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1章
こちらが現実のようです
しおりを挟むうわっ!
と思い目を開くと、見慣れない光景があった。
自分の部屋より数倍広く縦縞の入った落ち着いたミントグリーンの壁紙。
簡素ながら、フワフワ手触りのベッド。
ソファー前のテーブルには昨日飲んだお茶のカップが置いたままだった。
やっぱりこっちが現実らしい。
「あれは夢だったの、、、?」
携帯に残された着信履歴やメールを思い出し体が震える。夢にしては妙にリアルだったが、今「私」がいるのは紛れもなくキラキラオーラを放つ騎士様がいるファンタジーな世界。
何が事実なのか分からないが、ひとまず今を乗り切らねばと思い鬱々とした気持ちでベッドからおりた。
窓から気持ちのいい光が差し込んでいるのに気付き、窓を開けてみると昨日の湖が眼下に広がっていた。
日の光で湖は輝いている。
「うーん気持ちいい!」
昨日は気づかなかったが湖のすぐ近くには森があり、そのせいか空気がとても澄んでいておいしかった。
軽く体を伸ばし、洗面台で顔を洗い口をゆすぎ綺麗にする。
例え異世界だとしても毎日の習慣は変わらないんだなと、一人で苦笑してしまった。
ソファーに座ってしばらく。
扉をノックされた為、返事をするとメイド服を着た若い女性が入ってきた。
「落ち人様おはようございます。お加減はいかがですか?」
ニッコリ微笑みながら腰を折って挨拶をされる。
「おはようございます。特に問題はないですよ」
私もニッコリ笑って答える。
窓を開けて外の空気を吸ってから、鬱々としていた気分がすっきりした為だ。
「それはよかったです。早速朝食をお持ちしてもよろしいですか?」
「はい、お願いします」
メイドさんはすでに朝食を持ってきてくれていたようで、5分もかからずにテーブルに朝食が運ばれた。
メニューはホテルみたいで、パンと野菜のスープ。とろとろのスクランブルエッグにソーセージとサラダ。
どれも美味しくてつい食べるスピードが上がってしまった。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「お口に合うようでよかったです。お茶を要れましたのでどうぞ」
食べ終えたのと同時にニッコリと差し出されたのは、昨日と同じお茶。
緑茶ベースだが薬草が混じっているようで、少し薬のような匂いがする。だけど味はとても美味しくてホッとする。日本人だなぁと思う一時。
「落ち人様、ご挨拶が遅くなりましたがこれからお世話をさせていただくミーチェと申します。何かありましたら何なりとお申し付け下さい」
「ミーチェさん!私はマイと言います。こちらこそ分からないことだらけなのでよろしくお願いします」
二人でお辞儀をする。
「まぁ、マイ様!私のような侍女に丁寧な対応は不要ですよ!」
「ごめんなさい、体に染み付いている動作なので直ぐに直すのは難しいんです。なるべく気を付けるようにしますね」
私は苦笑するしかなかった。
日本人の当たり前ともいえるこの習慣を変えることはかなり難しいだろう。
「お部屋の外を出た時はお気をつけ下さいね」
ミーチェさんはニッコリ微笑んで食べ終えた皿を下げてくれる。空いたテーブルにはまたあのお茶が新しく淹れられていた。
さすがメイドさん。仕事が早い。
「今日は昼食後に陛下と王族の皆様との謁見がございます。後程湯あみをしていただきますが、お召し物は今着ているものとなります。一度洗濯をさせていただきたいので、こちらに着替えていただけますでしょうか?」
ミーチェさんはそういうと、どこからか白いシンプルなワンピースを取り出した。
「え、ドレスとかじゃなくてこの服でいいんですか?対して高くもないこんな安物の服なのに」
そう今私が着ている服は、昨日翔の家に行った時の服装のまま。少し胸元が見えそうなVカットのゆるっとしたTシャツにジーパン。薄いカーディガンはソファにかけたままだ。
このまま謁見だなんて、恥さらしもいいところだ。
「落ち人様だからこそです。私は初めて見ましたが、とても動きやすそうな服装ですね!」
ミーチェさんは私の服に興味があるようで、早くワンピースに着替えさせてじっくりと観察したいようだ。
「確かに動きやすい服装には間違いないですよ。でもこれで謁見はちょっと、、、」
「大丈夫です!明日からは恐らく着れなくなりますので最後だと思って堂々となさってください」
よく分からないが、やはりこの服は今日しか着られないようだ。ならばミーチェさんの言うとおり最後だと思って堂々とこの服で謁見に望もう。
恥ずかしながらもミーチェさんの前で服を着替えて、Tシャツとジーパンは洗濯の為回収されてしまった。
シンプルな白いワンピースは膝丈で、素足が見えてしまう。
あ、ムダ毛は大丈夫かな、、、?
この後ミーチェさんが戻ってきて、湯あみと極上のマッサージで恥との一戦を交えているうちにもう昼食の時間となっていた。
そんなにお腹もすいていなかったので軽食にしてもらい、洗濯から帰ってきた新品同様のTシャツとジーパンに着替える。
そしてへアセットとメイクを整えてもらい、ついに謁見の時間を迎えた。
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