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ゲームを越えた友情
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14歳になった頃、受験のための勉強で部屋に閉じこもる日が増えていった。
この期間だけ、広場の掃除や教会のお祈りはお休みしている。
俺の人生は数年の間で明るい方向に変わっていった。
まだまだだけど、感謝される事も増えてやりがいを感じている。
このままでも死亡フラグを回避出来るような気すらしてくる。
あのプロフィールの事は今ではないと思うから、忘れつつある。
この国の子供達が通うのは大きな城のような外観の学院だ。
街から離れた孤島の中にあり、船でしか渡れない。
身内と離れて、近い年齢の人と共同生活に慣れさせる意味があるとか。
男子部と女子部に分かれていて、ほとんど男子校と女子校のようなものだ。
今は、ゲームの過去編に土台を作っている途中だ。
俺が悪役になる原因や、攻略キャラクターとスピカが出会う回想は過去でないと無理だ。
もう過ぎた事は仕方ないが、これからはどうにでもなる。
ここで、大きく変える事が出来ればその先のゲームの内容も変わる。
俺の全てのゲーム知識を持って、決められた未来と戦うんだ。
学院は入試の点数で特別科と普通科に分かれている。
授業内容も当然変わるし、二つのクラスは離れている。
エリートと一般の差だから、なかなか会う事もない。
他にも選択授業だから細かく分かれるが、大雑把に分かれるのはその二つだ。
俺は普通科だけど、カノンの頭なら特別科だろうな。
部屋に引きこもる前に勉強を教えてくれた時は、分かりやすくて頭にスッと入ってきた。
カノンと会えにくくなるのは寂しいけど、遊びには行けるだろう。
とりあえず、俺は入学出来ればいいかな…と思う。
今日の勉強は終わり、背伸びして深く深呼吸した。
小さな耳鳴りがした後に、いつもの騒がしい声がした。
『最近、サボってない?もしかして、忘れちゃった?』
「うわっ!久しぶりにミッシェルの声が…気のせいか」
『君はそんなに死にたいのかな』
ミッシェルの声がちょっと怒っているようだった。
死にたくはない、だからこうして頑張っているんだ。
悪役だと嫌われた俺が感謝されるようになったんだ、変えられる…自分を信じてみよう。
ミッシェルは俺の考えている事が読めるのに、黙っていた。
もしかして、俺の100人友達計画を聞いて何にも言えないのか?
『言い返せないんじゃなくて、呆れてるんだよ』
「何でだよ、脳内に住んでる神様なんだからカノンの事分かってるだろ!」
『住んでるわけないよ、一応君が恋愛してるところを見られるのは恥ずかしいだろうと思って聞いてないんだよ』
「…そうなのか?でも、カノンがいい奴なのは分かるだろ」
『君は何も分かってないね』
終始、俺を馬鹿にしたような声で腹が立つ。
分かっていないのはミッシェルの方だ、カノンはゲームキャラクターじゃなくて生きているんだ。
俺がそう思っていると、ミッシェルは『ゲームもまた彼の姿だよ』と言っていた。
俺がどんなにいい人だと言っても、ゲームで俺を殺したのもまたカノンだと…
まだ、俺はカノンを知らないと言っているようだ。
腹が立つな、カノンはミッシェルの事を一ミリも知らないのに…
『何?嫉妬してる?やっぱり攻略されちゃった?』
「初めての友達を取られたような気分なだけだ!友達攻略の意味ならしてるかもね!」
毎回毎回、なんでそう思うのか分からない。
ミッシェルにしつこく攻略されたのかと言われて、そう見えないようには気をつけているつもりだ。
恋愛感情はない筈だ、カノンといると楽しいし…もしカノンに好きな人が出来ても応援出来る。
友達として一緒に居られるんだし、恋人という気持ちにならなくても構わない。
そういえば、カノンはなんでゲームの俺を殺したんだろう。
カノンが出ているゲームをやった事がないから分からない。
俺の誤解を分かっていて、優しくしてくれた温厚なカノンがどうやって…
この世界にゲームやテレビやスマホはないから確認する事は出来ない。
こんな事なら、全部のゲームをやってアニメも見ておけば良かった。
こんな事になるなんて、誰も想像していなかったけど。
プロフィールは死に方しか書いていなくて、分からない。
『知りたい?なんで死んだか』
「そりゃあ俺のあったかもしれない未来なんだろ?自分の事なら知りたい」
ミッシェルは聞くだけ聞いて、何も答えなかった。
追加情報を教えてくれるのかと思ったのに、なんで黙るんだ。
しつこいくらいにカノンを否定しているのに、肝心な事は教えないってなんなんだよ。
思わせぶりな事を言われて、余計に気になってきた。
気を紛らわせるために、厨房でなにかもらってくるかな。
そう思って部屋を出ようとしたら、一階にいる母さんが声を掛けてきた。
「フォルテ!今、カノンくんが遊びに来ているけどどうする?」
「分かった!今行く!」
廊下に出て、下にいる母さんに伝える。
久々だな、カノンの話をしてたし俺も会いたかった。
カノンを迎えに行くために、玄関に向かった。
家にも何度か遊びに来ているから、母さんもカノンを知っている。
俺が初めて友達を連れてきたから、初めての時は張り切って料理を作ってカノンと夕飯を共にした。
礼儀正しくて、見た目も美人なカノンは母さんのお気に入りだ。
カノンも俺が掃除をしているとか言われたくない事だと分かっているから母さんには黙っていてくれる。
信用している、やっぱりそんなカノンが俺を殺すとか考えられない。
