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姉姫
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マルががっくりと項垂れたそのとき、数羽の鳥があたりの木立から鋭い羽音を立てて飛び立った。
瞬時に愁陽の背に緊張が走る。周囲の空気が、瞬間に変わったのをマルも感じた。
愁陽は張り詰めた周囲の気を視線で読みながら、地図をゆっくりと懐に戻す。
先ほどまでとは違う武人らしい鋭い気を全身に纏う。指先まで緊張させながら、静かに腰に下げた剣の柄に手を添えた。
マルも主人の動きにすべてを理解し、素早く緊張とともに身構える。
「マルっ!来るぞ!」
愁陽が鋭い声と同時にシュンッと音を立て剣を抜く。
次の瞬間。
木立の中から何かがギラリと光を反射させながら、二人に向かって放たれた。
めがけて飛んできたそれを、愁陽は剣で素早く打ち払う。
キンッ
鋭い金属音とともに打ち払われたそれは、光を反射させてマルの鼻先スレスレをかすめて彼のすぐ後ろの大木に、ものすごい音を立てて深々と突き刺さった。
ドスッ
マルの大きく丸い目が零れ落ちそうなくらい見開かれて一層丸くなる。恐る恐る背後の大木を振り返ると、ギリギリのところでさっき避けたすぐ後ろの幹に、小刀が深々と突き刺さりギラリと光りを放っていた。
「しゅ、しゅ、しゅうようさまぁ~」
思わず情けない声が出る。けれど自分も将軍に仕える身。マルも腰に下げていた剣を抜くと両手に構えた。ちょっとばかし主人の背に隠れながら。
サワッと生ぬるい風が吹き抜けるのを合図に、次の瞬間―
容赦なく次々と目の前の木立から小刀が続けざまに放たれていく。それを愁陽が身を翻しながら、確実に次々と剣で打ち払っていく。
トスッ、トスッ、トス―ッ
愁陽が打ち払ったそれらは容赦ない音を立てて、すべてマルの足元を狙うかのように地面へ次々と突き刺さっていく。マルはまるで小躍りしてるかのように必死に小刀を避けた。お蔭でマルは前方の見えない敵から飛んでくるより、主人の剣から飛んでくる小刀に足を突き刺されないようにするほうが大変だった。
絶対、あとで文句言ってやる!心の中でマルが叫んだ、次の瞬間。
ズサァァァーーーーーーーッ
大きな音を立てて、勢いよく二人の目の前の大きな木の枝に、首を吊った女がぶら下がった。
「うぎゃあああああああああ~~~~っ!!!で、で、でたああああ~~~!!!」
マルは山神の使いの一族らしからぬ素っ頓狂な声を上げると、数十センチ飛び上がり派手に後ろに転んで尻もちをついた。
日頃あまり驚いたりしない愁陽も、さすがにウッと小さく息をのんだ。
そこにはどこかの姫君らしい、絶世の美女であっただろう美しい姿の女がぶら下がっている。
長く背に垂れて、つややかに流れる髪は美しい漆黒で、鮮やかな紅色の上質な衣の裾がひらひらと宙に揺れる。それが、生々しくさえ感じる。
まるで、まだ生きているかのように美しい。
それまで冷ややかな眼差しで凝視していた愁陽が、静かにつぶやいた。
「…………姉さん」
「っ、……え?」
いま、我が主はなんと言った?
マルはぎょっとして、愁陽のほうを見た。
今、目の前に首を吊るこの美しい女は、愁陽の姉姫だと言ったのではないか?
