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薄暗い倉庫
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薄暗くて何処にいるのか分からないが、助けてくれた人に「ありがとうございます」とお礼を言った。
その人は、俺の言葉を聞いているのかいないのか倉庫の中でなにかを探していた。
大きな音を立てて真剣だったから、俺は邪魔しない方がいいよな。
そーっと倉庫から出ようとしたら、その人は大きい声を出していた。
びっくりして、物につまずいてまた派手に転んだ。
ちょっと足を挫いてしまって、ズキズキと痛みが走る。
「あった!これだよこれ、最高級品のパーツ」
「…いてて」
「それで、なんで君ここにいるの?」
今気付いたのか、不思議そうな声が聞こえてきた。
よく見てみたら、両手にガラクタを抱えたユリウスの幼馴染みであるラウルが俺を見ていた。
なるほど、ラウルだからユリウスが簡単に信じたのか。
こんなところで何をしているのか分からなかった。
俺を無意識で助けたような感じになったが、ラウルは今俺がいるのに気付いた様子だった。
ラウルはユリウスの親友だ、もしかしたら引き渡される危険もある。
警戒して何も言わない俺にラウルの顔が不審そうに変わり、慌てて説明をした。
企みもない怪しいものじゃない事は分かってもらいたい。
「へぇー」「ふーん」という聞いているのかいないのか分からない気の抜けた声を出していた。
さすがユリウスの幼馴染みだ、ユリウスが人を殺すと言っても全く動じてない。
それどころか、ユリウスの俺に抱く憎悪に仕方ないと言いたげな顔をしていた。
ラウルはずっとユリウスと一緒にいるから、俺よりも理解しているんだろう。
未来の事は俺の方が分かるが、今大事なのは過去のユリウスだ。
ゲームで語られていないユリウスはラウルの方が分かっている。
ユリウスをどうにかしたいけど、それよりも俺はラウルにも話があるんだ。
それが、ユリウスの事故の真相を知る事と繋がっている。
なにかヒントがあれば、ユリウスを誰が突き飛ばしたか分かる。
「君に聞きたい事があるんだ!」
「何?言っておくけどユリウスを止めるのは僕でも無理だから」
「ユリウスが湖にいた時、君もいたよね!」
俺の言葉にキョトンとした顔をしていて、ラウルは首を傾げていた。
ラウルがユリウスのあの殺気を止められるとは思っていない。
ゲームでも武力派ではなく頭脳派の機械オタクだったからね。
頷くまで、少しの時間が掛かったが頷いてくれたところで話を続けた。
ユリウスが誰かに突き飛ばされたのを見ていないか聞いた。
ユリウスに真相を話していないなら、知っているとは思えないがとりあえず聞いてみた。
何でもいい、なにか違和感があった筈なんだ…じゃないとユリウスは湖に落ちない。
ラウルの答えは知らないと思っていただけに、ラウルの言葉に驚いた。
「見てたよ」
「えっ!?だ、誰だった!?」
「君」
「俺は突き落としてない!」
ラウルが俺を指差して、そんな事を言うから声を上げた。
ユリウスがそう見えたならラウルもそう見えるのかもしれない。
でもそれは真実ではない、ラウルの話からして知らないのか?
「うーん、そうだっけ?」
「覚えてないのか?」
「あの時蛇にびっくりして腰を抜かしてたからユリウスまで見てないよ」
「……それは、ごめん」
「ユリウスがフォルテがーフォルテがー言うからそうかと思った」
ラウルはケラケラ笑っていて、他人事の笑い話のようだ。
俺も命さえ狙われていなかったら同じだったかもなと、また倉庫のガラクタを物色しているラウルを見つめた。
ラウルも知らないなら残るはスピカだけど、俺の記憶ではスピカもラウルのようにびっくりしていた。
ユリウスまで見ているかと言われたら微妙なものだ。
それに女子校舎に入るのは簡単ではなく、友人でもない俺にスピカが会ってくれるわけがない。
やっぱり、本人しか真実が分からないって事なのか。
何も手がかりが見つからないまま、またふりだしに戻ってしまった。
邪魔して悪かった、と言って倉庫を出ようとした。
外の方で足音が聞こえて、扉に伸ばした腕を止めた。
もしかしてユリウスが戻ってきたのか、慌てて奥の方に向かった。
棒のようなものに足が持っていかれて、またまた転んだ。
口を閉ざして耳をすまして、相手の行動を慎重に探る。
足音と共に笑い声が聞こえてきて、しばらくすると去っていった。
どうやらユリウスではなく、知らない人だったようでホッと胸を撫で下ろす。
もう、さすがにユリウスはいないよな…俺の心臓が持たない。
ずっと同じ事を繰り返していたら、倉庫から出られなくなる。
このままここに住むしかなくなるのか、それは避けたい。
「フォルテくんってば、大胆なんだから」
「え?……あああごめんっ!!」
下の方からラウルの楽しそうな声が聞こえて、下の方を向いた。
ラウルを押し倒している格好になって、顔を覆って照れている仕草をしている。
