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15、母親
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小さなテーブルに所狭しと料理やケーキが並んでいる。
全てアルノルトの好物ばかりである。
今日は朝からデイノルトが腕によりをかけて手作りした。
デイノルトが席に着いて待っていると、アルノルトが部屋に入ってきた。
美しい銀色の髪、煌めく緑色の目、きめ細かい陶磁のような白い肌、すらりとした体躯。
並みの者がアルノルトを見たら一目で魅了されるであろう。
いや、それはさすがに親バカだろうか。
それにしても、ずいぶん大きくなったものだ。
デイノルトの腕にすっぽり収まるくらいあんなに小さかったのに。
サミュエルの娘のロレインから報告があったが、アルノルトは学校では優等生らしい。
魔力は使えないが剣の腕は一流で、武道大会で優勝したこともあると聞いている。
アルノルトが出場した武道大会を見に行きたかったが、アルノルトにかなり嫌がられてしまったので諦めざる得なかった。
本当は行きたかったのに。
誰にでも優しく、文武両道でかなり女子生徒から人気だということもロレインから聞いている。
最近、アルノルトはなかなか学校生活について話してくれないから、デイノルトのアルノルト情報はロレインからのみになっている。
ちょっと寂しいが仕方ない。
アルノルトが静かに席に着いた。
「アル、15歳の誕生日おめでとう」
デイノルトは心からアルノルトを祝福した。
こんなに立派に成長してくれて父様は嬉しいぞ。
反抗期で生意気なところはどうして良いか分からぬが、とりあえず元気に育ってくれて良かった。
そして、俺様もよく頑張った!
自分で自分を褒め称えてやりたい。
アルノルトは何も言わず、うつむいている。
ちょっと表情が暗いかもしれない。
「どうした?」
デイノルトはアルノルトが具合が悪くなったのかと心配になる。
デイノルトは席を立って、アルノルトに近づいた。
「俺の母様って人間なのか?」
アルノルトがポツリと呟いた。
何か不穏なことを聞かれた気がする。
アルノルトの母親のことはあまり思い出したくないし、大切なアルノルトにも話したくない。
あの裏切り者を俺様は絶対許さない。
だが、あの裏切り者の子であるアルノルトはとても可愛かった。
顔立ちは俺様に似ているしな。
デイノルトはアルノルトの母親のことを忘れることにしたのだ。
あの忌まわしい記憶を封印しなければ、ここまで愛情深くアルノルトを育てられなかったと思う。
「アルノルト、貴様に母はいないと言っているだろ……」
「父様が母様の話をしないのは知ってる」
アルノルトがまっすぐにデイノルトを見つめてきた。
「魔力が使えないのは、俺が人間だから?」
アルノルトが泣きそうな声で言った。
もしかして、魔力が使えないから学校でいじめられているのだろうか。
女子生徒からは人気だと言われているが、男子生徒からは見下されているとか……?
