上 下
10 / 36

第10話 ランドルフ家の人々

しおりを挟む
私達を乗せた馬車は屋敷の前に到着した。
私が馬車を降りるとき、レイは馬車のすぐ横に立つけれど、今度はさっきの城の時のように、手を差し出してはくれなかった。
きっと私が、嫌がって手を取らなかった、って思われてしまったのかも知れないな。

ちょっと残念に思いながら、私も続いて降りると、執事みたいな格好をした白髪混じりの年配の男性がお迎えに出て待っていてくれた。

「おかえりなさいませ。レイファス様」
「ああ」
「そちらの方でございますね?整っております」
「そうか、急ですまない」
え?いつの間にか知らせていてくれたんだ。

「いえ。お珍しいことなので、屋敷の者たち喜んでおりますよ」
「はあぁ……」
明らかにレイはため息を吐いて、そんなんじゃないってと嫌そうな顔をしていた。

「いえいえ、今までご友人もあまりお呼びにならない方が、お客様をお連れになるとは。私も嬉しゅうございますよ」
若いのに?と私は思いながら、二人の会話を聞いていた。
友達とか、遊びに招いたりしないのかな。
玄関に向かって歩くレイに、男性も従って歩きながら嬉しそうだ。

「しかも、こんなお可愛らしいお嬢様とは。私も長生きしてみるもんですな、フォ、フォ、フォ」
「おい」
レイは立ち止まって突っ込むも、怒ってるふうではなかった。
「だから、そういうんじゃないって」
ため息混じりにブツブツ言いながら、彼は私の先を歩いて行った。

「レイお兄さま!」
「にいさま!おかえりなさい!」

私達が屋敷の玄関を入ると、何人かの使用人の人たちが頭を下げて並ぶ中、男の子と女の子の可愛い声が響いた。
いかにも貴族のお嬢様とお坊ちゃまって感じの、8、9歳くらいの可愛い女の子と5、6歳くらいの男の子が駆け寄って来る。
わあ~っ!お姫様と王子様だっ!ピッタリと当てはまるくらい二人とも可愛らしい。

二人ともレイと少し違って、明るい栗色の髪に瞳の色は綺麗な緑色だ。
元気で可愛い姉弟きょうだいは、レイの腰に抱きついて嬉しそうにお出迎えをしていた。

レイも優しい笑みを浮かべて、嬉しそうに二人の頭をなでている。

「ああ、ただいま」
あ、そんなふうに笑うんだ。

一人っ子で、すでに家族もいない私は、一瞬、羨ましいのとちょっとだけ寂しさを感じた。

「ねえ、レイお兄さま!そちらのお姉さまがお客様なんでしょ?」
レイの腰に抱きついていた女の子が目をキラキラさせて私のほうを見た。
「ねえ、ねえ。早くご紹介してください」
弟くんも興味津々な感じで、私を見てニコニコしている。

「ああ、ミツキだ。大切なお客さまだから、二人とも頼むよ」
レイが優しい声音で二人に言うと、二人とも元気にハーイって返事する。

「ミツキのお洋服はなんだか変わってるのね」
そう言ったのは、やっぱりお洒落が気になるのか、女の子のほうだった。

この国の女性は庶民でも、みな足首まである服を着ていて、貴族はドレスを着ている。
やっぱりレイの妹姫も、足首まである可愛らしいレモン色のドレスを着ていた。

私のように膝下のフレアスカートだと、だいぶ短すぎるわよね。
貴族のお姫様から見ると、きっと驚きに違いない。

「ミツキはね、ここから遠い国から来たんだよ。ミツキの国の服装なんだ。だからこの国のこと、知らないこともあるかも知れないから、その時は教えてあげて欲しいな。できるかな?」
レイがうまくフォローしてくれた。

「もちろんよ!」
「ボクにもまかせてよ!」
ああ、なんて可愛らしい姉弟きょうだいなの!

「ミツキ!」
二人はそれぞれ私の名前を呼びながら、目をキラキラさせて今度は私に抱きついてくる。

「大丈夫だよ!」
「困ったことがあったら、私に言ってね!」

ほんと二人ともっ、可愛すぎる~~~っ!

「ふふ…ありがとう。よろしくね!」
私も緊張がほぐれて、笑みが自然とこぼれる。

二人はお兄さんとずいぶん違って、とても人懐っこい性格のようだ。

そんな姉弟きょうだいの後ろから、とても綺麗というか可愛らしいという言葉がピッタリ当てはまりそうなすごい美人が姿を現した。

若く見えるけど30歳くらいだろうか。とても可愛らしいけど、落ち着きがある。

白いレースのフリルがたくさんあしらわれた薄いピンク色のドレスに、胸元が大きくあいていて、白くふくよかな胸だとわかるけど、いやらしさを感じない。

「お出迎えに遅れてごめんなさい」
「マリアンヌ」
「おかえりなさい、レイ」
「ただいま」

そう言って、二人はさりげなくハグをする。
な、なんだろう!?この感じは……っ
私は、なんかここにいてはいけないような、見てはいけないような気がして、心の中でおどおどと慌ててしまった。

ど、どど、どうゆう関係!?
レイのお母さんにしては若すぎるよね!?
それに、マリアンヌさんは小さな妹弟きょうだいと同じ栗色の髪で緑色の瞳をしている。

マリアンヌと挨拶を交わしたレイは私の方へ振り向き、彼女の腰に手を添えて紹介してくれた。
「ミツキ、彼女はマリアンヌ。この屋敷の女主人だ。困ったことがあったら、彼女に相談するといい」

お、女主人!?って、もしかして、レイには奥様がいたのぉ!?
いや?子どもたちはレイを“お兄さま”って言ってた。

婚約者とか!?
それとも、同棲している恋人とか!?
いや、じつは内縁の!?
あーっ、だから私の滞在を拒んでいたのかっ!!
いろんな想像がぐるぐると脳内を駆け巡る。

「マリアンヌです。ミツキよろしくね。どうぞここにいる間は我が家だと思って、過ごしてね」
とても優しく挨拶してもらったのだけど、あまりの予想していなかったことすぎて、そのあとのことは残念ながら、あまり覚えていない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...