肩越しに僅かに見える主の横顔は、いつもよりさらに冷ややかにも見える。
「愁、陽さ、ま……いま、なんと?」
口の中が乾いて、うまく言葉が出てこない。静かに冷たい空気が流れていくような気がした。マルはふらふらとふらつきながらも、なんとか立ち上がった。
愁陽は片方の眉を僅かにあげて、伏し目がちに小さく息を吐くと俯いた。
「姉さん……。もう、いいでしょう」
「はい?」
マルが聞き間違えたのか、弟である愁陽がショックで何か口走ったのかと、もう一度マルが主に問いかけようと口を開いた瞬間、それまで項垂れていた女の首が急にブンッと勢いよく振り上がり、その大きな両の眼をカアァッと見開いた。
「っう、うわああああああああああああ~っ!!目がっ、目がっ、目があ~~~、開いてるぅ~~~」
マルは驚きのあまり腰が抜けて本日二度目の尻もちを盛大についた。
その隣りで愁陽は冷静に言う。
「落ち着け、マル。よく見ろ、首はしまっていない」
あ…………
マルが恐る恐る首つり女をもう一度見上げてみると、確かに首元の縄部分は、不自然に自身の手で持たれていて、首には全く縄も食い込んでいない。
「ほんとだ、首、吊ってない」
気の強そうな切れ長の目が二人を見下ろす。
「なあんだ。バレてたの」
派手な顔立ちの美人に似合う、凛とした艶やかな声。
愁陽はあからさまに溜息をついた。その顔はいつもの涼しげな表情を通り越して、見るものを凍りつかせるような気すら感じさせる。
「大体、姉さんの考えそうなことくらい、見え見えですよ」
「まあ、相変わらず面白みのない男ね」
姉はその美しい顔を歪ませて、心底嫌そうに答える。
「ありがとうございます」
弟である愁陽も相変わらずすました顔で答えながら、背後の木にぐさりと突き刺さった小刀をグッと抜く。
「ふん、誰も褒めていやしないわよ」
姉は弟に向かって憎たらしそうに言うと、愁陽は小刀を手に振り返りとても爽やかに微笑んだ。
「いいんですよ、姉さん。そのままの格好のあなたを残して、私たちは今すぐ下山しても」
「うっ」
彼女の足は、地上より30センチばかり高いところで、ぶらぶら揺れている。衣と同じく綺麗な真っ赤な靴を履いた先の細い爪先を、どんなにぴょこぴょこ延ばしてみても地面にまったく届かない。もちろん30センチでは届くわけがない。
「ちょっとぉ、それは困るわ。あんたが下ろさなきゃ、誰が下ろすのよ!」
「さあ、熊?」
「喰われるわっ!あんた、そんなことしてごらんなさい。死んで化けて出てやるから!」
「化けて出てこないで下さい。そんな暇人ではありませんから」
愁陽は涼しい顔してそう言うと、手にした小刀を姉姫の頭上にある紐めがけてシュッと音を立てて投げた。
吊るした紐はプツッと切れ、姉姫は無事転ぶことなくとトンッと地面に着地した。愁陽に負けず劣らず姫君とは思えないくらいの運動神経の持ち主らしい。
不自然な体勢でいたから少し肩が凝ったのか、彼女は首と肩をぐるっと回すと、首にかかった紐を外しながら弟へ礼のかわりに言った。
「私だって、あんたみたいなひねくれた奴のところに、化けて出てやるなんて厭よ」
「それは良かったです」
愁陽はまだそこいら中に突き刺さっている残りの小刀を抜き、集めて姉姫に手渡してやる。
「はあ~。まったく、これのどこが仙人の修行ですか?」
「仙人っ!?」
「失礼なっ。いかに印象的で心に残る登場をしようか、日夜考え努力しているのよ」
「こんな山奥で、どうして印象的な登場を考える必要があるのです?」
「こんな山奥だからこそ、たまの訪問客をいかにして歓迎するかが問題なのよ。」
マルは絶句した。何なんだ!?この姉弟の会話は。
そして、これが歓迎だったんだ……あり得ないし(泣)
もう、何かといろいろおかしい。
混乱するマルをよそに、へんてこな姉弟のバトルはなおも続いている。