ユリウスは誤解だが、これは完全に俺がしてしまった事だから慌ててラウルから離れようとした。
その瞬間、カシャという機械音と目の前が眩しくなった。
その人は、俺の言葉を聞いているのかいないのか倉庫の中でなにかを探していた。
大きな音を立てて真剣だったから、俺は邪魔しない方がいいよな。
そーっと倉庫から出ようとしたら、その人は大きい声を出していた。
びっくりして、物につまずいてまた派手に転んだ。
ちょっと足を挫いてしまって、ズキズキと痛みが走る。
「あった!これだよこれ、最高級品のパーツ」
「…いてて」
「それで、なんで君ここにいるの?」
今気付いたのか、不思議そうな声が聞こえてきた。
よく見てみたら、両手にガラクタを抱えたユリウスの幼馴染みであるラウルが俺を見ていた。
なるほど、ラウルだからユリウスが簡単に信じたのか。
こんなところで何をしているのか分からなかった。
俺を無意識で助けたような感じになったが、ラウルは今俺がいるのに気付いた様子だった。
ラウルはユリウスの親友だ、もしかしたら引き渡される危険もある。
警戒して何も言わない俺にラウルの顔が不審そうに変わり、慌てて説明をした。
企みもない怪しいものじゃない事は分かってもらいたい。
「へぇー」「ふーん」という聞いているのかいないのか分からない気の抜けた声を出していた。
さすがユリウスの幼馴染みだ、ユリウスが人を殺すと言っても全く動じてない。
それどころか、ユリウスの俺に抱く憎悪に仕方ないと言いたげな顔をしていた。
ラウルはずっとユリウスと一緒にいるから、俺よりも理解しているんだろう。
未来の事は俺の方が分かるが、今大事なのは過去のユリウスだ。
ゲームで語られていないユリウスはラウルの方が分かっている。
ユリウスをどうにかしたいけど、それよりも俺はラウルにも話があるんだ。
それが、ユリウスの事故の真相を知る事と繋がっている。
なにかヒントがあれば、ユリウスを誰が突き飛ばしたか分かる。
「君に聞きたい事があるんだ!」
「何?言っておくけどユリウスを止めるのは僕でも無理だから」
「ユリウスが湖にいた時、君もいたよね!」
俺の言葉にキョトンとした顔をしていて、ラウルは首を傾げていた。
ラウルがユリウスのあの殺気を止められるとは思っていない。
ゲームでも武力派ではなく頭脳派の機械オタクだったからね。
頷くまで、少しの時間が掛かったが頷いてくれたところで話を続けた。
ユリウスが誰かに突き飛ばされたのを見ていないか聞いた。
ユリウスに真相を話していないなら、知っているとは思えないがとりあえず聞いてみた。
何でもいい、なにか違和感があった筈なんだ…じゃないとユリウスは湖に落ちない。
ラウルの答えは知らないと思っていただけに、ラウルの言葉に驚いた。
「見てたよ」
「えっ!?だ、誰だった!?」
「君」
「俺は突き落としてない!」
ラウルが俺を指差して、そんな事を言うから声を上げた。
ユリウスがそう見えたならラウルもそう見えるのかもしれない。
でもそれは真実ではない、ラウルの話からして知らないのか?
「うーん、そうだっけ?」
「覚えてないのか?」
「あの時蛇にびっくりして腰を抜かしてたからユリウスまで見てないよ」
「……それは、ごめん」
「ユリウスがフォルテがーフォルテがー言うからそうかと思った」
ラウルはケラケラ笑っていて、他人事の笑い話のようだ。
俺も命さえ狙われていなかったら同じだったかもなと、また倉庫のガラクタを物色しているラウルを見つめた。
ラウルも知らないなら残るはスピカだけど、俺の記憶ではスピカもラウルのようにびっくりしていた。
ユリウスまで見ているかと言われたら微妙なものだ。
それに女子校舎に入るのは簡単ではなく、友人でもない俺にスピカが会ってくれるわけがない。
やっぱり、本人しか真実が分からないって事なのか。
何も手がかりが見つからないまま、またふりだしに戻ってしまった。
邪魔して悪かった、と言って倉庫を出ようとした。
外の方で足音が聞こえて、扉に伸ばした腕を止めた。
もしかしてユリウスが戻ってきたのか、慌てて奥の方に向かった。
棒のようなものに足が持っていかれて、またまた転んだ。
口を閉ざして耳をすまして、相手の行動を慎重に探る。
足音と共に笑い声が聞こえてきて、しばらくすると去っていった。
どうやらユリウスではなく、知らない人だったようでホッと胸を撫で下ろす。
もう、さすがにユリウスはいないよな…俺の心臓が持たない。
ずっと同じ事を繰り返していたら、倉庫から出られなくなる。
このままここに住むしかなくなるのか、それは避けたい。
「フォルテくんってば、大胆なんだから」
「え?……あああごめんっ!!」
下の方からラウルの楽しそうな声が聞こえて、下の方を向いた。
ラウルを押し倒している格好になって、顔を覆って照れている仕草をしている。
ユリウスは誤解だが、これは完全に俺がしてしまった事だから慌ててラウルから離れようとした。
その瞬間、カシャという機械音と目の前が眩しくなった。
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