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12、視察
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デイノルト達はようやく人間界と魔界の国境近くまでたどり着いた。
「この地域は治安が悪くなっています。魔王様もお気をつけください」
サミュエルは鋭い目付きで周りを警戒している。
「昔から治安は悪いと思うが」
デイノルトは首をかしげながら言った。
この地域は人間界との貿易によって魔界で一番栄えているが、元々かなり治安が悪い地域だ。
「最近は特に治安が悪いのです。人間による通り魔も横行しているそうです」
サミュエルは痛ましそうに目を伏せた。
そんなことになっているとは知らなかった。
ちょっと前まではそんなことはなかったはずだが。
サミュエルが言うには人間に殺される魔物が後を絶たないそうだ。
「人間界と不可侵契約を結んでいなかったか?」
デイノルトは首をかしげた。
人間界と魔界は貿易は可能だが、お互いの領土は荒らさないという契約を人間界の王と結んでいたはずだった。
先代魔王が治めていた時代は無法地帯だった為、人間も魔族も多くの被害者を出した。
毎日が戦いの連続だった。
転機が起きたのはデイノルトが魔王になってしばらく経ってからである。
先代魔王が勇者によって倒された。
先代魔王は人望はなかったが魔界の象徴ではあったため、先代魔王が勇者に倒されたことに怒りを覚える者も多かった。
戦争になるかならないかの緊迫した状態が長く続いたのだ。
しかし、その状況を打破した出来事があった。
人間界の王がデイノルトに不可侵契約を持ち掛けてきて、デイノルトはそれを受け入れたのだ。
因みに、その人間界の王の血筋からは多くの勇者が輩出されているらしい。
この人間界の王の息子がデイノルトの父を倒した勇者なのだが、そんなことはどうでも良い。
デイノルトも人間界の王も平和を願う気持ちは同じだった。
勇者とは全く気が合わなかったが、この人間界の王とは何故か気が合った。
勇者はデイノルトを見かける度に切りかかってきていたしな……
その度に人間界の王が勇者を叱りつけているのを目撃した。
人間界の王が魅力的で面白い奴だったから、この契約を結んだと言っても過言ではない。
デイノルトが魔王になってからしばらくは貿易が盛んだったが、最近は不調である。
「不可侵契約を結んだ王は遥か昔にいなくなっていますからね。代替わりで引き継ぎされなかったのかもしれませんね」
「やっぱりそうなのか……」
なんとなく、そう感じていた。
あの女が言っていたことはやはり嘘であったか。
別にどうでも良いが……
それより人間の王と会えなくなったことが寂しい。
魔族と人間は寿命が違うから仕方ないか。
でもほんの少し…いや、かなり寂しい。
「魔王様、あの人間界の王を気に入っていましたよね」
「あいつ、面白い奴だったからな」
デイノルトはククッと可笑しそうに笑った。
人間は嫌いだが、あいつは嫌いじゃなかった。
デイノルトの数少ない友である。
不可侵契約締結の為に、デイノルトにわざわざ手作りクッキーを作って食べさせた男は前にも後にもあの男しかいない。
多分、デイノルトが甘い物が好きという情報を聞きつけて、懐柔しようと思ったのだろう。
その手作りクッキーというものがもの凄く不味くて、サミュエルと目を白黒させてしまった。
そのクッキーは生焼けでしょっぱく、後にも先にもあんな不味い物を食べたことがない。
本気で人間界をクッキーごと滅ぼそうという考えがちらちらデイノルトの脳裏によぎってしまった。
人間界の王は困り果てたような顔でエプロンの端を強く握り締めていた。
その姿を見て憎めない奴だと思い、デイノルトとサミュエルは大爆笑した。
不可侵契約を受け入れた時、あいつはほっとしたような困惑したような変な顔をしていたな。
魔王さん、クッキーお気に召しましたか!とあいつから嬉しそうに聞かれたが、決してクッキーが美味しかったからではない。
それから、あいつと時々食事をしたり、意見交換をしたり、旅行に行ったり、毎日手紙のやりとりをしていた。
その手紙が来なくなったのはいつからだろう?
あの穏やかで知的な美しい緑色の瞳がデイノルトは好きだった。
「あの方のお墓はこの辺りでしたね。お墓参りしていきましょうか?」
サミュエルが地図を見ながら言った。
「ついでだから行こう」
友の墓参りくらいしてやろう。
きっとあいつも喜ぶだろう。
サミュエルとデイノルトは道端の花を少し摘んだ。
「あそこですよ」
サミュエルが指で示したところに向かうと、デイノルト達は絶句した。
墓がめちゃくちゃに壊されている。
元は見たことがないが、美しかった面影がある墓石は粉々にされていた。
「墓荒らしか?」
デイノルトが呟くと、サミュエルは首を横に振った。
「あの勇者が王になってから、あの方のやり方をガラッと変えたと噂になっておりました」
「でも、ここまでするか?」
デイノルトは少なからずショックを受けていた。
息子に愛情を注いでいたあいつは実の息子にそんなに嫌われていたのだろうか?
「今はその勇者の息子が王ですが、悪政は続いているようですね」
サミュエルは墓の掃除をし始めた。
デイノルトは墓石を魔力で元通りにした。
「何か書いてあるな……」
デイノルトが布で墓石を綺麗に拭くと、文字が浮かび上がった。
『デイノルトとの友情は私がいなくなっても永遠にこの地に残るだろう』
あいつ、顔に似合わずなかなか気障な奴だったんだな。
こんな恥ずかしい台詞を自分の墓石に刻むなんて、変な奴。
もしや、この台詞が勇者との不和の原因か?
