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お茶会
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「遅れてごめん、二人共」
「いや、構わない…私ももてなす準備が必要だったから」
「ねぇねぇ、見て!フォルテがくれたんだよ!」
カノンがコップを置いて、ラウルがユリウスに絡んでいた。
俺も椅子に座って、隣にカノンも座った。
ユリウスは慣れた様子で「はいはい、良かったな」と呆れていた。
ラウルは俺の隣に座り、もう一度お礼を言って丁寧頭も下げた。
誕生日プレゼントだから気にしなくていいんだよ。
俺達が買ってきた砂糖菓子と、フルーツを練って作った焼き菓子をテーブルに並べる。
カノンは、甘いものに合う紅茶を出してくれた。
遊びにきた子供達が教会の中にいて、カノンはずっと見守りながら仕事をしていたみたいだ。
「どうだった?創立パレード」
「もうすっごいキラキラで、バーってなってドカーンってなって!」
「それじゃあ分かんねぇだろ」
「ラウルはいつも明るいな」
カノンに褒められて、ラウルは嬉しそうに砂糖菓子を口にいれた。
「美味しいよフォルテ!」と言って、俺の口に砂糖菓子を突っ込んだ。
確かにラウルの言っていた通り、口の中に広がるちょうどいい甘さだ。
カノンにもあげようと、ラウルと同じように砂糖菓子を掴んでカノンに向けた。
そこで、手渡しをする恥ずかしさに気付いて慌てて手を引っ込めた。
カノンは小さく首を傾げて、口を開いていた。
これはしてもいいって事なんだよな、多分。
カノンの口に砂糖菓子を入れると食べた。
「確かに美味しい」
「そ、そうだよね!」
「二人共、僕達の存在忘れてない?」
ラウルの言葉に、心臓が飛び出るほど驚いた。
ラウルとユリウスの方を振り返ると、ラウルは「お腹いっぱいだよー」とにやけた顔で言っていた。
ユリウスは、何故か俺達に背を向けていて見ていない。
二人がいるのに、友人のこんな姿見たくないよな。
二人に謝って、ラウルにお返しに砂糖菓子を口に突っ込まれた。
そして、お茶会もどきは終わった。
カノンはまだ仕事があるみたいで、俺も仕事を手伝うと言った。
ラウルとユリウスには先に帰っていいよと言って、二人を教会前まで見送った。
「フォルテも帰って大丈夫だよ」
「この時間は俺が決めて使わせたから、フォルテの仕事を手伝いたい」
「フォルテがいいなら、分かった…じゃあ装飾の片付けを頼めるか」
カノンの言葉に頷いて、一緒に教会内の片付けを始めた。
外の装飾は今日一日中付けっぱなしにするみたいだ。
中だけなら、船の最終便に間に合うから良かった。
*ラウル視点*
フォルテ達と別れて、ユリウスと二人で歩いていた。
新しいゴーグルが嬉しくて、ずっとゴムを指で弄る。
隣にいたユリウスは「嬉しそうだな」と言っていた。
そりゃあ、ずっと困ってたんだからフォルテは僕の救世主だよ。
僕の……救世主?
「…?どうした?」
「えっ、あ…何でもないよ!嬉しかったから!」
「……そうか」
ユリウスはそれだけ言って、何も喋らなかった。
僕も何だか分からない、なんでさっき一瞬だけ意識が飛んだんだろう。
最近こういう事多いな。
夜更かししてロボットを作ってたから、疲れてたのかもしれない。
船着場で船を待っている時、隣のユリウスをチラッと見つめた。
ユリウスは、たまに後ろを振り返ったり下を向いて考え事をしていたりしている。
フォルテが来るのを待ってるんだよね、分かりやすい。
でも、あの時のユリウスは怒ってたし…カノンとは長い付き合いだったから仕方ないのかもしれない。
「ユリウス、ごめんね…僕のせいで…もっと早くフォルテと仲良くなれたのに」
「もうその話は終わっただろ、アイツも気にしてないって言ってたし……失った時間は戻れねぇよ」
ユリウスに頭を撫でられて、不満そうな顔をする。
乱暴だから髪が乱れて恥ずかしい髪型になってしまった。
仕返ししたいのに、ユリウスに身長が届かない。
現実を突き付けられるのは嫌だから、身長チャレンジはしない。
フォルテ達はまだ来ないみたいだから、船が来て二人だけで乗り込んだ。
またいつか皆でお喋りしながら、お菓子を食べたいな。
僕達と遅れて、一人の少年が船に乗って出発した。
海を眺めながら、ユリウスと一緒に話していた。
「あれ?ラウル?」
「え…」
後ろから声を掛けられて、後ろを振り返ると僕達の後に乗った子がいた。
名前を知っているって事は、僕の知り合い?でもこんな人知らない。
ユリウスを見ても不審そうな顔をしていて、知らなさそうだ。
ユリウスが知らないなら、僕も知らないのは当然だ。
幼少期の頃いつも一緒にいたし、学院に通ってる今もフォルテ達と部活の人達くらいしか知り合いはいない。
他に忘れている人はいなかっただろうかと、考える。
悩む僕に、その少年は笑みを浮かべている。
その姿は、とある記憶を思い出させた。
それは、いい記憶ではない…地獄のような記憶だ。
「その変なゴーグルで目、隠してんの?ラウル」
