上 下
12 / 35

第12話 しあわせな魔法と小さな妖精

しおりを挟む
屋敷の西洋風の庭園は緑にあふれていて、整えられた花壇には、様々な色とりどりの花が、綺麗に咲いていた。
青い空に、緑がとても綺麗に映える。

そもそもランドルフ家は、草木や大地の加護を受けている家系らしい。
だから、昔から屋敷の庭園も緑豊かで、草花も綺麗によく育つのだと、マリアンヌさんが教えてくれた。

この国の人たちは、私達の世界とは違い、生まれつき魔法や異能がある人もいるそうだけど、生まれた家系によって大きく影響を受けたりするそうだ。
マリアンヌさんも何か力を持っているのだろうか。

私がふと気になっていると、表情かおに出ていたのか、マリアンヌさんが、ふふっと小さく笑った。

「私はね、大したことは出来ないのだけど」
そう言って、両の手のひらでつぼみを作るように合わせると、パッと花が開くように空に向けて開いた。
すると、そこから綺麗な花びらが、まるで結婚式のチャペルでかれるフラワーシャワーのように飛び出して、キラキラと光の粒と一緒にを宙を舞った。

「わあ、綺麗!」
思わず、感嘆の声を上げる。
マリアンヌさんらしくて、とても可愛らしい。

「私もね、母がランドルフ家の遠い縁者の家系だから、少しだけ緑の加護を受けているの。あ、あとは、これね!」

近くのチューリップに手をかざすと、チューリップが楽しげにゆらゆら揺れた。
あ、なんかこんな玩具おもちゃあった。
音に反応して踊るやつ。ダンシングフラワーだっけ?

マリアンヌさんは眉を下げて、困ったように笑う。
「あまり役には立たなくて」
「でも、私は好きです!優しくて、見た人が、とても幸せになれる魔法だと思います!」
「ふふ、ありがとう。子どもたちも喜んでくれるから、まあ良かったのかしらって思うわ」

マリアンヌさんがそう言ったとき、キラキラと嬉しそうに咲くチューリップの中に、小さな小さな女の子が見えた。
赤いチューリップから顔を覗かせていたと思ったら、もそもそと出てくる。
手のひらくらいの大きさの女の子。
花の妖精だ。

私が驚かないのは、実は子どもの頃にも見えていたから。
普通の人には、見えないものなんだって知ったのは、小学校に入る頃で。
それまで幼い頃の私は、たいていの人が見えたり、見えることが不思議なことではないんだと思っていた。
なぜなら、パパも見えていたから。

お蔭で気味が悪いとか、嘘つきとかいじめられたこともあって、お友達つきあいが難しい時代があった。
見えてしまうことが嫌で、いつの間にか見ないようにして、妖精の存在にえて気づかないふりをしていたせいか、成長するにつれて、日常では目にすることもなくなったのだけれど。

この世界に来たからかな……。
久しぶりに見てしまった。

大人になって、子どもの頃のことは、私の幻覚げんかくか勘違いだったのかなって思うようにもなっていたけれど、やっぱり今もはっきり見えている。

赤い服を着た小さな妖精の女の子と、バッチリ目があっていて、大きな口を開けて笑ってる。

「ミツキ?」
マリアンヌさんに名前を呼ばれてハッとする。
「あ!お誕生パーティーにも最高ですよね!」

なんとなく、妖精が見えることは、やっぱり触れないでおくことにした。
妖精とは目が合っていないフリをして、すぅっと妖精から目をそらす。

あー……私は、見えてませんよ、何も見えてない。
とは目、合ってないです。

私はマリアンヌさんのほうを向いて、にっこりと笑った。
「そうなの!パーティーには大活躍よ、ふふふ」
マリアンヌさんは、嬉しそうに両手をパチンと合わせた。

そして、当主であるレイはもっとすごい力を持っている、ということを教えてくれた。
だからこそ、まだ19歳という若さで、ランドルフ家の当主であり、近衛騎士団長として一目置かれているのだと。
もちろん剣の強さもこの国で1、2番の腕前だそうだけど、魔力もなかなかなものだそうだ。

なんかあの紺青こんじょうに、めちゃくちゃ綺麗な顔で、さらに無表情で強いときたら、容赦なくて怖そうだな。
アニメやネット小説の見過ぎかな……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

姉の身代わりで冷酷な若公爵様に嫁ぐことになりましたが、初夜にも来ない彼なのに「このままでは妻に嫌われる……」と私に語りかけてきます。

恋愛
姉の身代わりとして冷酷な獣と蔑称される公爵に嫁いだラシェル。 初夜には顔を出さず、干渉は必要ないと公爵に言われてしまうが、ある晩の日「姿を変えた」ラシェルはばったり酔った彼に遭遇する。 「このままでは、妻に嫌われる……」 本人、目の前にいますけど!?

【完結】公爵子息の僕の悪夢は現らしいが全力で拒否して大好きな婚約者を守りたい

宇水涼麻
恋愛
 公爵家の次男ボブバージルは、婚約者クラリッサが大好きだ。クラリッサの伯爵邸にも遊びに行き、クラリッサの家族とも仲がいい。  そんな時、クラリッサの母親が儚くなる。  喪が開けた時、伯爵が迎えた後妻はとても美しく、その娘もまた天使のようであった。  それからのボブバージルは、悪夢に襲われることになる。クラリッサがいじめられ、ボブバージルとクラリッサは、引き裂かれる。  さらには、ボブバージルの兄が殺される。  これは夢なのか?現なのか?ボブバージルは誰にも相談できずに、一人その夢と戦う。  ボブバージルはクラリッサを救うことはできるのか?そして、兄は? 完結いたしました。 続編更新中。 恋愛小説大賞エントリー中

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

愛することをやめた令嬢は、他国へ行くことにしました

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、婚約者ダーロス王子が浮気していることを知る。  そのことを追求しただけで、ダーロスは私に婚約破棄を言い渡してきた。  家族からは魅力のない私が悪いと言われてしまい、私はダーロスを愛することをやめた。  私は家を捨てて他国へ行くことにして――今まで私が国に貢献していたことを、元婚約者は知ることとなる。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

処理中です...