最強悪役令息が乙女ゲーで100人攻略目指します

ゆで大福

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ごめんなさい

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***

翌日、俺は広場に向かった。

俺の被害者は子供だから、片っ端から声を掛けて謝るつもりだ。
街の人達は、俺の行動で怖い思いをしたんだ。

俺が好きだからって、あんなグロい見た目のおもちゃを見せるべきではなかった。

今は中身が大人だからそう思えるけど、子供には分からないか。

そこで意地になって、おもちゃを見せ続けたのは完全に俺が悪い。
心を入れ替えて、今後はしないとちゃんと彼らに伝えよう。

許してもらうためなら何でもする、それが俺が今出来る精一杯だ。

広場には人が多く、屋台に呼び込む声や雑談に花を咲かせている女性達。
真ん中にある噴水で遊んでいる子供達がいるのが見えた。

俺もいつも噴水広場で遊んでいた、けど俺と遊んでくれる人は誰もいなかった。
俺が人見知りで、「遊ぼう」と一言言えたら良かった。
そしたらおもちゃなんて見せなくても友達がいたかもしれない。

性格は簡単に直せないが、行動一つでその先が大きく変わる。
些細な事でも、俺の結末に影響してくると分かった。

今なら「遊ぼう」と言えるけど、今言っても手遅れだ。
マイナスから人間関係を0に戻すのはとても難しい。
それでも、俺がした事は俺がどうにかするしかない。

子供達のところに行こうと歩いていたら、俺に気付いた大人が俺に聞こえるくらいの声で話し始めた。

「見て、またあのフォルテよ」

「今日はどんなイタズラをするのかしら」

「本当に嫌ね、うちの子も外で遊ばせられないわ」

「早く何処かに行ってくれない?」

大人達にも歓迎されていない様子で、心が痛くなる。
第三者から見ても、俺が怖がらせているように見えたんだろう。

メンタルが強いわけではない俺にはかなりのダメージだ。

大人にはイタズラした記憶はない、俺はおもちゃを見せたかった同じくらいの子達にしかしていない。

でも言われても仕方ないから、言い訳もするべきではない。
子供だけではなく、大人にも改心した事を見せないといけない。

噴水に近付くと、何人かの子達が俺に気付いて顔色を変えた。
さっきまで楽しそうに笑っていたのに、その顔は青ざめて怒りや恐怖に変わっていた。

嫌われているというより、怪物を見たかの反応だ。
俺がいるだけで、噴水広場は小さなパニックになった。

叫んでいる子も泣いている子もいて、俺が謝っても声が聞こえていなかった。
このくらいの言葉だけで許してもらえるとは思っていない。
でも、謝罪から始まるんだ…謝る事も許してくれないなら許される事も出来ないのかな。

怖がらせないように顔が分かるくらい離れているが、まだ怯える声が聞こえる。
これ以上近付くと余計に怖がらせてしまうから、何も出来ない。

それでも、自分でした事を謝るために声を張り上げた。
俺は何も脅かすものは持ってないと、両手を前に出して頭を下げた。
今日で終わらせるつもりはない、通い続けたらいつか話を聞いてくれるかもしれない。

俺は、きっとそうだと信じているから謝り続けた。

酷い事を言われて傷付いても、それ以上に傷付いている人がいる。

俺は諦めず何度目かの謝罪をするために、口を開いた。

その時、なにかが俺の頭にぶつかって視界が激しく揺れた。
なにが起きたのか理解する前に、地面に膝を付いた。
ポタポタと赤い液体が地面を濡らしていて、視界がぐるぐる回る。

あれ?なんだろうコレ、俺から出ているものなのか?

近くに落ちていた石を手に取ると、赤い液体のようなものが付いていた。
俺から出ているものと同じだと思った瞬間、血だと気付いた。

そう気付いたら、頭がズキズキと痛み出して熱っぽくなってきた。

目の前を見ると、周りの子供や大人達が俺に向ける顔は憎悪に満ちていた。
誰が投げたかは分からないけど、周りの人達の想いは同じという事は分かった。

叫び声とかで、声がかき消えていると思っていた。
でも俺の声は聞こえていても、届いていなかったんだ。

俺がどんなに謝っても、心が少しも動く事はなかった。

余計な事をして、さらに拗れてしまった気さえする。

怖がらせるだけなら、許してもらおうと考える事よりも大人しく家にいた方が良かったのかもしれない。
この謝罪も、届いていなかったら俺の自己満足でしかない。

怖がらせたかったわけではなかったのに、俺は何をしているんだ。

ゆっくりと起き上がると、身体のバランスが上手くいかずによろけた。
ヤバいかもしれない、さっき石が当たったからか眩暈がする。

ここで倒れても、誰も医者を呼んでくれない事は分かる。
自分で家に帰らないといけないから、無理に歩こうとした。

一歩二歩歩いたところで、限界がきて身体が傾いた。

母さんに迷惑掛けてしまう事は嫌だな、傷を見たら余計に…

俺の気持ちを無視して、身体はピクリとも動かなかった。

視界が回る中、硬い地面を想像していたが柔らかい感触がした。
俺の近くには支えるものも、柔らかいものもなかった。

じゃあ、俺は今何処に倒れているんだ?誰か助けてくれた?
いや、あんなに俺を怖がっていたのに助けてくれる人がいるとは思えない。

なにが起きたのかは分からないが、小さな身体が地面に倒れる事はなかった。

花のいい香りが俺を包み込んでくれるようで、リラックス出来た。

このまま目を閉じて眠ってしまいたかったが、二度と目を開ける事が出来なくなりそうで必死に起きようとした。
ぼんやりとした視界の中、誰かがいるのか分かった。
さっきまで俺を見て皆が離れていったのに、この人はなんで俺を助けてくれたんだろう。

同じ歳みたいだけど、尚更子供が助けてくれるなんて不思議だった。

「何故、そうまでして争いを望むのですか」

「カノン!ソイツから離れろよ!また何するか分からないんだから!」

「何をするのか分からないから石を投げたのですか?彼の言葉に耳を傾けながら」

「…っ!」

誰かが話している声が聞こえるけど、それが誰だか分からない。
俺の知らない声だけど、皆と同じように俺の事嫌いじゃないのか?
目蓋を開ける事に必死で、会話を理解する余裕がない。

ただ、言い合いをしている事は分かる…何の言い合いかは分からない。

俺の言葉は、誰か一人にでも届いていたって事なのかな。

目蓋がだんだん重くなってきて、意識も朦朧としてくる。
起きたいのに、もういいかと無気力になる自分もいる。

まさか、幼少期から死亡フラグを用意しているとかないよな。
100人もの攻略キャラクターがいると、俺がいない世界も存在するのかもしれない。
やっていない、知らない話もあるからすべての死亡フラグなんて回避出来るのか?

赤ん坊からスタートしていたら、いろいろと関係を直す事が出来た。
転生漫画では、それが当たり前で同じ過ちを犯さないように奮闘していた。

第二の人生って、もう決められたものではない気がする。
今さら生まれ変わって文句を言っても変わらないけど。

この世界は俺にとってのハードモードの先の激ムズ人生だ。
俺を殺したい世界にとって、イージーモードは当然用意されていない。

そもそも、俺が主役の人生なんて考えられてもいない。
人は、その人その人に人生があり…皆主役だというのに…

こんな中途半端に終わらすなんて事していいのか?
いや、ダメだ…まだゲームのプロローグは始まってない。

ゲームをクリアした俺には何も恐れる事はない。
やってやる、絶対に生きて世界に見返してやるんだ!

俺の意識はここで暗闇に包まれて、糸が切れたようにプツリと失った。
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