だったら、俺様のせいかもしれない。
デイノルトは友の墓石の前に小さな花を供えた
「この地域は治安が悪くなっています。魔王様もお気をつけください」
サミュエルは鋭い目付きで周りを警戒している。
「昔から治安は悪いと思うが」
デイノルトは首をかしげながら言った。
この地域は人間界との貿易によって魔界で一番栄えているが、元々かなり治安が悪い地域だ。
「最近は特に治安が悪いのです。人間による通り魔も横行しているそうです」
サミュエルは痛ましそうに目を伏せた。
そんなことになっているとは知らなかった。
ちょっと前まではそんなことはなかったはずだが。
サミュエルが言うには人間に殺される魔物が後を絶たないそうだ。
「人間界と不可侵契約を結んでいなかったか?」
デイノルトは首をかしげた。
人間界と魔界は貿易は可能だが、お互いの領土は荒らさないという契約を人間界の王と結んでいたはずだった。
先代魔王が治めていた時代は無法地帯だった為、人間も魔族も多くの被害者を出した。
毎日が戦いの連続だった。
転機が起きたのはデイノルトが魔王になってしばらく経ってからである。
先代魔王が勇者によって倒された。
先代魔王は人望はなかったが魔界の象徴ではあったため、先代魔王が勇者に倒されたことに怒りを覚える者も多かった。
戦争になるかならないかの緊迫した状態が長く続いたのだ。
しかし、その状況を打破した出来事があった。
人間界の王がデイノルトに不可侵契約を持ち掛けてきて、デイノルトはそれを受け入れたのだ。
因みに、その人間界の王の血筋からは多くの勇者が輩出されているらしい。
この人間界の王の息子がデイノルトの父を倒した勇者なのだが、そんなことはどうでも良い。
デイノルトも人間界の王も平和を願う気持ちは同じだった。
勇者とは全く気が合わなかったが、この人間界の王とは何故か気が合った。
勇者はデイノルトを見かける度に切りかかってきていたしな……
その度に人間界の王が勇者を叱りつけているのを目撃した。
人間界の王が魅力的で面白い奴だったから、この契約を結んだと言っても過言ではない。
デイノルトが魔王になってからしばらくは貿易が盛んだったが、最近は不調である。
「不可侵契約を結んだ王は遥か昔にいなくなっていますからね。代替わりで引き継ぎされなかったのかもしれませんね」
「やっぱりそうなのか……」
なんとなく、そう感じていた。
あの女が言っていたことはやはり嘘であったか。
別にどうでも良いが……
それより人間の王と会えなくなったことが寂しい。
魔族と人間は寿命が違うから仕方ないか。
でもほんの少し…いや、かなり寂しい。
「魔王様、あの人間界の王を気に入っていましたよね」
「あいつ、面白い奴だったからな」
デイノルトはククッと可笑しそうに笑った。
人間は嫌いだが、あいつは嫌いじゃなかった。
デイノルトの数少ない友である。
不可侵契約締結の為に、デイノルトにわざわざ手作りクッキーを作って食べさせた男は前にも後にもあの男しかいない。
多分、デイノルトが甘い物が好きという情報を聞きつけて、懐柔しようと思ったのだろう。
その手作りクッキーというものがもの凄く不味くて、サミュエルと目を白黒させてしまった。
そのクッキーは生焼けでしょっぱく、後にも先にもあんな不味い物を食べたことがない。
本気で人間界をクッキーごと滅ぼそうという考えがちらちらデイノルトの脳裏によぎってしまった。
人間界の王は困り果てたような顔でエプロンの端を強く握り締めていた。
その姿を見て憎めない奴だと思い、デイノルトとサミュエルは大爆笑した。
不可侵契約を受け入れた時、あいつはほっとしたような困惑したような変な顔をしていたな。
魔王さん、クッキーお気に召しましたか!とあいつから嬉しそうに聞かれたが、決してクッキーが美味しかったからではない。
それから、あいつと時々食事をしたり、意見交換をしたり、旅行に行ったり、毎日手紙のやりとりをしていた。
その手紙が来なくなったのはいつからだろう?
あの穏やかで知的な美しい緑色の瞳がデイノルトは好きだった。
「あの方のお墓はこの辺りでしたね。お墓参りしていきましょうか?」
サミュエルが地図を見ながら言った。
「ついでだから行こう」
友の墓参りくらいしてやろう。
きっとあいつも喜ぶだろう。
サミュエルとデイノルトは道端の花を少し摘んだ。
「あそこですよ」
サミュエルが指で示したところに向かうと、デイノルト達は絶句した。
墓がめちゃくちゃに壊されている。
元は見たことがないが、美しかった面影がある墓石は粉々にされていた。
「墓荒らしか?」
デイノルトが呟くと、サミュエルは首を横に振った。
「あの勇者が王になってから、あの方のやり方をガラッと変えたと噂になっておりました」
「でも、ここまでするか?」
デイノルトは少なからずショックを受けていた。
息子に愛情を注いでいたあいつは実の息子にそんなに嫌われていたのだろうか?
「今はその勇者の息子が王ですが、悪政は続いているようですね」
サミュエルは墓の掃除をし始めた。
デイノルトは墓石を魔力で元通りにした。
「何か書いてあるな……」
デイノルトが布で墓石を綺麗に拭くと、文字が浮かび上がった。
『デイノルトとの友情は私がいなくなっても永遠にこの地に残るだろう』
あいつ、顔に似合わずなかなか気障な奴だったんだな。
こんな恥ずかしい台詞を自分の墓石に刻むなんて、変な奴。
もしや、この台詞が勇者との不和の原因か?
だったら、俺様のせいかもしれない。
デイノルトは友の墓石の前に小さな花を供えた
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