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第一章
第3話【初めての遠出、王都のお祭りへ】1
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「わああぁ~!」
ゴーン、と鳴り響く鐘の音。人、人、人。果物やパン、雑貨、宝石類の露店の数々。美しく飾り付けられた花たち。
踊る人や歌を歌うパフォーマンス、笑顔の親子。
全てが初めて見る光景でエヴァは大興奮だった。
「お嬢様、私から離れないよう注意して下さい」
「ええ、ええ! わかっているわ。 あ、ほらあれを見て! なにかしら!」
そう言って未知の何かを求めぐいぐい先へ行くエヴァを見失わないようクライムは注意深く着いて行った。
午前中に着いた城下町はかなりの賑わいをみせていた。
メアリーの協力のもとエヴァの代わりに部屋に籠ってもらい、エヴァは目立つ赤髪を帽子で隠し侍女のフリをしてクライムとこっそり出て行った。
ひょっとしたらバレるかもしれないが、生きて無事に帰って怒られるならそれでもいい。
今この瞬間、目の前に広がる初めての光景を目に焼き付けたい。
「すごいわねクライム!」
行き交う人々の笑顔と賑わいに胸が躍る。花冠を配ってる人がエヴァの帽子の上からひょい、とかぶせてくれたので礼を言った。
「見て見て! 花冠をもらったわ!」
「よくお似合いです」
「ふふ、ありがとう!」
クライムの手をしっかりと繋ぎ行き交う人々に紛れ夏の豊穣を予祝するお祭りを堪能する。
(こうしていると私たち、恋人に見えるかしら)
手のひらの温かい体温。いつものクライムなら主従の関係を保ち一定の距離をとっているはずだが、この人混みでは仕方ないよねと浮かれるエヴァ。
見上げた空は晴天で、花吹雪が温かなそよ風に舞い美しかった。
そろそろお昼時なのでクライムが露店で二人分の軽食を買ってくれた。
実際に金銭のやり取りを間近で見られて「これが買い物なのね」と目を輝かせるエヴァ。
獣肉の腸詰と野菜を焼いたもの。本来はお酒も一緒に飲むらしいがクライムに却下されてしまった。
「私もう十六よ? デビュタントに参加してないとはいっても立派な大人なんだから」
「いえ、私からすればお嬢様はまだまだ子供です」
「酷い!」
珍しくクライムも微笑みながら二人で食事を楽しんだ。
「結構ボリュームがあったわ、お腹一杯」
「それは良かったです」
「クライムはお酒飲まなくてよかったの? それとも弱かったりするの?」
「いえ、いざという時にお酒が入っていては咄嗟の対処が出来ない恐れがありますので」
「……そっか……」
(私だけ楽しんでて申し訳ないな……)
「じゃあ屋敷に戻ったら一緒にお酒を飲みましょう! 大人の付き合いも大切よ!」
「……わかりました」
くす、と笑うクライムに満足したエヴァは、隣から聞こえる歓声に気付く。
「なにかしら」
大きなボールに乗って片足立ちをする者、炎を口から噴き出す者、帽子から鳩を何羽も取り出す者。
奇抜な格好をした大道芸人がパフォーマンスをしていた。
「すごいわ! クライム、もっと近くで見てみましょう!」
「お嬢様、お待ち下さい!」
繋いでいた手がわらわら集まる人の波で切れてしまいエヴァは流されていった。
「あ!」
流れに流れ、いつの間にか路地の入口付近まで来てしまったらしい。
大道芸人の元へ行こうとしたがあまりにも混んでて行けそうにない。歓声が大きくなるにつれ人々も集まっているみたいだ。
仕方がないので先程までクライムといた屋台まで戻ろうと思ったが、人が多すぎて道が見えず分からなくなってしまった。
「ど、どうしよう……これってまさか……はぐれちゃったってこと?」
もしはぐれた場合、事前に王都の正門で合流と決めていたが、エヴァにとって初めての場所で人も多く道がわからない。完全に迷子だ。
「あの、すみません道を尋ねたいのですが……」
「は? ああ、ごめん。この街の人間じゃないから分からないんだ。他を当たってくれ」
行き交う人に声をかけたがお祭りのせいか街の住人以外も多く、なかなか教えてもらえない。
「困ったわ……」
(今頃クライムも慌ててるかしら……)
慌てるクライムも見たいな、と頭の隅で考えていると、ぽつりと一滴の水が帽子にあたる。
顔を上げると先程までの晴天から一転して曇り空になっていた。
「雨が降りそうね」
どうしようか悩んでしばらくオロオロしていると、城下町の住人らしきふくよかな年配の女性が話しかけてきてビクッとする。
「あんた、さっきからここにいるけど迷子かい?」
「は、はい。連れとはぐれてしまって……」
「なるほどね。落ち合う場所とか決まってるのかい?」
「正門なんですけど……そこに行くまでに人混みが凄くて」
「ああ、広場の方ね。あの賑わいは確かに今はやめておいた方がいい。正門へ行くなら路地裏を通って行きな」
そう言って路地裏を指さす。生活路として使われてそうなので特に怪しい雰囲気はないが、土地勘のないエヴァは迷いそうだ。
「で……でも……道が複雑そうなのでどうやって通り抜ければいいのか……」
「これから路地裏を通って酒場に行く用事があるからついでに近くまで案内してあげるよ、ついてきな」
「あ、ありがとうございます!」