「この辺にいると言えば、目つきの悪い鹿か食欲旺盛な熊。たまに人間がきたと思えば、あんただし」
「悪かったですね。そんな危険な場所なら、さっさと下山したらどうです?」
腕組をしてスラリと立つ愁陽と、それに向き合う形で凛と立つ彼女も、同じくらいの背丈がある。
少し結い上げた漆黒の髪の残りは背に艶やかに長く垂らし、鮮やかな紅色の衣が彼女の華やかな雰囲気によく似合っている。
愁陽もかなり整った顔立ちをしているが、姉姫はまた迫力のある美人だ。
そんな姉と弟が二人並んで立つ光景は、こんな山奥には眩しいくらいに華やかすぎてまったくの不釣り合いだ。
それにしても……と、マルは思う。
このさっきから繰り広げられる会話は、仮にも一国の王の後継者と、その姫君のものとは思えない。民が聞いたら、行く末が不安になるかも知れない……。
瞬時に愁陽の背に緊張が走る。周囲の空気が、瞬間に変わったのをマルも感じた。
愁陽は張り詰めた周囲の気を視線で読みながら、地図をゆっくりと懐に戻す。
先ほどまでとは違う武人らしい鋭い気を全身に纏う。指先まで緊張させながら、静かに腰に下げた剣の柄に手を添えた。
マルも主人の動きにすべてを理解し、素早く緊張とともに身構える。
「マルっ!来るぞ!」
愁陽が鋭い声と同時にシュンッと音を立て剣を抜く。
次の瞬間。
木立の中から何かがギラリと光を反射させながら、二人に向かって放たれた。
めがけて飛んできたそれを、愁陽は剣で素早く打ち払う。
キンッ
鋭い金属音とともに打ち払われたそれは、光を反射させてマルの鼻先スレスレをかすめて彼のすぐ後ろの大木に、ものすごい音を立てて深々と突き刺さった。
ドスッ
マルの大きく丸い目が零れ落ちそうなくらい見開かれて一層丸くなる。恐る恐る背後の大木を振り返ると、ギリギリのところでさっき避けたすぐ後ろの幹に、小刀が深々と突き刺さりギラリと光りを放っていた。
「しゅ、しゅ、しゅうようさまぁ~」
思わず情けない声が出る。けれど自分も将軍に仕える身。マルも腰に下げていた剣を抜くと両手に構えた。ちょっとばかし主人の背に隠れながら。
サワッと生ぬるい風が吹き抜けるのを合図に、次の瞬間―
容赦なく次々と目の前の木立から小刀が続けざまに放たれていく。それを愁陽が身を翻しながら、確実に次々と剣で打ち払っていく。
トスッ、トスッ、トス―ッ
愁陽が打ち払ったそれらは容赦ない音を立てて、すべてマルの足元を狙うかのように地面へ次々と突き刺さっていく。マルはまるで小躍りしてるかのように必死に小刀を避けた。お蔭でマルは前方の見えない敵から飛んでくるより、主人の剣から飛んでくる小刀に足を突き刺されないようにするほうが大変だった。
絶対、あとで文句言ってやる!心の中でマルが叫んだ、次の瞬間。
ズサァァァーーーーーーーッ
大きな音を立てて、勢いよく二人の目の前の大きな木の枝に、首を吊った女がぶら下がった。
「うぎゃあああああああああ~~~~っ!!!で、で、でたああああ~~~!!!」
マルは山神の使いの一族らしからぬ素っ頓狂な声を上げると、数十センチ飛び上がり派手に後ろに転んで尻もちをついた。
日頃あまり驚いたりしない愁陽も、さすがにウッと小さく息をのんだ。
そこにはどこかの姫君らしい、絶世の美女であっただろう美しい姿の女がぶら下がっている。
長く背に垂れて、つややかに流れる髪は美しい漆黒で、鮮やかな紅色の上質な衣の裾がひらひらと宙に揺れる。それが、生々しくさえ感じる。
まるで、まだ生きているかのように美しい。
それまで冷ややかな眼差しで凝視していた愁陽が、静かにつぶやいた。
「…………姉さん」
「っ、……え?」
いま、我が主はなんと言った?
マルはぎょっとして、愁陽のほうを見た。
今、目の前に首を吊るこの美しい女は、愁陽の姉姫だと言ったのではないか?
