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第22話 これって、デートっぽいですよね!?①
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朝食には、マリアンヌと幼い姉弟、そして私だけで、さっき帰って来たはずのレイの姿はなかった。
今日はお城へはどうしたらいいのだろう。一緒に行くのかな……。
気まずい……
でも、昨夜言いすぎたこと、謝りたいな……
朝食の後、部屋へ戻るとメアリが「お着替えを」と言うので、着ていた仕事用のドレスから、出してくれた服に着替えてみる。
それは白いブラウスに、薄いピンクの足首まである丈の長いスカートだった。胸元はフリルがついていて、腰には幅広のピンクのリボン。ドレスに比べて華やかではないけど、ちゃんと可愛い。
メアリが髪も結ってくれた。
ハーフアップにして、念入りに髪をといてくれる。お蔭でさらさらになった。
仕上げにスカートと同じピンクのリボンを結んでくれる。
この数年、髪にピンクのリボンなんて付けたことなかったから、なんかちょっと照れるのだけど。
メアリが鏡越しに私の姿を見て「バッチリです!」と、なぜか手を叩いて満足そうに言った。
なんだか柄にもなく、可愛らしく甘めの格好をさせられて、お化粧も念入りにどうして?と不思議に思いながら、玄関のフロアへ続く階段へと向かった。
すると、その階段を下りたところに、レイが一人で立っていた。
「っ!?」
彼は、ベージュのシャツに黒のゆるっとしたパンツをはいていて、ポケットに手をつっこんだ格好で立っている。
ストリート系っぽい感じ。騎士の彼とは全然違って、そんな格好してたら、普通に街を歩いてる10代の男の子って見える。
いつもとは違う彼の姿に、なんだか胸がドキドキする。
階段を下りていく私に気づいて、彼もこちらを見上げる。
ちょっとびっくりした顔をしてたけど、何も言わないでいる。
あ……、やっぱりピンクのリボンとか甘い格好、似合わなかったかな……
着替えに戻りたい……と思いながら、階段を降りてレイの横に立つ。
「今日は街へ行こうと思う」
あ、お仕事でこっそり街の様子でも見に行くのですね?と私は考えて
「あ、そうなんですね」と普通に流して答えた。
この格好も、きっとお仕事がしやすいようカモフラージュなんですね。
私たちは馬車までお互い無言のまま乗り込んだ。
彼は馬車の窓の縁に肘をのせて頬杖ついたまま、外の景色を見ている。
やっぱり、昨日のことは、早めに謝らなきゃだよね。
私は覚悟を決めて、勇気を出して言った。
「あの…」「昨日は…」
『あ…』
二人で被ってしまった。
彼も頬杖をやめて、こっちを見る。
せっかく勇気出したのに……一気に萎んでいく。
「あー、何?」
「あ、いえ。お先にどうぞ」
私が彼に促すと、少しこちらをじっと見ていた彼は、スッと視線を窓の外にうつし、
「……昨日は、悪かった」
と、少し恥ずかしそうに言った。
「ミツキの気持ち、考えたらすぐに分かることなのに、もっと早く聞くべきだった。一番、辛いのは、あんただったよな」
彼の声が、深く低く、染み込んでくる。
レイがとても丁寧に、心から言ってくれてるのが伝わってくる。
もう一度、私の目を見て「本当にごめん」と彼が言った。
今の彼は、貴族や騎士団長の彼ではなく、19歳の等身大のレイって感じがする。
私も姿勢をただして、彼と向き合う。
「ううん、私の方こそ。レイに言ったって仕方のないことなのに。八つ当たりしちゃった」
彼の言葉のお蔭で、すんなりと心に溜まってた言葉が出てきた。
「昨日は、ひどい言い方しちゃって、ごめんなさい」
そう言って、両手を膝に頭を深々と下げた。
「あ、いや、べつに。ミツキが怒るのも当然だから」
「ううん、そんなことは……」
「いや……、ほんと」
と言って、なんかお互い「どうぞどうぞ」と譲り合ってるみたいで、可笑しくてフフフッと笑ってしまった。
「ふふっ、じゃあ、お互い様ってことで」
「……やっと笑った」
「え?」
そして、彼もニコッと笑ったのだ。
え?…ニコッ?
