最強悪役令息が乙女ゲーで100人攻略目指します

ゆで大福

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ラウルの気持ち.

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3「えっと、君だけでも俺が突き飛ばしたって誤解を解きたいんだけど、分かってくれた?」

ユリウスに伝えるのはタイミングがある、それを逃すと今度こそ話を聞いてくれなくなる。
だから先にラウルに俺じゃなかったと知ってほしい、ラウルも俺がやったと思っていたし…

真実は突き飛ばしたのは誰でもなかったんだ、ラウルだって悪かったわけではない。
ユリウスにはラウルが穴を掘った事は言わないつもりだ。
言わないと説明にならないかもしれないけど、そこはラウルにも協力してもらいたい。

言わなくてもラウルが俺は突き飛ばしてないと言えば信じるかもしれない。

俺の話は聞かなくても、ラウルの話なら聞いてくれる。

ラウルにその話をしたかったが、ラウルは俺達を見る事はなかった。
なにか言う事なく、その場を走って行ってしまった。

すぐにラウルを追いかけようと走り出そうとした。
ユリウスのように自分を追い込んで、心を閉ざしていないか不安だった。

でもカノンに呼び止められて、その足は行き先を失った。

「友人を傷付けたかもしれないときっと彼は心を痛めているから、一人にさせた方がいい」

「責めるつもりじゃなくても、責めているように見えたかもしれない」

「それが真実なら、隠しても誰も救われない」

ラウルのタイミングに合わせるか、少しくらいならユリウスから逃げまくればなんとかなる。
同じ学院だから、ラウルとはいつでも会う事は出来る。

カノンの言葉に小さく頷いて、これからどうしようかと考えていたら、鼻がむずむずしてきた。

くしゃみをすると、身体が震え出して服が濡れている事を思い出した。

寒いし頭がボーッとするから先に着替える事にしよう。
足がフラフラするからカノンに支えられて、実家まで帰ってきた。

母さんが「おかえり」と言っていたが、軽く返事をするだけで自分の部屋に入った。

床に服を置いたら濡れるから、手頃な籠を置いて脱いだ。
クローゼットから服を出して、着替えると座り込んだ。

なんだろう、なにかする気力がなくなる…頭も重い。

部屋のドアがノックされて、外側から母さんの声が聞こえた。
そうだ、外にカノンが待っているんだ…早く行かないと…

足に力を入れて立ち上がろうとして、床が滑って派手に転んだ。
視界がぐるぐる回っている、ヤバい…一歩も動けない。
目蓋が重くて、寝たくないのに睡魔が襲ってきて気絶するように眠った。






「完全に風邪だね」

「…あれ?」

「目が覚めた?」

目が覚めたら、暖かいものに身体が包まれていた。
床に寝ていた筈なのに、いつの間にかベッドの上で寝ていた。

隣にいるカノンは銀色の容器に手を入れて、布を絞っていた。
それを俺の頭に乗せると、ひんやりとして気持ちいい。

そっか、風邪引いたのか…まだ暖かくなり始めただけで湖の水にダイブしたから当然と言われたら当然だ。

カノンに「フォルテのお母様が作った粥は食べれる?」と聞いてきたから首を縦に振った。
俺の言葉に、カノンは部屋を出ていった…きっと粥を取りに行ってくれたんだ。

友達に看病させて申し訳ないな、カノンだってせっかく帰ってきて行きたいところがあった筈なのに。

トレイに粥を乗せてカノンがやってきて、サイドテーブルに粥の入った器を置いた。

「カノン、ごめんな…看病させて、もう大丈夫だから」

「私がしたい事だから気にしなくていい、フォルテの看病をしたいとフォルテのお母様に頼んだのも私だ」

そう言ったカノンは粥をスプーンで掬い、フーフーと冷ましてくれた。
そこまでやってくれるなんて、カノンは友達想いだ。

いや、それすらも越えた神のような存在だ…さすが聖職者だ。

一口食べると、全く味がない…風邪を引いてるからか。

でも、薬も用意してくれたから食べないとなとトレイに一緒に乗った粉薬を見つめた。
味がなくて、変な食感しかないが全部食べきった。

粉薬を口に入れて、コップに入った水で一気に流し込んだ。
普段は苦い薬が味覚がないから、それは良かった。

「今日は島に帰るのをやめて大人しくしてて、明日も休んだ方がいい」

「ダメッ!ゴホゴホ…ラウルとユリウスの事、長引かせたらダメ…ぅ、だから」

「無理に喋らないで、分かったから」

カノンに寝かされて、ボーッと真っ白な天井を眺める。

時間が長ければ長いほど、俺達の溝は深まっていく。
一日でも長引かせたらダメだ、這いつくばってでも学院に行くぞ。

布を額に置いてくれて、今日は大人しく家にいるとカノンに伝えると「学院には私から言っておくよ」と言ってくれた。

でも、明日の朝イチに出発する船で島に帰るつもりだ。

俺が頑固だと分かったのか、カノンは少し待っててと言って部屋を出ていった。
カノンが去った扉をジッと見つめていて、視界に籠が映った。
小さな籠の中に、俺が脱いだ洗濯物が溢れんばかりに入っていた。

俺が倒れる前に入れたから、入っているのは当たり前だ。
でもあれ、俺の記憶が正しければゴミ箱だったような。

そこから熱で可笑しくなっていたのか、恥ずかしい。

カノンは少ししたら戻ってきて、息を切らしていた。

「走ってこなくてもいいのに」

「はぁ、そういうわけにもいかない」

そう言ってカノンが見せてくれたのは、真っ赤な丸い木の実みたいなものだ。
解熱作用がある不思議な木の実で、貴重なもののようだ。

わざわざ司祭様にお願いして、一粒譲ってもらったみたいだ。

カノン、やっぱり俺にとってミッシェルよりも神様だ!

それを噛みしめながら食べて、大人しく眠り体力を回復した。

カノンの木の実のおかげで、翌日…見違えるくらい元気になった。
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