肩越しに僅かに見える主の横顔は、いつもよりさらに冷ややかにも見える。
「愁、陽さ、ま……いま、なんと?」
口の中が乾いて、うまく言葉が出てこない。静かに冷たい空気が流れていくような気がした。マルはふらふらとふらつきながらも、なんとか立ち上がった。
愁陽は片方の眉を僅かにあげて、伏し目がちに小さく息を吐くと俯いた。
「姉さん……。もう、いいでしょう」
「はい?」
マルが聞き間違えたのか、弟である愁陽がショックで何か口走ったのかと、もう一度マルが主に問いかけようと口を開いた瞬間、それまで項垂れていた女の首が急にブンッと勢いよく振り上がり、その大きな両の眼をカアァッと見開いた。
「っう、うわああああああああああああ~っ!!目がっ、目がっ、目があ~~~、開いてるぅ~~~」
マルは驚きのあまり腰が抜けて本日二度目の尻もちを盛大についた。
その隣りで愁陽は冷静に言う。
「落ち着け、マル。よく見ろ、首はしまっていない」
あ…………
マルが恐る恐る首つり女をもう一度見上げてみると、確かに首元の縄部分は、不自然に自身の手で持たれていて、首には全く縄も食い込んでいない。
「ほんとだ、首、吊ってない」
気の強そうな切れ長の目が二人を見下ろす。
「なあんだ。バレてたの」
派手な顔立ちの美人に似合う、凛とした艶やかな声。
愁陽はあからさまに溜息をついた。その顔はいつもの涼しげな表情を通り越して、見るものを凍りつかせるような気すら感じさせる。
「大体、姉さんの考えそうなことくらい、見え見えですよ」
「まあ、相変わらず面白みのない男ね」
姉はその美しい顔を歪ませて、心底嫌そうに答える。
「ありがとうございます」
弟である愁陽も相変わらずすました顔で答えながら、背後の木にぐさりと突き刺さった小刀をグッと抜く。
「ふん、誰も褒めていやしないわよ」
姉は弟に向かって憎たらしそうに言うと、愁陽は小刀を手に振り返りとても爽やかに微笑んだ。
「いいんですよ、姉さん。そのままの格好のあなたを残して、私たちは今すぐ下山しても」
「うっ」
彼女の足は、地上より30センチばかり高いところで、ぶらぶら揺れている。衣と同じく綺麗な真っ赤な靴を履いた先の細い爪先を、どんなにぴょこぴょこ延ばしてみても地面にまったく届かない。もちろん30センチでは届くわけがない。
「ちょっとぉ、それは困るわ。あんたが下ろさなきゃ、誰が下ろすのよ!」
「さあ、熊?」
「喰われるわっ!あんた、そんなことしてごらんなさい。死んで化けて出てやるから!」
「化けて出てこないで下さい。そんな暇人ではありませんから」
愁陽は涼しい顔してそう言うと、手にした小刀を姉姫の頭上にある紐めがけてシュッと音を立てて投げた。
吊るした紐はプツッと切れ、姉姫は無事転ぶことなくとトンッと地面に着地した。愁陽に負けず劣らず姫君とは思えないくらいの運動神経の持ち主らしい。
不自然な体勢でいたから少し肩が凝ったのか、彼女は首と肩をぐるっと回すと、首にかかった紐を外しながら弟へ礼のかわりに言った。
「私だって、あんたみたいなひねくれた奴のところに、化けて出てやるなんて厭よ」
「それは良かったです」
愁陽はまだそこいら中に突き刺さっている残りの小刀を抜き、集めて姉姫に手渡してやる。
「はあ~。まったく、これのどこが仙人の修行ですか?」
「仙人っ!?」
「失礼なっ。いかに印象的で心に残る登場をしようか、日夜考え努力しているのよ」
「こんな山奥で、どうして印象的な登場を考える必要があるのです?」
「こんな山奥だからこそ、たまの訪問客をいかにして歓迎するかが問題なのよ。」
マルは絶句した。何なんだ!?この姉弟の会話は。
そして、これが歓迎だったんだ……あり得ないし(泣)
もう、何かといろいろおかしい。
混乱するマルをよそに、へんてこな姉弟のバトルはなおも続いている。
「この辺にいると言えば、目つきの悪い鹿か食欲旺盛な熊。たまに人間がきたと思えば、あんただし」
「悪かったですね。そんな危険な場所なら、さっさと下山したらどうです?」
腕組をしてスラリと立つ愁陽と、それに向き合う形で凛と立つ彼女も、同じくらいの背丈がある。
少し結い上げた漆黒の髪の残りは背に艶やかに長く垂らし、鮮やかな紅色の衣が彼女の華やかな雰囲気によく似合っている。
愁陽もかなり整った顔立ちをしているが、姉姫はまた迫力のある美人だ。
そんな姉と弟が二人並んで立つ光景は、こんな山奥には眩しいくらいに華やかすぎてまったくの不釣り合いだ。
それにしても……と、マルは思う。
このさっきから繰り広げられる会話は、仮にも一国の王の後継者と、その姫君のものとは思えない。民が聞いたら、行く末が不安になるかも知れない……。
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