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小声の俺達とは違い、カノン達は普通に話していて口を閉ざした。
足音が一つだけ遠ざかっていき、どちらが残ったのか分からない。
静かになった廊下で、ドアをノックする音だけが響いた。
「フォルテ」という声が聞こえて、慌てて教室のドアを開けた。
カノンが目の前に居て、安心して地面に座り込んだ。
良かった、これで助かった。
支えられながら立ち上がると、後ろにレオンハルトが歩いてきた。
カノンはまだ分からないから、当然フード姿を怪しんでいる。
「君のおかげで助かったよ、ありがとう」
「……えっと、何処かでお会いしましたか?」
「き、気のせいではないかな…ほら君も早く帰りなさい」
そう言って、すれ違うところでレオンハルトを見たら口元に人差し指を当てていた。
内緒って事だよな、レオンハルトにはいろいろと事情がありそうだ。
学院内はほとんど描かれていないから、それが何なのか分からない。
レオンハルトの後ろ姿を眺めていたら、カノンに「知り合い?」と聞かれた。
言ってほしくないなら、俺は何も言えないから『助けてくれた正義の味方』とだけ言った。
呆然とするカノンの腕を引いて、早く学院を出たくて堪らなくなる。
やっぱり夜の学院って怖いな、今回は幽霊的な意味ではなかったけど。
帰るには、まず職員室で鍵を返さないといけない。
「カノン、鍵を返しに行きたいんだけど」
「それならさっき先生に帰るから預かっておいてと頼まれたんだ」
カノンはそう言って鍵を握る俺の手を掴んだ。
さすがカノンだ、先生の全信頼を得ているから任されたんだな。
そのまま二人で並んで一緒に寮に向かって帰った。
レオンハルトは入学式の緊張でお腹を壊したから、夕飯はいらないと言われて俺のところに来たみたいだ。
実際は俺のところにいたから、レオンハルトは部屋にいなかった。
でも、なんで夜の学院にレオンハルトはいたんだろう……俺と同じ忘れ物か?
それにしては、フード姿で仮面なんて用意周到だよな。
考え事をしていたら、カノンが俺を突然お姫様抱っこしてきてびっくりした。
「ど、どうかした!?」
「足を怪我しているなら、ちゃんと言ってほしい」
「ご、ごめん…」
外灯がある場所に来たら、ネクタイを巻いている足を見られた。
痛みが引いてきたから自分で大丈夫かと思っていたけど、止血して誤魔化してるだけなんだよな。
ほとんど片足の感覚がなくなってるのは、ほっといたらヤバイか。
カノンと一緒に、先に寮の医務室に向かう事にした。
こんな夜遅いと島の船は来ないから、外の病院は明日にしか行けない。
設備はそこまでないが、応急措置ならやってくれる筈だ。
医務室は寮監室の隣にあって、怪我をした俺を見てすぐに寮長が医務室の部屋を開けてくれた。
ネクタイを外すと、暗くてよく見えなかったが酷い傷だった。
寮長は医者と兼用もしているから、傷口を見てくれた。
「傷口を消毒して様子を見るけど、痛かったらすぐに病院に行くんだよ」
「はい」
綺麗な包帯を巻かれて、汚れたネクタイを手にした。
紺色のネクタイだからあまり血が目立たないのが救いだ。
カノンに肩を借りて、部屋に向かって歩いていたらちょうど部屋からレオンハルトが出てきた。
何でもないような顔をして、今から食事に行くところのようだ。
レッドはいないみたいだから、俺達が同行させてもらう事になった。
足音が一つだけ遠ざかっていき、どちらが残ったのか分からない。
静かになった廊下で、ドアをノックする音だけが響いた。
「フォルテ」という声が聞こえて、慌てて教室のドアを開けた。
カノンが目の前に居て、安心して地面に座り込んだ。
良かった、これで助かった。
支えられながら立ち上がると、後ろにレオンハルトが歩いてきた。
カノンはまだ分からないから、当然フード姿を怪しんでいる。
「君のおかげで助かったよ、ありがとう」
「……えっと、何処かでお会いしましたか?」
「き、気のせいではないかな…ほら君も早く帰りなさい」
そう言って、すれ違うところでレオンハルトを見たら口元に人差し指を当てていた。
内緒って事だよな、レオンハルトにはいろいろと事情がありそうだ。
学院内はほとんど描かれていないから、それが何なのか分からない。
レオンハルトの後ろ姿を眺めていたら、カノンに「知り合い?」と聞かれた。
言ってほしくないなら、俺は何も言えないから『助けてくれた正義の味方』とだけ言った。
呆然とするカノンの腕を引いて、早く学院を出たくて堪らなくなる。
やっぱり夜の学院って怖いな、今回は幽霊的な意味ではなかったけど。
帰るには、まず職員室で鍵を返さないといけない。
「カノン、鍵を返しに行きたいんだけど」
「それならさっき先生に帰るから預かっておいてと頼まれたんだ」
カノンはそう言って鍵を握る俺の手を掴んだ。
さすがカノンだ、先生の全信頼を得ているから任されたんだな。
そのまま二人で並んで一緒に寮に向かって帰った。
レオンハルトは入学式の緊張でお腹を壊したから、夕飯はいらないと言われて俺のところに来たみたいだ。
実際は俺のところにいたから、レオンハルトは部屋にいなかった。
でも、なんで夜の学院にレオンハルトはいたんだろう……俺と同じ忘れ物か?
それにしては、フード姿で仮面なんて用意周到だよな。
考え事をしていたら、カノンが俺を突然お姫様抱っこしてきてびっくりした。
「ど、どうかした!?」
「足を怪我しているなら、ちゃんと言ってほしい」
「ご、ごめん…」
外灯がある場所に来たら、ネクタイを巻いている足を見られた。
痛みが引いてきたから自分で大丈夫かと思っていたけど、止血して誤魔化してるだけなんだよな。
ほとんど片足の感覚がなくなってるのは、ほっといたらヤバイか。
カノンと一緒に、先に寮の医務室に向かう事にした。
こんな夜遅いと島の船は来ないから、外の病院は明日にしか行けない。
設備はそこまでないが、応急措置ならやってくれる筈だ。
医務室は寮監室の隣にあって、怪我をした俺を見てすぐに寮長が医務室の部屋を開けてくれた。
ネクタイを外すと、暗くてよく見えなかったが酷い傷だった。
寮長は医者と兼用もしているから、傷口を見てくれた。
「傷口を消毒して様子を見るけど、痛かったらすぐに病院に行くんだよ」
「はい」
綺麗な包帯を巻かれて、汚れたネクタイを手にした。
紺色のネクタイだからあまり血が目立たないのが救いだ。
カノンに肩を借りて、部屋に向かって歩いていたらちょうど部屋からレオンハルトが出てきた。
何でもないような顔をして、今から食事に行くところのようだ。
レッドはいないみたいだから、俺達が同行させてもらう事になった。
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