34 / 48
3章
真実は小説よりも凄かった1
しおりを挟む王様、もとい初代落ち人タクマさん。
そして元の世界に帰るって。
えっと、どこから突っ込めばいいですか?
「そりゃ混乱するよね。だから言ったのに」
相変わらずまったりお茶を飲むタクマさん。
「えっと、王様?」
「タクマでいいよ?同じ日本人だし、それに同じ時代の人っぽいしね」
「じゃあ、タクマさん?初代落ち人ということはこの国の王様をずっとされてたんですか?」
「うーん。ややこしいから最初から話すね」
そういうと、タクマさんは少し遠い目をして話始めた。
「向こうの世界ではホントに普通の大学生だったんだ。ゲームとか異世界モノとか好きなオタクよりだったけどバイトして就職活動とかして、さぁ入社式前日って時に死んだっぽい。
気がついたら神様の世界にいてさ、この世界来ない?って言われた。うおーきたー!って思ってすぐ即決したんだ」
タクマさんは、その時の興奮は多分一生味わえないっ!!て凄く興奮していた。
「ホントに何もない世界って言われたから、思い付く限りのチート能力をもらってこの世界に来たんだ。そしたら落ちた時の衝撃でここが隕石みたいに穴空いちゃってさ」
タクマさんは苦笑いしながら湖を見る。
「え、シンリ湖ってタクマさんが落ちたせいで出来たクレーターなんですか?」
まさか隕石でも火山でもなくタクマさんが大地を削って出来た湖だったとは、、、。
「そう凄いでしょ!ここはホントに何もないただの荒野でね。
最初は貰ったチート能力で少し先の森で狩猟民族みたいなことして、クレーターに雨が溜まり始めた頃にポツポツと人が集まり始めて村ができ始めた。
ここに集まった人は元の土地を追い出されて来た人達が多いから俺のチート能力が神みたいに崇められちゃって、気がついたら結婚してて街の長になってたんだ。それがこの国の始まりで初代ヴェルナーレになった時。
僕の寿命は変わらなかったから、一回普通に死んだんだよね。だからシンリ湖は誰も入れない結界ができてしまった」
タクマさんが死んだ後、黒髪の神様として街の人から熱狂的に信仰されたそうだ。
「あーやりきったなって、思って目が覚めたらまたこの世界の別人に生まれ変わってた。
あれ、元の世界に戻るんじゃないの?って思ったけど全く戻る気配もないし、貰った能力もそのままだった。
だからせっかく大きくなったこの街をより良くしていこうと思って、僕の子孫の補佐をしていたら国が出来た。そしてまた寿命で死んで、また別人に生まれ変わる。
5回目くらいから平民になったり、他国へ行ったりしてみたよ?でも僕は何度もこの世界のこの国の人に生まれ変わってしまう。
元の世界に帰りたいって思って、自棄になって酒に溺れて早死にした時に、あの神様の世界に連れてかれて元の世界に1回戻ったんだ」
タクマさんの表情が一辺して暗くなった。
「元の世界でタクマは死んでるから、人生やり直すことになったんだけど、、、。
日本っていう元の世界がひどく生きにくくてね。しがらみとか、常識とか、マナーとか。
神様にお願いして、もう我が儘言わないからこの世界に帰してくれって頼んだ。そしたら、ヴェルナーレ17世として生まれ変わった。
王族として生まれ変わるのは初めてだったから、まずは厳しすぎるマナーとか常識を緩めるところから始めたよ」
タクマさんは冷めたお茶を飲んで口の乾きを癒していた。
そういえば私も熱心に聞きすぎていて、口が乾いていたのに気付きお茶を飲んだ。
「変わり者の王って言われてからしばらくして王妃を迎えて、さぁ世継ぎがって時に問題が起こった。
ヴェルサスが黒髪で生まれてしまったんだ。
僕が王に生まれ変わったせいで、ヴェルサスに落ち人としてのチート能力の一部と膨大な魔力が引き継がれてしまった。
今まで子供が出来たとき、一回も黒髪が生まれたことがなかったから正直油断してたんだ。
お陰でヴェルサスは小さい頃から周囲に恐れられて、僕の子じゃないと影で言われたりしてね。
なんとか始組帰りっていう事で落ち着いたけど、流石にこの話は誰にも出来なくてただ見守ることしか出来なかった。
それにヴィーノにも一部能力が引き継がれたことが分かって、これ以上僕の子孫を残すのはこの世界にとって良くないとわかったんだ。
それにもう一つの問題が起こってさ、いつの間にかこの世界は魔力が同じくらいないと子供が出来ない世の中になってたんだ。だからこのままだとヴェルサスは1人孤独に生きることになってしまう。
王にならなければ、ヴェルサスに辛い思いをさせなくて済んだのになんで僕は王に生まれ変わったんだろうって何度も自分を責めた。
親だからヴェルサスは可愛い。
今まで辛い思いをした分、彼には幸せになってもらいたい。
だから願ってしまったんだよ。
ヴェルサスと共に添い遂げられるお嫁さんが欲しい。
出来れば僕と同じ世界の子で、ヴェルサスを大事にしてくれる子をこの世界にって」
0
お気に入りに追加
2,067
あなたにおすすめの小説
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
7歳の侯爵夫人
凛江
恋愛
ある日7歳の公爵令嬢コンスタンスが目覚めると、世界は全く変わっていたー。
自分は現在19歳の侯爵夫人で、23歳の夫がいるというのだ。
どうやら彼女は事故に遭って12年分の記憶を失っているらしい。
目覚める前日、たしかに自分は王太子と婚約したはずだった。
王太子妃になるはずだった自分が何故侯爵夫人になっているのかー?
見知らぬ夫に戸惑う妻(中身は幼女)と、突然幼女になってしまった妻に戸惑う夫。
23歳の夫と7歳の妻の奇妙な関係が始まるー。
【本編完結】独りよがりの初恋でした
須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。
それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。
アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。
#ほろ苦い初恋
#それぞれにハッピーエンド
特にざまぁなどはありません。
小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる