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カノンとフォルテの結末.
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19全身が焼けるように熱くなり、意識が戻る。
俺の目の前には信じられない光景が広がっていた。
いつもお祈りをしている教会が燃えている。
外からは人の叫び声が聞こえる。
見慣れた筈なのに、変わり果てた街がそこに存在していた。
眠っていたのは一瞬の筈なのに、いったいこの短時間でなにが起きたんだ?
俺の目の前には、大人の姿になったカノンがいた。
カノンの身体には血が付いていて、傷付いていた。
近付けなかったのは殺伐とした雰囲気だからではなく、実際に足が前に動けない。
声を掛けたくても、自由に声を出す事が出来ない。
そういえば、意識を失う前にミッシェルが『追体験』と言っていた。
これは、ゲームの世界が現実に起こった時の光景なのか。
俺の意思とは反対に、勝手に身体が動く。
これは、俺ではなくフォルテの記憶の中の出来事だ。
血で濡れた剣をカノンに向けていた。
「貴方は何故、神に逆らうのですか」
「神?そんなものが居たら見てみたいね」
「止まらないと言うなら、私が止めます」
「お前のような奴、ムカつくんだよ…正義ぶっているようなお前ら偽善者が!!」
カノンに向かって、剣を振り上げていた。
いろんな感情が頭に流れ込んできた。
それは、悲しみ…憎しみ…絶望感が支配している。
苦しい…ゲームでのフォルテはこんな気持ちでいたのか?
カノンを傷付けたくはないのに、振り下ろす腕は止まらない。
肩に剣が刺さり血が溢れてきて、カノンの身体能力なら避ける事も出来た筈だ。
それでも、避ける素振りはなかった。
俺との距離がゼロになる。
腹部にじんわりとしたものが広がっていく。
息が出来ない、痛い…俺、死ぬのか?
「神は貴方を許さない、貴方は多くの人の命を奪った」
「…ぅっ、ぐっ…」
「私も神ではない、人を殺める行為は貴方と変わらない……救われる命が一つでもあるなら、私は悪魔にもなれる」
俺は最後の力を振り絞り、抵抗するようにカノンに手を出そうとしていた。
その時、教会が眩い光に包まれた。
まるで神が降りてきたかのように神々しい光だった。
雷が落ちて、カノンの剣に力を与えた。
そのまま俺の身体は焼けていく。
カノンが俺を殺す覚悟が見えた。
聖職者なのに、悪魔になる覚悟は半端な気持ちではなれない。
最後に見たのは、カノンに駆け寄る女性がいた。
黒髪の綺麗な見知らぬ子、あの子がカノンの好きな人か。
俺は、この日で二度目の死を経験した。
カノンにこんな気持ちにさせた自分が許せない。
自分の嫌な気持ちも残っていて、ぐちゃぐちゃな感情になる。
フォルテは一人で、こんな気持ちを抱えていたんだ。
「これが君の未来だよ」
「……誰?」
真っ暗な意識の中、俺に声を掛ける人がいた。
腰まで長い薄い金髪の青年だ。
その人の周りだけ色がある、神々しいオーラをまとっていた。
俺を見下ろしていて、その声には聞き覚えがあった。
もしかして、ミッシェル?
声しか知らないから、半信半疑で恐る恐る聞いてみる。
俺の質問には答えない…それが答えのようだった。
相変わらず俺を無視するところも本人にそっくりだ。
俺の頭の中だから、手のひらを見ようにも俺の姿はないから見えない。
いつもの脳内にミッシェルの姿が追加されたようだ。
神様のように人間離れした美しい容姿だけど、怖くもあった。
いつもの明るい声とは掛け離れたような感情がない顔だからだろうか。
無言で俺を見つめて、その声は冷たく棘のあるものだった。
「君が信じていた友人は君が道を踏み外したら、ためらいなく君を殺す」
「俺は道を踏み外さない、ゲームとは違う結末に変わろうとしているんだ」
「変わらないよ、この世界はゲームと同じ結末を辿るようになっている、君が必死に変えようとしても世界が修正に入る…まだゲームは始まっていないからね」
「ゲームに抗う方法は、フォルテがどのルートでも手に入れる事が出来なかったもの」とミッシェルは呟いた。
俺が手に入らなかったもの…それが恋愛なのか。
裏切られたとはいえ、友人はいたから手に入れる事が出来なかったとは言えない。
偽りでも、友人なのは変わりない。
ミッシェルは「君を救う気持ちに偽りはないよ」と言っていた。
このままミッシェルがいなかったら、俺は本当に友人関係のまま殺されていたのかもしれない。
カノンがそんな事をする筈はないと、まだ少しそう思う気持ちは消えていない。
だけど、俺が見たカノンもそういう事をするカノンではなかった。
俺が世界の修正に負けて、悪役となった瞬間にカノンはきっとあの時のように俺を殺すだろう。
「もしかして、子供の頃…皆に嫌われたのも…」
「普通、嫌なものを見せても悪意がないならあそこまで嫌われると思う?」
「……おれ、は…」
ゲームが始まる前に、きっとまた悪役になる修正が始まる。
俺の知らないところで、俺が悪さをしている。
言葉は通じない、通じるのは行動だけだ。
あの時俺は、殺されて何を思ったんだろう。
この気持ちからして、憎しみのまま死んでいったんだ。
そんな結末嫌だ、死ぬなら人生の悔いがない死に方をしたい。
ミッシェルの姿がだんだん遠くなっていき、再び暗闇に包まれた。
最後に聞こえた言葉は、はっきりと脳内に焼き付いている。
「信じられるのは自分の行動だけ、世界がゲーム通りに進む道を用意するなら外れる勇気も必要だよ」
俺の目の前には信じられない光景が広がっていた。
いつもお祈りをしている教会が燃えている。
外からは人の叫び声が聞こえる。
見慣れた筈なのに、変わり果てた街がそこに存在していた。
眠っていたのは一瞬の筈なのに、いったいこの短時間でなにが起きたんだ?
