攻略対象のイケメンに生まれ変わりボッチになってしまった話

碧海慧

文字の大きさ
上 下
12 / 13

12、真相

しおりを挟む
 皆さん、ご機嫌よう。
 僕の名はアルベール・ルベッソン。
 恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。
 僕は今、王太子殿下を人質にとり、教室を凍らせています……

 何故か王太子殿下はちょっと嬉しそうです……
 意味が分かりません……

「やれやれ、何という茶番ですか……」

 モブ男君が指をパチンと鳴らすと、僕の氷魔法が打ち消された。
 教室の氷が溶ける。

「あなた、どうしているの?!」

 女主人公がモブ男君を見て、悲鳴を上げる。
 え? モブ男君、ずっとそこにいたじゃないか。
 何を言っているんだ? この女主人公。

「どうしたんです? 幽霊でも見たような顔をして?」

 モブ男君は女主人公にニコニコ笑いかけた。

「だって、その見た目……」

「これですか?」

 モブ男君がメガネを外すと、モブ男君の外見が変化した。

 黒髪黒目の平凡な顔から、青髪紫目の美少年になってしまったのだ。
 これは……男主人公だ。

 男主人公は未プレイだったから、全然意識していなかった。

 あ!と全員が息を飲む。

「皆さん、俺の顔を見てそんな顔をするってことは、本当は全員転生者なんですよね?」

 男主人公はニコニコ笑いながら言う。

「この世界はゲームの世界ですが、ここにいる人達はゲームのキャラなんかじゃない。ただ与えられた役割を演じているだけ」

 男主人公は一人一人見つめながら言う。

「生身の人間なのです。元いた世界と変わりません。自分好き勝手に生きてはいけない世界なのです」

 男主人公は女主人公に微笑む。

「男主人公のルートでは悪役令嬢が攻略対象になります。だから、女主人公であるマリーは俺のことが邪魔だったようで、俺を消そうとしました」

「何を言って……」

 女主人公は男主人公を睨み付けた。

「俺が知らないとでも思いましたか。俺に毒を盛ったこともありますよね。崖から馬車ごと落としたことも……」

「あの時、確かに馬車は落ちて……」

「俺だけが生き残りました。ですが、一緒に乗っていた弟は助かりませんでした。ずっと、貴女に復讐したかった」

 男主人公は温厚そうな顔でニコニコ笑っている。
 僕は背筋がぞくりとした。

「あの日から俺は姿形を変え、別人として生きることにしました。貴女のことを忘れた瞬間はありませんでしたよ」

 女主人公はヒッと悲鳴をあげた。

「そろそろ貴女は舞台から降りなければならない」

 男主人公は女主人公の手首を乱暴に掴んだ。

「やめて! 離して……」

「主人公交代だ」

 女主人公は男主人公に魔力を奪われ、地面にへたりこんだ。
 男主人公は穢らわしいものでも触ったかのようにハンカチで手を拭いている。

「命は取らなかったのだから、感謝して欲しいものだな」

 男主人公は女主人公を睨みつけている。

「後の処遇は私に任せてくれ。徹底的に調べる」

 王太子殿下は僕の人質になったまま、威厳を見せつけた。

「あ! 王太子殿下、失礼しました」

 僕は慌てて、王太子殿下を解放した。

「気にしなくて良い。アナベルの件も濡れ衣であろう?」

「はあ……まあ……」

 なんか雰囲気にのまれて、とんでもないことを口走ったような気がするが……
 よく考えると、王太子殿下の婚約者に横恋慕した罪とかにならないかな?

「私の婚約者と仲良くしてくれて感謝する。君の好きは友情の好きと私は解釈している。それより、アルベール」

 王太子殿下は少し恥ずかしそうに言った。

「私の親友になってくれないか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処理中です...