最強悪役令息が乙女ゲーで100人攻略目指します

ゆで大福

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新入生

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「えー、それでは新入生の入学式を始めます」

新しい学年に変わり、少しだけ大人になった気分だ。
理事長の長い話にうとうとしそうになって、肩を揺すられた。
隣にいるユリウスは小さな声で「立ちながら寝るな」と言っていた。

昨日は荷物の整理で時間が掛かったから、あまり寝ていない。

普通は入学して三年間、寮部屋は変わらない。
でも俺とカノンだけ変わる事になった。

実はカノンは、二年生から特別科のクラスに行く事になった。
二年生への昇級試験の結果が良かったのかカノンは「間違えた」と言っていた。
間違えたら特別科のクラスに行くほど点数が良くなるのか?よく分からない。

寮部屋は普通科のエリアだから、カノンが引っ越すのは分かる。
でも、なんで俺も引っ越すかというと理由がある。

今回特別科にはVIPな生徒が入学してくる。
そのため、二年生と三年生の中でより信頼出来る生徒が一人選ばれる。
三年生は誰か分からないが、二年生にはカノンが選ばれた。

問題を起こして謹慎処分になったが、カノンは一年間で優秀な生徒になっていた。
先生の信頼もすぐ回復して、手伝いも積極的にやっていた。

カノンからしたら、償いなんだ。
俺も頑張って手伝っていたが、成績までは優秀になれなかった。

カノンとカノンが信頼する生徒の一人を助手に選べる。
カノンは真っ先に俺を選んでくれて嬉しかった。

向こうの三年生は助手共々特別科だから、最初先生はいい顔をしなかった。
でも、カノンと一緒に頑張っていた努力が実り認めてくれた。

とはいえ、特別科に通う事は出来なくて校舎には自由に入れる許可だけもらった。
寮は特別科のフロアに住む事が出来る。
VIP生徒になにかあった時のために、傍にいる事が必要だ。

VIP生徒が誰か分からないが、確かに危ない事もあったなと身を持って知った。
俺のこの力が役立てればいいなと、指先に少し力を入れると火が出てきた。

火を消すと、周りがザワザワと騒がしくなっていた。
去年の入学式とは違い、興奮しているのが伝わる。

男子部の入学式だから、絶世の美女がいたわけでもないのになんだ?

もしかして、VIPの新入生の事?新入生は入学式まで誰も知らない。
だから俺もカノンも知らない、いったい誰だろう。

講堂のステージを見ると、新入生代表として一人の少年が立っていた。
ライトに照らされて、銀色の髪がキラキラと輝いていた。

「新入生代表、レオンハルト・ライハートです」

そのオーラは一般人とは違うものだった。

このキャラクター、ゲームでいた事を思い出した。

レオンハルトはこの国の四人の王子の一人だ。
なるほど、王族ならVIPなのも頷ける。
攻略キャラクターとして、癖のある王子達の中で一番真面目で常識人だった。

王子は誰か一人攻略すると、その人が次期王様になるエンディングを迎えた。

今はまだ誰が次期王様かは分からない。

でも、入学するだけなのに大変だな…あらゆる危険を考えないといけないから。
100人攻略って、あの王子も入ってるよな…先が思いやられるな。

そして入学式が終わり、俺はユリウスと後から合流したラウルと歩いていた。

「いやぁ、凄かったねぇ王子様」

「そうか?よく国の創立パレードで見るだろ」

「ユリウスは分かってないねぇ、パレードなんて人が多すぎて遠くからしか見れないよ!」

ラウルの言う通り、パレードは国民のほとんどが沸き立っているから入学式よりも人の波が凄くて、見る事が出来ない。
俺も見れないから、最初から見るの諦めていて見た事がない。

今年は見ようかな、見れるかは運だけど。

二人は去年見ていたんだ、あまり姿が見えなかったみたいだけど…

今年のクラスはラウルも同じクラスになって、皆で話しながら歩いていた。
カノンも一緒なら良かったが、特別科は遠いからな。

ユリウスは俺の顔をジッと見つめている事に気付いた。
俺の顔になにかついてる?

「どうしたのユリウス」

「いや、恋人と離れて寂しいのかと思っただけだ」

「寂しいけど、ずっと会えないわけじゃないけど」

「……そうか」

ユリウスは気遣ってくれているのは分かるが、なんでいつもなにか言いたげの顔をしてるんだろう。
はっきり言ってくれればいいけど、下手な事を言うとユリウスは命令だと思うからな。
まだ、ユリウスの償いは続いていて、何度ももう大丈夫だと言ったんだけどな。

ラウルを見たら、ラウルも分からないのか首を傾げていた。

一年前の今、ユリウスに殴られた事を思い出した。
まさか、仲良く歩く仲になるなんて思わなかった。
友達がこんなに出来るなんて、嬉しいな。

教室に行って荷物を取りに行こうと思っていたら、後ろから声を掛けられた。

「フォルテ」

「あっ、カノン!」

後ろを振り返るとカノンが歩いてきていて、この前まで一緒にいたのに別次元の人に見えた。
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