いま、ニコって笑いました!?
今まで仏頂面しか見てなかった顔面偏差値高スペックイケメンのニコッて、破壊力ハンパないんですけど!
なんか、いつもの貴族の彼とは違う表情。
そのあと、すぐに馬車は止まった。
街の賑やかなところの近くまで行き、そこで下ろしてもらった。
少し歩くと、私たちは市場のメインストリートに出た。
TVで見る外国のマーケットのような風景。石畳みの両側にテントを張った露店が並んでいる。
色とりどりの果物、パン屋、魚屋、肉屋、焼き菓子……
お店の人もお客さんも元気でに賑やかだ。
わあ!
ワクワクする!
スーパーや日本の商店街って、パックやショーケースに入って売られてるし、肉も魚も切って売られてることが多い。
まあ、魚は1匹丸ごとの姿で売られてることもあるけど、ここの魚屋は見たことのないカラフルな色の魚も並んでて、肉屋も魚屋も売り方が豪快だ。
「気になるものがあったら言えよ」
「え、うん」
長身レイは買い物客で溢れる通りを器用にスイスイ抜けていく。
けれど、背の低い私は、人とぶつからないように、人混みに流されないようにしながら、ちょこちょこと前に進むのに必死だ。
そんな私に気がついて、レイが「ほら」って手を私に伸ばした。
「え?」
これは手を繋いでもいいのでしょうか?
私はレイが差し出してくれた大きな手を見つめて、固まってしまった。
悲しいかな、こんなシチュエーションは小説やアニメの2次元でしか知らないので、私はすぐに対応出来ない。
「はぐれたら困るから」
とレイは言って、すぐに「あ、嫌ならいい」と手を引っ込めようとした。
「い、嫌じゃないですっ!」
慌てて彼の手に飛びつくように、差し出された手を取ってしまった。
ああ、可愛く対応したい……
今日はお城へはどうしたらいいのだろう。一緒に行くのかな……。
気まずい……
でも、昨夜言いすぎたこと、謝りたいな……
朝食の後、部屋へ戻るとメアリが「お着替えを」と言うので、着ていた仕事用のドレスから、出してくれた服に着替えてみる。
それは白いブラウスに、薄いピンクの足首まである丈の長いスカートだった。胸元はフリルがついていて、腰には幅広のピンクのリボン。ドレスに比べて華やかではないけど、ちゃんと可愛い。
メアリが髪も結ってくれた。
ハーフアップにして、念入りに髪をといてくれる。お蔭でさらさらになった。
仕上げにスカートと同じピンクのリボンを結んでくれる。
この数年、髪にピンクのリボンなんて付けたことなかったから、なんかちょっと照れるのだけど。
メアリが鏡越しに私の姿を見て「バッチリです!」と、なぜか手を叩いて満足そうに言った。
なんだか柄にもなく、可愛らしく甘めの格好をさせられて、お化粧も念入りにどうして?と不思議に思いながら、玄関のフロアへ続く階段へと向かった。
すると、その階段を下りたところに、レイが一人で立っていた。
「っ!?」
彼は、ベージュのシャツに黒のゆるっとしたパンツをはいていて、ポケットに手をつっこんだ格好で立っている。
ストリート系っぽい感じ。騎士の彼とは全然違って、そんな格好してたら、普通に街を歩いてる10代の男の子って見える。
いつもとは違う彼の姿に、なんだか胸がドキドキする。
階段を下りていく私に気づいて、彼もこちらを見上げる。
ちょっとびっくりした顔をしてたけど、何も言わないでいる。
あ……、やっぱりピンクのリボンとか甘い格好、似合わなかったかな……
着替えに戻りたい……と思いながら、階段を降りてレイの横に立つ。
「今日は街へ行こうと思う」
あ、お仕事でこっそり街の様子でも見に行くのですね?と私は考えて
「あ、そうなんですね」と普通に流して答えた。
