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病室の中
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ーーー
「ん…んー…」
チュンチュンと鳥の囀ずりが聞こえてきて、温かな風が髪に触れる。
ボーッと天井を眺めていて、完全に目が覚めるまで時間が掛かった。
手を見つめていて、人差し指に集中すると炎が出現した。
こんな事、今までなかったのに…悪役フォルテが目覚めたからか。
勢いよく起き上がり、両手を眺めていたら隣から大きな音が聞こえた。
隣を見ると、隣の人が地面に倒れていてビックリした。
いきなり起き上がったからビックリさせてしまった。
倒れた人を助けようと思って、近付いてしゃがんだ。
「大丈夫ですか……あれ、カノン?」
「うっ、ごめん…すぐ出ていくから」
「いきなりどうしたの?」
よく分からないが、カノンは記憶の中で足を怪我していた。
俺の出した炎で火傷もしていたけど、火傷は軽そうで良かった。
肩を貸してベッドに座らせて、床に落ちている杖を掴んだ。
カノンを見ているが、ずっと俺の顔を見ていない。
あんな事させたから、嫌な気持ちにさせたよな…ごめん。
杖をカノンに渡して立ち上がって、カノンの前に立つと驚いて俺を見てくれた。
あんな記憶の中より、実物のカノンを見た方がいい。
カノンの手を握るのは遠慮して、両手を前に出すだけにした。
「ごめん、俺が迷惑掛けて…もうあんな事は二度と起こさないから」
「フォルテの意思じゃないのは分かってる」
「ありがとう、俺じゃないって気付いてくれて…助けてくれてありがとう」
カノンは、俺の言葉に不思議そうな顔をしていた。
助けてくれた事にお礼を言っただけなのに、なんでそんな顔をしているんだ?
カノンは「昨日の事覚えてないの?」と聞いてきた。
昨日とは多分、俺の力が暴走してしまったあの日の事だ。
ミッシェルに見せてもらったから、全部覚えている。
普通に頷くと、カノンはまた下を向いてしまった。
好きでもない男とキスはカノンにとってトラウマだよな。
『私はフォルテが好きだよ、誰よりも君を愛してる』
カノンが俺に言ってくれた言葉が頭の中に響いた。
「俺は、嫌じゃなかったよ…キス」
「…っ」
「カノンの事、嫌じゃない」
カノンは顔を上げて目を見開いて、俺の方を見つめていた。
カノンは誰を助けるためでも、嘘をついたりしない。
俺にまっすぐ言ってくれた言葉は、カノンの本心なんだ。
そして、キスをされて…初めて男とキスをしたのに、全然嫌ではなかった。
これだけはミッシェルの言った通り、いつの間にかカノンに攻略されていたんだ。
辛い事があれば、俺も半分背負い込む覚悟はある。
半端な気持ちでそう言っているわけではないんだ。
俺を好きになってくれる攻略キャラクターなんていないと思っていた。
でも、俺を好きになってくれる人がいて…俺もカノンを好きになった。
恋愛慣れしていなくても、この気持ちが友情ではない事くらい分かる。
友達としか思っていない相手にキスされても嬉しい筈がない。
キスそのものは俺を助けるためでも、気持ちに嘘はない。
だからこそ、俺はカノンに内緒にする事は出来ない。
こんな事を言ったら、俺への愛が冷めてしまうかもしれない。
友情にも戻れない、俺はまた一人になるかもしれない。
なにかのきっかけで、死亡フラグが成立するかもしれない。
『それでいいの?彼は攻略不可キャラクターになっちゃうよ』
ミッシェルが俺の脳内に語り掛けるが、心は揺らがなかった。
それでも俺は、言うよ。
不安に揺れるカノンの瞳をまっすぐに見つめた。
これから言う事は、カノンにとって理解できない話だ。
でも、これが俺の真実なんだ。
俺は100人の相手と恋愛する事を伝えた。
それが、俺の中のアイツを抑え込む唯一の方法。
カノンもその瞬間をキスを通して見ていたから、そこは信用してくれている。
理由はどうであれ、俺は100人と向き合って全員大好きで愛している気持ちで接する事を話した。
