上 下
55 / 62

変化

しおりを挟む
*フォルテ視点*

俺の目の前にいたラウルは三人の男達に床に押さえつけられていた。

これってまさか…嫌な予感は当たらないでほしい。

男達は俺を見て笑いながら「今忙しいんだけど、怪我する前に出てってくれない?」と手を振っている。
友人のこんなところを見つけて、見て見ぬふりなんて出来るわけないだろ。

手に炎をまとい、壁を軽く殴り付けた。
腕力はそんなにないけど、軽い焦げ目が壁に付いた。

怒られたら全力で謝ろう、ごめんなさい….先生。

でも、この男達には効果的のようだ。

「怪我させたくないんだ、加減できないから」

俺が魔術使いで良かった、それだけでビビってくれる。
倉庫の中に足を踏み込むと、ラウルを拘束していた手を離した。

肩を揺すってみても、ラウルは反応がない。

まさか、なにかされたのか?

男達を睨み付けると、キレ気味に「まだ何もしてねぇよ!」と言っていた。
ラウルにこんな事しといて、信用出来るわけがない。

とにかくラウルをこんな埃っぽいところから連れ出さないと。

床に落ちたゴーグルと上着を持って、ラウルにゴーグルを掛けた。

ラウルを抱き上げておんぶして、倉庫から出ようとした。
微かに後ろで音が聞こえて、空いている手で壁を殴ると動きが止まった。

廊下に出て、保健室に行こうと歩き出した。
似たような身長のラウルを背負っているから、重くてゆっくりとしか歩けない。

もう少し我慢して、ラウル。

ここの廊下は人気がないな、こんなところがあるんだって知らなかった。

「ん….ぅ」

「あ、起きた?」

小さなラウルの呻き声が聞こえて、声を掛けた。
俺が重さで震えているのが怖かったのか、俺のシャツを掴んでいた。

「ごめんね、歩ける?」と聞いてみたが、反応がない。
まだ元気なラウルに戻ってないか、保健室までなら頑張る。
これも腕力を鍛えるためだと思えばなんて事はない。

怖いと思うが、もうちょっと我慢してね。

強くシャツを握られると、ボタンが取れた。

びっくりして、ラウルに声を掛けようとした。

ラウルの手がシャツの中に滑り込んで、乳首を摘ままれてラウルを離してしまった。
落ちてしまったラウルが心配で振り返った。

「ご、ごめんラウル!大丈夫?」

「……」

「ラウル…?」

「フォルテ」

ずっと下を向いていて、どこかにぶつかったのかと思ってしゃがんだ。
でも、ラウルは口元に笑みを浮かべていた。

それはいつもの明るいラウルではなく、背筋が冷たくなるような歪な笑いだ。

俺の方を見上げるラウルは、俺の知るラウルではなかった。

真っ赤に染まった瞳で俺を映していた。

その顔は、まるでゲームのフォルテを見ているかのようだ。

なんでそう思うんだ?ラウルは攻略キャラクターで、フォルテとは真逆の存在だ。
いったいなにが起きたのか、ミッシェルなら知ってるのかもしれない。

「ミッシェル!状況教えてくれ!ラウルはどうなったんだ!?」

『フォルテが悪役と外れた行動ばかりしてるから、世界は誰かをフォルテの代わりにしようとしてるだけだよ』

「なんだよそれ、じゃあ俺の死亡フラグは」

『死亡フラグは変わらないよ、ただフォルテが悪役に戻ってくるまで誰かがフォルテにならないといけない』

俺の代わりにラウルが悪役になってるって事か?
フォルテの末路をラウルが辿ろうとしている。
フォルテが本来するべきだった事ってなんだ?俺がしなかった事……

考えていたら、ラウルが俺の前に立っていた。

フォルテの代わりになっているとミッシェルは言っていたが、フォルテがしない表情をしていた。
頬を赤らめて、明らかに興奮したように息を荒げていた。

もう一度ラウルの名前を言おうとしたら、腕を掴まれて近くの教室に押し込まれた。
床に倒れて、起き上がろうとしたが靴を脱いだラウルに肩を踏まれて起き上がる事が出来ない。

「ラウル、どうし……」

「ラウル?……誰に口聞いてるの?フォルテ」

俺のネクタイを掴んで、顔を近付けてきた。

突然の豹変に、頭が追い付かない。
今まで聞いた事がない低い声で囁かれた。

「ラウル様、でしょ」とラウルは笑みを浮かべていた。
本当になにが起きてるんだ?こんなのフォルテでもない。

そもそも何なのか分からないと思っていたら、ラウルは俺の腕を掴んでなにかをしていた。

ラウルのネクタイで俺の両手が拘束された。、
何をしようとしているのか、不安そうにラウルを見つめた。

「…なに、これ」

「フォルテ、助けにきてくれてありがとう」

「う、ん…」

「でもね、あんなカッコいい助け方されるとさぁ」

一瞬言葉を区切って、足を退かしてくれたと思ったら両手を頭の上で押さえつけられた。
服の上から強く乳首をつねられて、痛みで眉を寄せた。

痛みに耐える俺とは違い、ラウルは嬉しそうだ。

「いじめたくなるんだよね」と言っているラウルに顔を青ざめた。

まるで、人が変わったかのようにドSになっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...