俺の目の前には、大人の姿になったカノンがいた。
カノンの身体には血が付いていて、傷付いていた。
近付けなかったのは殺伐とした雰囲気だからではなく、実際に足が前に動けない。
声を掛けたくても、自由に声を出す事が出来ない。
そういえば、意識を失う前にミッシェルが『追体験』と言っていた。
これは、ゲームの世界が現実に起こった時の光景なのか。
俺の意思とは反対に、勝手に身体が動く。
これは、俺ではなくフォルテの記憶の中の出来事だ。
血で濡れた剣をカノンに向けていた。
「貴方は何故、神に逆らうのですか」
「神?そんなものが居たら見てみたいね」
「止まらないと言うなら、私が止めます」
「お前のような奴、ムカつくんだよ…正義ぶっているようなお前ら偽善者が!!」
カノンに向かって、剣を振り上げていた。
いろんな感情が頭に流れ込んできた。
それは、悲しみ…憎しみ…絶望感が支配している。
苦しい…ゲームでのフォルテはこんな気持ちでいたのか?
カノンを傷付けたくはないのに、振り下ろす腕は止まらない。
肩に剣が刺さり血が溢れてきて、カノンの身体能力なら避ける事も出来た筈だ。
それでも、避ける素振りはなかった。
俺との距離がゼロになる。
腹部にじんわりとしたものが広がっていく。
息が出来ない、痛い…俺、死ぬのか?
「神は貴方を許さない、貴方は多くの人の命を奪った」
「…ぅっ、ぐっ…」
「私も神ではない、人を殺める行為は貴方と変わらない……救われる命が一つでもあるなら、私は悪魔にもなれる」
俺は最後の力を振り絞り、抵抗するようにカノンに手を出そうとしていた。
その時、教会が眩い光に包まれた。
まるで神が降りてきたかのように神々しい光だった。
雷が落ちて、カノンの剣に力を与えた。
そのまま俺の身体は焼けていく。
カノンが俺を殺す覚悟が見えた。
聖職者なのに、悪魔になる覚悟は半端な気持ちではなれない。
最後に見たのは、カノンに駆け寄る女性がいた。
黒髪の綺麗な見知らぬ子、あの子がカノンの好きな人か。
俺は、この日で二度目の死を経験した。
カノンにこんな気持ちにさせた自分が許せない。
自分の嫌な気持ちも残っていて、ぐちゃぐちゃな感情になる。
フォルテは一人で、こんな気持ちを抱えていたんだ。
「これが君の未来だよ」
「……誰?」
真っ暗な意識の中、俺に声を掛ける人がいた。
腰まで長い薄い金髪の青年だ。
その人の周りだけ色がある、神々しいオーラをまとっていた。
俺を見下ろしていて、その声には聞き覚えがあった。
もしかして、ミッシェル?
声しか知らないから、半信半疑で恐る恐る聞いてみる。
俺の質問には答えない…それが答えのようだった。
相変わらず俺を無視するところも本人にそっくりだ。
俺の頭の中だから、手のひらを見ようにも俺の姿はないから見えない。
いつもの脳内にミッシェルの姿が追加されたようだ。
神様のように人間離れした美しい容姿だけど、怖くもあった。
いつもの明るい声とは掛け離れたような感情がない顔だからだろうか。
無言で俺を見つめて、その声は冷たく棘のあるものだった。
「君が信じていた友人は君が道を踏み外したら、ためらいなく君を殺す」
「俺は道を踏み外さない、ゲームとは違う結末に変わろうとしているんだ」
「変わらないよ、この世界はゲームと同じ結末を辿るようになっている、君が必死に変えようとしても世界が修正に入る…まだゲームは始まっていないからね」
「ゲームに抗う方法は、フォルテがどのルートでも手に入れる事が出来なかったもの」とミッシェルは呟いた。
俺が手に入らなかったもの…それが恋愛なのか。
裏切られたとはいえ、友人はいたから手に入れる事が出来なかったとは言えない。
偽りでも、友人なのは変わりない。
ミッシェルは「君を救う気持ちに偽りはないよ」と言っていた。
このままミッシェルがいなかったら、俺は本当に友人関係のまま殺されていたのかもしれない。
カノンがそんな事をする筈はないと、まだ少しそう思う気持ちは消えていない。
だけど、俺が見たカノンもそういう事をするカノンではなかった。
俺が世界の修正に負けて、悪役となった瞬間にカノンはきっとあの時のように俺を殺すだろう。
「もしかして、子供の頃…皆に嫌われたのも…」
「普通、嫌なものを見せても悪意がないならあそこまで嫌われると思う?」
「……おれ、は…」
ゲームが始まる前に、きっとまた悪役になる修正が始まる。
俺の知らないところで、俺が悪さをしている。
言葉は通じない、通じるのは行動だけだ。
あの時俺は、殺されて何を思ったんだろう。
この気持ちからして、憎しみのまま死んでいったんだ。
そんな結末嫌だ、死ぬなら人生の悔いがない死に方をしたい。
ミッシェルの姿がだんだん遠くなっていき、再び暗闇に包まれた。
最後に聞こえた言葉は、はっきりと脳内に焼き付いている。
「信じられるのは自分の行動だけ、世界がゲーム通りに進む道を用意するなら外れる勇気も必要だよ」
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