カノンは目を見開きながら聞いていたが、話が追い付いていないみたいだ。
「ん…んー…」
チュンチュンと鳥の囀ずりが聞こえてきて、温かな風が髪に触れる。
ボーッと天井を眺めていて、完全に目が覚めるまで時間が掛かった。
手を見つめていて、人差し指に集中すると炎が出現した。
こんな事、今までなかったのに…悪役フォルテが目覚めたからか。
勢いよく起き上がり、両手を眺めていたら隣から大きな音が聞こえた。
隣を見ると、隣の人が地面に倒れていてビックリした。
いきなり起き上がったからビックリさせてしまった。
倒れた人を助けようと思って、近付いてしゃがんだ。
「大丈夫ですか……あれ、カノン?」
「うっ、ごめん…すぐ出ていくから」
「いきなりどうしたの?」
よく分からないが、カノンは記憶の中で足を怪我していた。
俺の出した炎で火傷もしていたけど、火傷は軽そうで良かった。
肩を貸してベッドに座らせて、床に落ちている杖を掴んだ。
カノンを見ているが、ずっと俺の顔を見ていない。
あんな事させたから、嫌な気持ちにさせたよな…ごめん。
杖をカノンに渡して立ち上がって、カノンの前に立つと驚いて俺を見てくれた。
あんな記憶の中より、実物のカノンを見た方がいい。
カノンの手を握るのは遠慮して、両手を前に出すだけにした。
「ごめん、俺が迷惑掛けて…もうあんな事は二度と起こさないから」
「フォルテの意思じゃないのは分かってる」
「ありがとう、俺じゃないって気付いてくれて…助けてくれてありがとう」
カノンは、俺の言葉に不思議そうな顔をしていた。
助けてくれた事にお礼を言っただけなのに、なんでそんな顔をしているんだ?
カノンは「昨日の事覚えてないの?」と聞いてきた。
昨日とは多分、俺の力が暴走してしまったあの日の事だ。
ミッシェルに見せてもらったから、全部覚えている。
普通に頷くと、カノンはまた下を向いてしまった。
好きでもない男とキスはカノンにとってトラウマだよな。
『私はフォルテが好きだよ、誰よりも君を愛してる』
カノンが俺に言ってくれた言葉が頭の中に響いた。
「俺は、嫌じゃなかったよ…キス」
「…っ」
「カノンの事、嫌じゃない」
カノンは顔を上げて目を見開いて、俺の方を見つめていた。
カノンは誰を助けるためでも、嘘をついたりしない。
俺にまっすぐ言ってくれた言葉は、カノンの本心なんだ。
そして、キスをされて…初めて男とキスをしたのに、全然嫌ではなかった。
これだけはミッシェルの言った通り、いつの間にかカノンに攻略されていたんだ。
辛い事があれば、俺も半分背負い込む覚悟はある。
半端な気持ちでそう言っているわけではないんだ。
俺を好きになってくれる攻略キャラクターなんていないと思っていた。
でも、俺を好きになってくれる人がいて…俺もカノンを好きになった。
恋愛慣れしていなくても、この気持ちが友情ではない事くらい分かる。
友達としか思っていない相手にキスされても嬉しい筈がない。
キスそのものは俺を助けるためでも、気持ちに嘘はない。
だからこそ、俺はカノンに内緒にする事は出来ない。
こんな事を言ったら、俺への愛が冷めてしまうかもしれない。
友情にも戻れない、俺はまた一人になるかもしれない。
なにかのきっかけで、死亡フラグが成立するかもしれない。
『それでいいの?彼は攻略不可キャラクターになっちゃうよ』
ミッシェルが俺の脳内に語り掛けるが、心は揺らがなかった。
それでも俺は、言うよ。
不安に揺れるカノンの瞳をまっすぐに見つめた。
これから言う事は、カノンにとって理解できない話だ。
でも、これが俺の真実なんだ。
俺は100人の相手と恋愛する事を伝えた。
それが、俺の中のアイツを抑え込む唯一の方法。
カノンもその瞬間をキスを通して見ていたから、そこは信用してくれている。
理由はどうであれ、俺は100人と向き合って全員大好きで愛している気持ちで接する事を話した。
カノンは目を見開きながら聞いていたが、話が追い付いていないみたいだ。
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