ユリウスは気付いて、眉を寄せて睨み付けていた。
僕をいじめていた少年がそこにいた。
「いや、構わない…私ももてなす準備が必要だったから」
「ねぇねぇ、見て!フォルテがくれたんだよ!」
カノンがコップを置いて、ラウルがユリウスに絡んでいた。
俺も椅子に座って、隣にカノンも座った。
ユリウスは慣れた様子で「はいはい、良かったな」と呆れていた。
ラウルは俺の隣に座り、もう一度お礼を言って丁寧頭も下げた。
誕生日プレゼントだから気にしなくていいんだよ。
俺達が買ってきた砂糖菓子と、フルーツを練って作った焼き菓子をテーブルに並べる。
カノンは、甘いものに合う紅茶を出してくれた。
遊びにきた子供達が教会の中にいて、カノンはずっと見守りながら仕事をしていたみたいだ。
「どうだった?創立パレード」
「もうすっごいキラキラで、バーってなってドカーンってなって!」
「それじゃあ分かんねぇだろ」
「ラウルはいつも明るいな」
カノンに褒められて、ラウルは嬉しそうに砂糖菓子を口にいれた。
「美味しいよフォルテ!」と言って、俺の口に砂糖菓子を突っ込んだ。
確かにラウルの言っていた通り、口の中に広がるちょうどいい甘さだ。
カノンにもあげようと、ラウルと同じように砂糖菓子を掴んでカノンに向けた。
そこで、手渡しをする恥ずかしさに気付いて慌てて手を引っ込めた。
カノンは小さく首を傾げて、口を開いていた。
これはしてもいいって事なんだよな、多分。
カノンの口に砂糖菓子を入れると食べた。
「確かに美味しい」
「そ、そうだよね!」
「二人共、僕達の存在忘れてない?」
ラウルの言葉に、心臓が飛び出るほど驚いた。
ラウルとユリウスの方を振り返ると、ラウルは「お腹いっぱいだよー」とにやけた顔で言っていた。
ユリウスは、何故か俺達に背を向けていて見ていない。
二人がいるのに、友人のこんな姿見たくないよな。
二人に謝って、ラウルにお返しに砂糖菓子を口に突っ込まれた。
そして、お茶会もどきは終わった。
カノンはまだ仕事があるみたいで、俺も仕事を手伝うと言った。
ラウルとユリウスには先に帰っていいよと言って、二人を教会前まで見送った。
「フォルテも帰って大丈夫だよ」
「この時間は俺が決めて使わせたから、フォルテの仕事を手伝いたい」
「フォルテがいいなら、分かった…じゃあ装飾の片付けを頼めるか」
カノンの言葉に頷いて、一緒に教会内の片付けを始めた。
外の装飾は今日一日中付けっぱなしにするみたいだ。
中だけなら、船の最終便に間に合うから良かった。
*ラウル視点*
フォルテ達と別れて、ユリウスと二人で歩いていた。
新しいゴーグルが嬉しくて、ずっとゴムを指で弄る。
隣にいたユリウスは「嬉しそうだな」と言っていた。
そりゃあ、ずっと困ってたんだからフォルテは僕の救世主だよ。
僕の……救世主?
「…?どうした?」
「えっ、あ…何でもないよ!嬉しかったから!」
「……そうか」
ユリウスはそれだけ言って、何も喋らなかった。
僕も何だか分からない、なんでさっき一瞬だけ意識が飛んだんだろう。
最近こういう事多いな。
夜更かししてロボットを作ってたから、疲れてたのかもしれない。
船着場で船を待っている時、隣のユリウスをチラッと見つめた。
ユリウスは、たまに後ろを振り返ったり下を向いて考え事をしていたりしている。
フォルテが来るのを待ってるんだよね、分かりやすい。
でも、あの時のユリウスは怒ってたし…カノンとは長い付き合いだったから仕方ないのかもしれない。
「ユリウス、ごめんね…僕のせいで…もっと早くフォルテと仲良くなれたのに」
「もうその話は終わっただろ、アイツも気にしてないって言ってたし……失った時間は戻れねぇよ」
ユリウスに頭を撫でられて、不満そうな顔をする。
乱暴だから髪が乱れて恥ずかしい髪型になってしまった。
仕返ししたいのに、ユリウスに身長が届かない。
現実を突き付けられるのは嫌だから、身長チャレンジはしない。
フォルテ達はまだ来ないみたいだから、船が来て二人だけで乗り込んだ。
またいつか皆でお喋りしながら、お菓子を食べたいな。
僕達と遅れて、一人の少年が船に乗って出発した。
海を眺めながら、ユリウスと一緒に話していた。
「あれ?ラウル?」
「え…」
後ろから声を掛けられて、後ろを振り返ると僕達の後に乗った子がいた。
名前を知っているって事は、僕の知り合い?でもこんな人知らない。
ユリウスを見ても不審そうな顔をしていて、知らなさそうだ。
ユリウスが知らないなら、僕も知らないのは当然だ。
幼少期の頃いつも一緒にいたし、学院に通ってる今もフォルテ達と部活の人達くらいしか知り合いはいない。
他に忘れている人はいなかっただろうかと、考える。
悩む僕に、その少年は笑みを浮かべている。
その姿は、とある記憶を思い出させた。
それは、いい記憶ではない…地獄のような記憶だ。
「その変なゴーグルで目、隠してんの?ラウル」
ユリウスは気付いて、眉を寄せて睨み付けていた。
僕をいじめていた少年がそこにいた。
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