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10、花畑

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 デイノルトは4歳になったばかりのアルノルトと魔界で一番美しい花畑に行ってみた。

 それはほんの気まぐれだった。
 なんとなくアルノルトを連れて行きたくなったのだ。

 雲に覆われた灰色の空の下にガラス細工のような繊細な美しさを持っている緑色の花が一面に咲いている。

「父様、綺麗だね!」

 アルノルトは美しい花畑にはしゃいでいる。

 この花畑は4年前までは赤い美しい花が咲いていたが、久しぶりに来たら全て緑色の花に変わっていた。

 アルノルトと同じ瞳の色だ。

「そうだな」

 デイノルトはアルノルトの頭を優しく撫でた。

「花冠作っても良い? ロレインにプレゼントするんだ!」

 デイノルトはニコリと微笑んで頷いた。

「頑張って作る!」

 アルノルトは小さな手で花冠を作り始めた。
 デイノルトはアルノルトを優しく見つめていた。

「一個目完成! 父様、座って」

 アルノルトがデイノルトの黒いマントをグイグイ引っ張った。

「ん?」

 デイノルトがしゃがむと、アルノルトは満面の笑みを浮かべて花冠をデイノルトの頭に被せた。

「いつもありがと!」

 アルノルトはちょっと恥ずかしそうにモジモジしながら小声で言った。

「こちらこそ、アルノルト殿下」

 デイノルトは嬉しさを隠しきれず、顔がニヤけてしまった。

 デイノルトはアルノルトの頭に小さな花冠を被せた。

「俺様も作ってみたぞ」

 少し不恰好たが、なかなか上手く出来たと思う。
 緑色の花びらが風にひらりと舞い落ちる。

「父様、ありがとう!」

 アルノルトは嬉しそうにクルクル回った。
 あまりの可愛らしさに天使かなと思った。

「父様、もう1つは誰の分? サミュエル?」

「内緒だ」

「ふーん?」

 アルノルトはデイノルトの顔をじっと見つめている。

「なんだ、その目は?」

「何でもないよー」

「俺様はアルが一番大切だ。心配するな」

 デイノルトは明るく笑って言った。
 アルノルトはふふっと嬉しそうに笑った。

 優しい風が緑色の花びらを舞い上げた。
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