『そんなに言うなら、追体験させてあげる』
ミッシェルの声が脳内で響いた時、俺の意識はプツリと切れた。
この期間だけ、広場の掃除や教会のお祈りはお休みしている。
俺の人生は数年の間で明るい方向に変わっていった。
まだまだだけど、感謝される事も増えてやりがいを感じている。
このままでも死亡フラグを回避出来るような気すらしてくる。
あのプロフィールの事は今ではないと思うから、忘れつつある。
この国の子供達が通うのは大きな城のような外観の学院だ。
街から離れた孤島の中にあり、船でしか渡れない。
身内と離れて、近い年齢の人と共同生活に慣れさせる意味があるとか。
男子部と女子部に分かれていて、ほとんど男子校と女子校のようなものだ。
今は、ゲームの過去編に土台を作っている途中だ。
俺が悪役になる原因や、攻略キャラクターとスピカが出会う回想は過去でないと無理だ。
もう過ぎた事は仕方ないが、これからはどうにでもなる。
ここで、大きく変える事が出来ればその先のゲームの内容も変わる。
俺の全てのゲーム知識を持って、決められた未来と戦うんだ。
学院は入試の点数で特別科と普通科に分かれている。
授業内容も当然変わるし、二つのクラスは離れている。
エリートと一般の差だから、なかなか会う事もない。
他にも選択授業だから細かく分かれるが、大雑把に分かれるのはその二つだ。
俺は普通科だけど、カノンの頭なら特別科だろうな。
部屋に引きこもる前に勉強を教えてくれた時は、分かりやすくて頭にスッと入ってきた。
カノンと会えにくくなるのは寂しいけど、遊びには行けるだろう。
とりあえず、俺は入学出来ればいいかな…と思う。
今日の勉強は終わり、背伸びして深く深呼吸した。
小さな耳鳴りがした後に、いつもの騒がしい声がした。
『最近、サボってない?もしかして、忘れちゃった?』
「うわっ!久しぶりにミッシェルの声が…気のせいか」
『君はそんなに死にたいのかな』
ミッシェルの声がちょっと怒っているようだった。
死にたくはない、だからこうして頑張っているんだ。
悪役だと嫌われた俺が感謝されるようになったんだ、変えられる…自分を信じてみよう。
ミッシェルは俺の考えている事が読めるのに、黙っていた。
もしかして、俺の100人友達計画を聞いて何にも言えないのか?
『言い返せないんじゃなくて、呆れてるんだよ』
「何でだよ、脳内に住んでる神様なんだからカノンの事分かってるだろ!」
『住んでるわけないよ、一応君が恋愛してるところを見られるのは恥ずかしいだろうと思って聞いてないんだよ』
「…そうなのか?でも、カノンがいい奴なのは分かるだろ」
『君は何も分かってないね』
終始、俺を馬鹿にしたような声で腹が立つ。
分かっていないのはミッシェルの方だ、カノンはゲームキャラクターじゃなくて生きているんだ。
俺がそう思っていると、ミッシェルは『ゲームもまた彼の姿だよ』と言っていた。
俺がどんなにいい人だと言っても、ゲームで俺を殺したのもまたカノンだと…
まだ、俺はカノンを知らないと言っているようだ。
腹が立つな、カノンはミッシェルの事を一ミリも知らないのに…
『何?嫉妬してる?やっぱり攻略されちゃった?』
「初めての友達を取られたような気分なだけだ!友達攻略の意味ならしてるかもね!」
毎回毎回、なんでそう思うのか分からない。
ミッシェルにしつこく攻略されたのかと言われて、そう見えないようには気をつけているつもりだ。
恋愛感情はない筈だ、カノンといると楽しいし…もしカノンに好きな人が出来ても応援出来る。
友達として一緒に居られるんだし、恋人という気持ちにならなくても構わない。
そういえば、カノンはなんでゲームの俺を殺したんだろう。
カノンが出ているゲームをやった事がないから分からない。
俺の誤解を分かっていて、優しくしてくれた温厚なカノンがどうやって…
この世界にゲームやテレビやスマホはないから確認する事は出来ない。
こんな事なら、全部のゲームをやってアニメも見ておけば良かった。
こんな事になるなんて、誰も想像していなかったけど。
プロフィールは死に方しか書いていなくて、分からない。
『知りたい?なんで死んだか』
「そりゃあ俺のあったかもしれない未来なんだろ?自分の事なら知りたい」
ミッシェルは聞くだけ聞いて、何も答えなかった。
追加情報を教えてくれるのかと思ったのに、なんで黙るんだ。
しつこいくらいにカノンを否定しているのに、肝心な事は教えないってなんなんだよ。
思わせぶりな事を言われて、余計に気になってきた。
気を紛らわせるために、厨房でなにかもらってくるかな。
そう思って部屋を出ようとしたら、一階にいる母さんが声を掛けてきた。
「フォルテ!今、カノンくんが遊びに来ているけどどうする?」
「分かった!今行く!」
廊下に出て、下にいる母さんに伝える。
久々だな、カノンの話をしてたし俺も会いたかった。
カノンを迎えに行くために、玄関に向かった。
家にも何度か遊びに来ているから、母さんもカノンを知っている。
俺が初めて友達を連れてきたから、初めての時は張り切って料理を作ってカノンと夕飯を共にした。
礼儀正しくて、見た目も美人なカノンは母さんのお気に入りだ。
カノンも俺が掃除をしているとか言われたくない事だと分かっているから母さんには黙っていてくれる。
信用している、やっぱりそんなカノンが俺を殺すとか考えられない。
『そんなに言うなら、追体験させてあげる』
ミッシェルの声が脳内で響いた時、俺の意識はプツリと切れた。
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