この格好も、きっとお仕事がしやすいようカモフラージュなんですね。
私たちは馬車までお互い無言のまま乗り込んだ。
彼は馬車の窓の縁に肘をのせて頬杖ついたまま、外の景色を見ている。
やっぱり、昨日のことは、早めに謝らなきゃだよね。
私は覚悟を決めて、勇気を出して言った。
「あの…」「昨日は…」
『あ…』
二人で被ってしまった。
彼も頬杖をやめて、こっちを見る。
せっかく勇気出したのに……一気に萎んでいく。
「あー、何?」
「あ、いえ。お先にどうぞ」
私が彼に促すと、少しこちらをじっと見ていた彼は、スッと視線を窓の外にうつし、
「……昨日は、悪かった」
と、少し恥ずかしそうに言った。
「ミツキの気持ち、考えたらすぐに分かることなのに、もっと早く聞くべきだった。一番、辛いのは、あんただったよな」
彼の声が、深く低く、染み込んでくる。
レイがとても丁寧に、心から言ってくれてるのが伝わってくる。
もう一度、私の目を見て「本当にごめん」と彼が言った。
今の彼は、貴族や騎士団長の彼ではなく、19歳の等身大のレイって感じがする。
私も姿勢をただして、彼と向き合う。
「ううん、私の方こそ。レイに言ったって仕方のないことなのに。八つ当たりしちゃった」
彼の言葉のお蔭で、すんなりと心に溜まってた言葉が出てきた。
「昨日は、ひどい言い方しちゃって、ごめんなさい」
そう言って、両手を膝に頭を深々と下げた。
「あ、いや、べつに。ミツキが怒るのも当然だから」
「ううん、そんなことは……」
「いや……、ほんと」
と言って、なんかお互い「どうぞどうぞ」と譲り合ってるみたいで、可笑しくてフフフッと笑ってしまった。
「ふふっ、じゃあ、お互い様ってことで」
「……やっと笑った」
「え?」
そして、彼もニコッと笑ったのだ。
え?…ニコッ?
いま、ニコって笑いました!?
今まで仏頂面しか見てなかった顔面偏差値高スペックイケメンのニコッて、破壊力ハンパないんですけど!
なんか、いつもの貴族の彼とは違う表情。
そのあと、すぐに馬車は止まった。
街の賑やかなところの近くまで行き、そこで下ろしてもらった。
少し歩くと、私たちは市場のメインストリートに出た。
TVで見る外国のマーケットのような風景。石畳みの両側にテントを張った露店が並んでいる。
色とりどりの果物、パン屋、魚屋、肉屋、焼き菓子……
お店の人もお客さんも元気でに賑やかだ。
わあ!
ワクワクする!
スーパーや日本の商店街って、パックやショーケースに入って売られてるし、肉も魚も切って売られてることが多い。
まあ、魚は1匹丸ごとの姿で売られてることもあるけど、ここの魚屋は見たことのないカラフルな色の魚も並んでて、肉屋も魚屋も売り方が豪快だ。
「気になるものがあったら言えよ」
「え、うん」
長身レイは買い物客で溢れる通りを器用にスイスイ抜けていく。
けれど、背の低い私は、人とぶつからないように、人混みに流されないようにしながら、ちょこちょこと前に進むのに必死だ。
そんな私に気がついて、レイが「ほら」って手を私に伸ばした。
「え?」
これは手を繋いでもいいのでしょうか?
私はレイが差し出してくれた大きな手を見つめて、固まってしまった。
悲しいかな、こんなシチュエーションは小説やアニメの2次元でしか知らないので、私はすぐに対応出来ない。
「はぐれたら困るから」
とレイは言って、すぐに「あ、嫌ならいい」と手を引っ込めようとした。
「い、嫌じゃないですっ!」
慌てて彼の手に飛びつくように、差し出された手を取ってしまった。
ああ、可愛く対応したい……
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