親切な申し出にパッと笑顔になる。
(優しい方に巡り会えて良かった。これでクライムと合流できるわ)
ゴーン、と鳴り響く鐘の音。人、人、人。果物やパン、雑貨、宝石類の露店の数々。美しく飾り付けられた花たち。
踊る人や歌を歌うパフォーマンス、笑顔の親子。
全てが初めて見る光景でエヴァは大興奮だった。
「お嬢様、私から離れないよう注意して下さい」
「ええ、ええ! わかっているわ。 あ、ほらあれを見て! なにかしら!」
そう言って未知の何かを求めぐいぐい先へ行くエヴァを見失わないようクライムは注意深く着いて行った。
午前中に着いた城下町はかなりの賑わいをみせていた。
メアリーの協力のもとエヴァの代わりに部屋に籠ってもらい、エヴァは目立つ赤髪を帽子で隠し侍女のフリをしてクライムとこっそり出て行った。
ひょっとしたらバレるかもしれないが、生きて無事に帰って怒られるならそれでもいい。
今この瞬間、目の前に広がる初めての光景を目に焼き付けたい。
「すごいわねクライム!」
行き交う人々の笑顔と賑わいに胸が躍る。花冠を配ってる人がエヴァの帽子の上からひょい、とかぶせてくれたので礼を言った。
「見て見て! 花冠をもらったわ!」
「よくお似合いです」
「ふふ、ありがとう!」
クライムの手をしっかりと繋ぎ行き交う人々に紛れ夏の豊穣を予祝するお祭りを堪能する。
(こうしていると私たち、恋人に見えるかしら)
手のひらの温かい体温。いつものクライムなら主従の関係を保ち一定の距離をとっているはずだが、この人混みでは仕方ないよねと浮かれるエヴァ。
見上げた空は晴天で、花吹雪が温かなそよ風に舞い美しかった。
そろそろお昼時なのでクライムが露店で二人分の軽食を買ってくれた。
実際に金銭のやり取りを間近で見られて「これが買い物なのね」と目を輝かせるエヴァ。
獣肉の腸詰と野菜を焼いたもの。本来はお酒も一緒に飲むらしいがクライムに却下されてしまった。
「私もう十六よ? デビュタントに参加してないとはいっても立派な大人なんだから」
「いえ、私からすればお嬢様はまだまだ子供です」
「酷い!」
珍しくクライムも微笑みながら二人で食事を楽しんだ。
「結構ボリュームがあったわ、お腹一杯」
「それは良かったです」
「クライムはお酒飲まなくてよかったの? それとも弱かったりするの?」
「いえ、いざという時にお酒が入っていては咄嗟の対処が出来ない恐れがありますので」
「……そっか……」
(私だけ楽しんでて申し訳ないな……)
「じゃあ屋敷に戻ったら一緒にお酒を飲みましょう! 大人の付き合いも大切よ!」
「……わかりました」
くす、と笑うクライムに満足したエヴァは、隣から聞こえる歓声に気付く。
「なにかしら」
大きなボールに乗って片足立ちをする者、炎を口から噴き出す者、帽子から鳩を何羽も取り出す者。
奇抜な格好をした大道芸人がパフォーマンスをしていた。
「すごいわ! クライム、もっと近くで見てみましょう!」
「お嬢様、お待ち下さい!」
繋いでいた手がわらわら集まる人の波で切れてしまいエヴァは流されていった。
「あ!」
流れに流れ、いつの間にか路地の入口付近まで来てしまったらしい。
大道芸人の元へ行こうとしたがあまりにも混んでて行けそうにない。歓声が大きくなるにつれ人々も集まっているみたいだ。
仕方がないので先程までクライムといた屋台まで戻ろうと思ったが、人が多すぎて道が見えず分からなくなってしまった。
「ど、どうしよう……これってまさか……はぐれちゃったってこと?」
もしはぐれた場合、事前に王都の正門で合流と決めていたが、エヴァにとって初めての場所で人も多く道がわからない。完全に迷子だ。
「あの、すみません道を尋ねたいのですが……」
「は? ああ、ごめん。この街の人間じゃないから分からないんだ。他を当たってくれ」
行き交う人に声をかけたがお祭りのせいか街の住人以外も多く、なかなか教えてもらえない。
「困ったわ……」
(今頃クライムも慌ててるかしら……)
慌てるクライムも見たいな、と頭の隅で考えていると、ぽつりと一滴の水が帽子にあたる。
顔を上げると先程までの晴天から一転して曇り空になっていた。
「雨が降りそうね」
どうしようか悩んでしばらくオロオロしていると、城下町の住人らしきふくよかな年配の女性が話しかけてきてビクッとする。
「あんた、さっきからここにいるけど迷子かい?」
「は、はい。連れとはぐれてしまって……」
「なるほどね。落ち合う場所とか決まってるのかい?」
「正門なんですけど……そこに行くまでに人混みが凄くて」
「ああ、広場の方ね。あの賑わいは確かに今はやめておいた方がいい。正門へ行くなら路地裏を通って行きな」
そう言って路地裏を指さす。生活路として使われてそうなので特に怪しい雰囲気はないが、土地勘のないエヴァは迷いそうだ。
「で……でも……道が複雑そうなのでどうやって通り抜ければいいのか……」
「これから路地裏を通って酒場に行く用事があるからついでに近くまで案内してあげるよ、ついてきな」
「あ、ありがとうございます!」
親切な申し出にパッと笑顔になる。
(優しい方に巡り会えて良かった。これでクライムと合流できるわ)
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