「確かにアルノルトには人間の血が流れている。だが、魔力がないわけじゃない」
デイノルトはアルノルトの不安が解消出来るようにキッパリと言った。
「どういうこと?」
アルノルトは納得出来ないというようにデイノルトに食ってかかった。
「あまりに強い魔力だから魔力封じをしてあるだけだ。16歳になったら解除されるから心配しなくて良い」
デイノルトはアルノルトの銀色の頭をわしゃわしゃ撫でた。
アルノルトがデイノルトの手を強く掴んだ。
「父様はどうして下等生物の人間なんかと結婚したの?」
アルノルトの緑色の目がデイノルトを捕らえて離さない。
アルノルトの目から、目をそらすことが出来なかった。
そろそろ話すべきか。
この子には話しておかなければならないことだしな。
万が一、人間側の誰かに唆されても困る。
デイノルトにとっては忌まわしい記憶だが、アルノルトには知る権利があるし。
サミュエルにも他の誰にも話したことはなかった。
「アルノルト、聞いて欲しい話があるんだ……」
全てアルノルトの好物ばかりである。
今日は朝からデイノルトが腕によりをかけて手作りした。
デイノルトが席に着いて待っていると、アルノルトが部屋に入ってきた。
美しい銀色の髪、煌めく緑色の目、きめ細かい陶磁のような白い肌、すらりとした体躯。
並みの者がアルノルトを見たら一目で魅了されるであろう。
いや、それはさすがに親バカだろうか。
それにしても、ずいぶん大きくなったものだ。
デイノルトの腕にすっぽり収まるくらいあんなに小さかったのに。
サミュエルの娘のロレインから報告があったが、アルノルトは学校では優等生らしい。
魔力は使えないが剣の腕は一流で、武道大会で優勝したこともあると聞いている。
アルノルトが出場した武道大会を見に行きたかったが、アルノルトにかなり嫌がられてしまったので諦めざる得なかった。
本当は行きたかったのに。
誰にでも優しく、文武両道でかなり女子生徒から人気だということもロレインから聞いている。
最近、アルノルトはなかなか学校生活について話してくれないから、デイノルトのアルノルト情報はロレインからのみになっている。
ちょっと寂しいが仕方ない。
アルノルトが静かに席に着いた。
「アル、15歳の誕生日おめでとう」
デイノルトは心からアルノルトを祝福した。
こんなに立派に成長してくれて父様は嬉しいぞ。
反抗期で生意気なところはどうして良いか分からぬが、とりあえず元気に育ってくれて良かった。
そして、俺様もよく頑張った!
自分で自分を褒め称えてやりたい。
アルノルトは何も言わず、うつむいている。
ちょっと表情が暗いかもしれない。
「どうした?」
デイノルトはアルノルトが具合が悪くなったのかと心配になる。
デイノルトは席を立って、アルノルトに近づいた。
「俺の母様って人間なのか?」
アルノルトがポツリと呟いた。
何か不穏なことを聞かれた気がする。
アルノルトの母親のことはあまり思い出したくないし、大切なアルノルトにも話したくない。
あの裏切り者を俺様は絶対許さない。
だが、あの裏切り者の子であるアルノルトはとても可愛かった。
顔立ちは俺様に似ているしな。
デイノルトはアルノルトの母親のことを忘れることにしたのだ。
あの忌まわしい記憶を封印しなければ、ここまで愛情深くアルノルトを育てられなかったと思う。
「アルノルト、貴様に母はいないと言っているだろ……」
「父様が母様の話をしないのは知ってる」
アルノルトがまっすぐにデイノルトを見つめてきた。
「魔力が使えないのは、俺が人間だから?」
アルノルトが泣きそうな声で言った。
もしかして、魔力が使えないから学校でいじめられているのだろうか。
女子生徒からは人気だと言われているが、男子生徒からは見下されているとか……?
「確かにアルノルトには人間の血が流れている。だが、魔力がないわけじゃない」
デイノルトはアルノルトの不安が解消出来るようにキッパリと言った。
「どういうこと?」
アルノルトは納得出来ないというようにデイノルトに食ってかかった。
「あまりに強い魔力だから魔力封じをしてあるだけだ。16歳になったら解除されるから心配しなくて良い」
デイノルトはアルノルトの銀色の頭をわしゃわしゃ撫でた。
アルノルトがデイノルトの手を強く掴んだ。
「父様はどうして下等生物の人間なんかと結婚したの?」
アルノルトの緑色の目がデイノルトを捕らえて離さない。
アルノルトの目から、目をそらすことが出来なかった。
そろそろ話すべきか。
この子には話しておかなければならないことだしな。
万が一、人間側の誰かに唆されても困る。
デイノルトにとっては忌まわしい記憶だが、アルノルトには知る権利があるし。
サミュエルにも他の誰にも話したことはなかった。
「アルノルト、聞いて欲しい話があるんだ……」
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