるで俺も魔物のように見ている。
「愛しいハニーを助けに行かないと、ね?」
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