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5、馬車
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皆様、ご機嫌よう。
僕の名はアルベール・ルベッソン。
恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。
今、僕は実家に帰る馬車の中です。
週末には必ず実家に帰っています。
お小遣いが少ないので、安い馬車を借上げました。
他人と一緒は気疲れするし、相乗りは嫌だし。
馬車がガタゴト揺れて、かなり気持ち悪いです。
既に物が二重に見えている。
横になった方が良いのか、遠くを見た方が良いのか誰か教えてくれ。
あっ、僕には友達がいなかった……
僕は前世でも今世でも乗り物に弱いタイプのようだ。
自分で車を運転する時は酔わないのに、何故他人の運転は酔うんだろうか。
不思議で仕方ない。
馬車がゴトリと大きな音を立てて止まった。
「学生さんよぅ」
馬車の御者さんが声をかけてきた。
70代くらいの馬の扱いに長けたベテラン男性だ。
どんな暴れ馬も扱えるような荒くれ者感が漂う猛者に見える。
「……どうかしましたか? まだ先ですよね?」
「竜が出たみてぇだ」
「……そうですか。では、僕が」
僕はいそいそと魔物退治の支度をし始めた。
派手な虹色の鎧を着こみ、金色の兜を被った。
因みにこの装備は家族へのお土産だ。
異世界ファンタジーに魔物退治は定番だよね。
今まで魔物に遭遇したことがなく、のほほんと生きてきたけど、遂にこの時が来たのか。
この時の為に氷魔法はかなり鍛えてある。
「ちょっと馬車を留守にするから、馬の手綱頼む」
「あっ、はい」
僕は馬車を降り、馬の手綱を掴んだ。
馬車の御者さんは一人で巨大な竜に立ち向かって行ってしまった。
「そこ退いてくれねぇか」
馬車の御者さんが竜にピシリと鞭を当てると、声を張り上げた。
竜は面倒くさそうに欠伸をしながら、ズルリズルリと大きな尻尾を振りながら、道を開けてくれた。
「お前さん、手間かけさせてすまねぇな。ほれ、ドラゴンフードをやろう」
馬車の御者さんが茶色い物体を竜に投げた。
竜は赤い長い舌で茶色い物体を掴み、口の中に投げ入れた。
どうやら僕の出番はないようだ。
恥ずかしいので、素早く装備を脱いだ。
馬車の御者さんは戻ってくると、僕を馬車に押し込めた。
「学生さん、待たせたな」
「いえいえ」
「あと2時間くらいで着く」
「はい」
僕は馬車の御者さんと小粋なトークが出来る訳もなく、ただひたすら静かに風景を眺めていた。
本当は歳が離れている馬車の御者さんとでもいいので、友達になりたかった。
しかし、話しかける勇気もなかったのです
馬車の御者さんは見た目がかなり怖いし。
竜の方が仲良くなれる可能性が高い。
「竜と仲良くなりたいなぁ」
思わず独り言を呟いてしまった。
「あの竜は俺が昔捨てたペットだ。凶暴だぞ」
あの竜はまさかの馬車の御者さんの元ペットだった。
僕には竜よりも馬車の御者さんの方が凶暴に見えるのは気の所為だろうか。
竜ってペットに出来るんだなぁ。
強いペットを飼ったら、友達が出来ないだろうか。
今日も僕に友達が出来なかった。
僕の名はアルベール・ルベッソン。
恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。
今、僕は実家に帰る馬車の中です。
週末には必ず実家に帰っています。
お小遣いが少ないので、安い馬車を借上げました。
他人と一緒は気疲れするし、相乗りは嫌だし。
馬車がガタゴト揺れて、かなり気持ち悪いです。
既に物が二重に見えている。
横になった方が良いのか、遠くを見た方が良いのか誰か教えてくれ。
あっ、僕には友達がいなかった……
僕は前世でも今世でも乗り物に弱いタイプのようだ。
自分で車を運転する時は酔わないのに、何故他人の運転は酔うんだろうか。
不思議で仕方ない。
馬車がゴトリと大きな音を立てて止まった。
「学生さんよぅ」
馬車の御者さんが声をかけてきた。
70代くらいの馬の扱いに長けたベテラン男性だ。
どんな暴れ馬も扱えるような荒くれ者感が漂う猛者に見える。
「……どうかしましたか? まだ先ですよね?」
「竜が出たみてぇだ」
「……そうですか。では、僕が」
僕はいそいそと魔物退治の支度をし始めた。
派手な虹色の鎧を着こみ、金色の兜を被った。
因みにこの装備は家族へのお土産だ。
異世界ファンタジーに魔物退治は定番だよね。
今まで魔物に遭遇したことがなく、のほほんと生きてきたけど、遂にこの時が来たのか。
この時の為に氷魔法はかなり鍛えてある。
「ちょっと馬車を留守にするから、馬の手綱頼む」
「あっ、はい」
僕は馬車を降り、馬の手綱を掴んだ。
馬車の御者さんは一人で巨大な竜に立ち向かって行ってしまった。
「そこ退いてくれねぇか」
馬車の御者さんが竜にピシリと鞭を当てると、声を張り上げた。
竜は面倒くさそうに欠伸をしながら、ズルリズルリと大きな尻尾を振りながら、道を開けてくれた。
「お前さん、手間かけさせてすまねぇな。ほれ、ドラゴンフードをやろう」
馬車の御者さんが茶色い物体を竜に投げた。
竜は赤い長い舌で茶色い物体を掴み、口の中に投げ入れた。
どうやら僕の出番はないようだ。
恥ずかしいので、素早く装備を脱いだ。
馬車の御者さんは戻ってくると、僕を馬車に押し込めた。
「学生さん、待たせたな」
「いえいえ」
「あと2時間くらいで着く」
「はい」
僕は馬車の御者さんと小粋なトークが出来る訳もなく、ただひたすら静かに風景を眺めていた。
本当は歳が離れている馬車の御者さんとでもいいので、友達になりたかった。
しかし、話しかける勇気もなかったのです
馬車の御者さんは見た目がかなり怖いし。
竜の方が仲良くなれる可能性が高い。
「竜と仲良くなりたいなぁ」
思わず独り言を呟いてしまった。
「あの竜は俺が昔捨てたペットだ。凶暴だぞ」
あの竜はまさかの馬車の御者さんの元ペットだった。
僕には竜よりも馬車の御者さんの方が凶暴に見えるのは気の所為だろうか。
竜ってペットに出来るんだなぁ。
強いペットを飼ったら、友達が出来ないだろうか。
今日も僕に友達が出来なかった。
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