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クレハさんが来て、課題もほとんど終わった。
「課題は、あとどれくらいで終わりそうですか?」
「ええっと、あと2ページです」
「私も、あと少し」
「じゃあ僕はお茶を淹れてきます。終わってから話をしましょう」
クレハさんはお茶を淹れにキッチンスペースへと向かう。
待たせないようにと、わたしも急いで文字を書く。ヘレンもうーんと唸りながらも計算問題を終えた。
終わったらクレハさんがわたしたちの分もお茶を淹れてくれた。茶色いお茶な香ばしい香りがした。
「僕が元いた場所にあったお茶と似ていたので、淹れてみました」
「烏龍茶かほうじ茶みたいな感じがします」
「そう、それです」
お茶の葉自体が現代のものと違うらしくて、どちらとも言えないけど、似ていると言われたらそんな感じ。
すっきりした味で、気持ちが切り替わる。
「――シズクさん、僕に料理を教えてください。お願いします」
「え……えーっと。でも、わたし、普通の料理しかできないですよ?」
「貴方の言う普通の料理は、僕の知る料理と違うと思うのです」
「そうですか……?」
ふと思い出したのは、ヘレンと私の元の時代が違うことだ。
もしかして?とクレハさんにも聞いてみる。
やっぱり世代が違う。私の祖父くらいの時代の人だ。粗食だったのか、あっさりとした味付けにも納得がいく。
「クレハさんが、こちらで食べたもので好みだった味はありますか?」
「ああ、それならあります」
教えてくれたのは、こちらに来て最初の食事を作っていたケントさんの料理だった。
「だったら、彼から教えてもらうのはどうですか?料理人の経験がある彼なら、きっと教えることも上手だと思いますよ」
クレハさんはうーんと悩んで、首を振った。
「一度お願いしたのですが、断られてしまったのです」
「……そうなんですか。じゃあ、難しそうですね」
わたしが話した印象だと、気難しくもなさそうだったし、なにより料理に対して誇りを持っていそうだった。
料理の感想を聞きに来たくらいなのだから。
「わたしからも、教えてもらえないかどうかを聞いてみましょうか?」
「良いんですか?」
「もちろんですよ。だって、毎日の食事は、美味しいものを食べたいじゃないですか。でも、断られてしまったらすみません」
クレハさんはほっとした表情になり、「ぜひお願いします」と言った。
翌朝の料理は、ケントさんがいる班が担当だった。
トースト、スクランブルエッグ、お肉と野菜炒め、黄金色のスープ。どれもやっぱり美味しかった。
交代で食事を作ると言っていたけれども、料理が上手な人が担当することが多いらしい。翌々日もケントさんが担当という話を耳にした。
食事が終わった後、ケントさんがやってきた。
「シズクさん、良かったら明後日から俺と一緒に料理をしないかい?」
「えっ、良いんですか?」
「ああ、その代わり、朝食作りの日は早起きになるけど」
「わ、わかりました。がんばって起きます!」
ふたつ返事とはこのことだ。
ケントさんと仲良くなって、クレハさんと縁をつなぎたい。それにわたしも美味しい料理を作ってみたいと思った。
「課題は、あとどれくらいで終わりそうですか?」
「ええっと、あと2ページです」
「私も、あと少し」
「じゃあ僕はお茶を淹れてきます。終わってから話をしましょう」
クレハさんはお茶を淹れにキッチンスペースへと向かう。
待たせないようにと、わたしも急いで文字を書く。ヘレンもうーんと唸りながらも計算問題を終えた。
終わったらクレハさんがわたしたちの分もお茶を淹れてくれた。茶色いお茶な香ばしい香りがした。
「僕が元いた場所にあったお茶と似ていたので、淹れてみました」
「烏龍茶かほうじ茶みたいな感じがします」
「そう、それです」
お茶の葉自体が現代のものと違うらしくて、どちらとも言えないけど、似ていると言われたらそんな感じ。
すっきりした味で、気持ちが切り替わる。
「――シズクさん、僕に料理を教えてください。お願いします」
「え……えーっと。でも、わたし、普通の料理しかできないですよ?」
「貴方の言う普通の料理は、僕の知る料理と違うと思うのです」
「そうですか……?」
ふと思い出したのは、ヘレンと私の元の時代が違うことだ。
もしかして?とクレハさんにも聞いてみる。
やっぱり世代が違う。私の祖父くらいの時代の人だ。粗食だったのか、あっさりとした味付けにも納得がいく。
「クレハさんが、こちらで食べたもので好みだった味はありますか?」
「ああ、それならあります」
教えてくれたのは、こちらに来て最初の食事を作っていたケントさんの料理だった。
「だったら、彼から教えてもらうのはどうですか?料理人の経験がある彼なら、きっと教えることも上手だと思いますよ」
クレハさんはうーんと悩んで、首を振った。
「一度お願いしたのですが、断られてしまったのです」
「……そうなんですか。じゃあ、難しそうですね」
わたしが話した印象だと、気難しくもなさそうだったし、なにより料理に対して誇りを持っていそうだった。
料理の感想を聞きに来たくらいなのだから。
「わたしからも、教えてもらえないかどうかを聞いてみましょうか?」
「良いんですか?」
「もちろんですよ。だって、毎日の食事は、美味しいものを食べたいじゃないですか。でも、断られてしまったらすみません」
クレハさんはほっとした表情になり、「ぜひお願いします」と言った。
翌朝の料理は、ケントさんがいる班が担当だった。
トースト、スクランブルエッグ、お肉と野菜炒め、黄金色のスープ。どれもやっぱり美味しかった。
交代で食事を作ると言っていたけれども、料理が上手な人が担当することが多いらしい。翌々日もケントさんが担当という話を耳にした。
食事が終わった後、ケントさんがやってきた。
「シズクさん、良かったら明後日から俺と一緒に料理をしないかい?」
「えっ、良いんですか?」
「ああ、その代わり、朝食作りの日は早起きになるけど」
「わ、わかりました。がんばって起きます!」
ふたつ返事とはこのことだ。
ケントさんと仲良くなって、クレハさんと縁をつなぎたい。それにわたしも美味しい料理を作ってみたいと思った。
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